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葉山日記
26 リタイアメント
2003年9月16日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 秋になって、我が家の2階から江ノ島がすっきりと見えるようになってきた(9月14日午後)
九州の叔母に、博多で公演するある舞台のチケットを送ったら、予想外の喜びようだ。特に叔母の夫(つまり義理の叔父)が大感激しているという。その叔父というのは数年前に定年退職、現在はリタイアメント生活を楽しんでいるはずだ。が、退職後、年賀状の数はがくんと減る、歳暮・中元の類いはほとんどなくなって、精神的にかなりさみしい思いを募らせているという。こういう時期のひとさまからの贈り物は殊のほかこころに響くのだそうだ。

そういえばご近所で某大会社を退職したひとも同じようなことを言っていた。最後は役員まで勤め、その意味では「出世」してサラリーマン生活を全うした、と言えそうだが、そのひとが「茶番劇ですよ」とぽつりと言ったことがある。細かなことは話さないが、いろいろ退職時の条件などをめぐって面白くないことがあったのだろう。「茶番劇」というのは、粉骨砕身、会社のために働いた自分とはいったい何だったのか、俺の人生は道化だったのか、という思いなのだろうというのは想像がつく。

僕自身、43歳で大会社を辞め、そのとき以来、組織の力、または組織に属さないことのこころ細さをいやというほど味わってきた。組織の肩書きがとれたとたん、それまでの人間関係がいともあっさりと崩壊してしまう現実も多く体験した。つまり多くのサラリーマンが60歳を迎えて初めて体験することを、僕はかなり早めに体験してしまった、ということになる。これはある意味、人生や人間のことを深く知るためによいことではなかったか、という気がする。が、一方で、それは単なる僕の強がりで、自分自身の生き方を正当化するだけの方便ではないか、と思う気持ちもある。

というのも、一匹狼で生きるためには、相応の厳しさがともなう。よくサラリーマンの友人から「君には自由があってうらやましいね」と言われることがある。たしかに自分のボスは自分自身で、すべては僕自身の考えで行動が決定できる。いやな上司や、勤務評定に気を遣う必要はない。では組織に属す友人が味わうストレスが僕にはないか、というとこれがあるのですねえ。僕は友人にこう答える。「確かにサラリーマンには自由がないかもしれない。しかし毎月決まった日に、決まった給料がはいる、という特典があるではないか」と。

友人は必ずこう答える。「それはそうだが、でも人生カネだけじゃないからね」。たしかにそうだ。お金を得ることのかわりに失うものは限りなく大きい。しかし自由を維持するための最低限のお金を、自らの力で稼ぎだすためのストレスがどんなに大きいものか、たぶん多くのサラリーマンには実感として理解できない。これはこれで実に大変なことなのだ。

むかしお妾さんを5人も!同時にかかえ、おなじ一軒の家に住まわせていた富豪がいた(妻もこの家に住んでいたかどうかは分からない)。この5人けっこう仲良く暮していたのだが、あるとき富豪の事業が傾きはじめ、借金取りが家に押し寄せるようになった。そんなある晩、このお妾さんたち、突然消えてしまった。「あの恩知らずども」と番頭さんは怒ったが富豪は意に介さない。いろいろその後苦労はしたものの、富豪にはやはり才覚があったのだろう、やがて事業は持ち直した。

すると富豪復活の噂を聞いて、消えたはずのお妾さんたちが三々五々戻ってきた。気がついてみると5人のお妾さん、なにもなかったかのように、以前と変わらない生活を始めている。「同じ人間として許せませんっ」番頭は怒り、富豪に向かって「叩き出してやりましょう」と言う。富豪は相変わらずにこにこして「まあいいじゃないか。あのひとたちはここ以外行くところがないのだよ」と動じない。

人間とは基本的に経済的動物である。まず食うために行動を決する。食足りてこそ礼節を知るのだ。富豪にはそのことがよく分かっているのだろう。とすると、自分と家族の下部構造(衣食住)を支えるために、矛盾や悩みを抱えつつもサラリーマン生活をまっとうした男の生き様は、それなりに評価されねばならないと思う。「茶番劇だった」なんて卑下してはいけないのだ。

自由や生きがいなど精神的問題=上部構造は、あくまで経済という下部構造の土台の上にある。富豪の、人間としての達観、大らかさを大いに見習いたいと思うが、そうすると下部構造をしっかり構築せねばならない。そうするために、さあこれから大企業でのプレゼンテーションにでかけねばならない。ストレスだなあ。僕にはたぶん悠々自適のリタイアメント生活は永遠に来ないのである。
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