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ボーダーを越えて
107 3年ぶりの日本
2007年6月2日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
▲ 「そっちもおいしそうだね」と、私のお膳を覗き込むトーマス。鎌倉の吉野屋で。(写真提供=中山俊明)
これほどまでに楽しくて、有意義で、行って本当によかったと感じられる日本への旅はありませんでした。毎日なんらかの予定が入っていたのに、時間に追われてアタフタ動き回ることもなく、おかげでちっとも疲れずに、予定を少々変更する気持の余裕を持ちながら、その時その時を満喫することができたのです。

もちろんそれができた最大の理由は、中山さんが運転手を買って出てくださったからであり、会員の皆さんにスケジュールを立てる段階から助けていただいたからです。これに味をしめて、次回も皆さんを巻き込んで日本行きの準備をしようという魂胆を抱いていますので、皆様,ご覚悟のほどを。

今度の日本行きは3年ぶりでした。それまでは年老いた伯母の様子を見に、毎年のように日本へ行っていて、日本で目新しく感じたことは何もなかったのですが、3年というブランクが空くと、日本の変化にもっと気が付くものですね。アメリカとの違いをもっと強く感じるということもあるでしょう。

まず、随分便利になったなぁ、と感心しました。Suicaのカードのことです。このカードがどんな路線にも通用するようになったのはつい最近のことだそうですが、以前はJR線のカードしかなくて、私鉄に乗るときはいちいち切符を買わなければならなかったのと比べると、その便利さは比べものになりませんね。

それから、エレベーターやエスカレーターのある駅がグンと増えた。これは最初に身体障害者のために取り付けたのでしょうが、荷物を持っての移動や、トーマスのように歩くのが大変になった者にもとっても便利ですね。ありがたいことです。JR線以外の鉄道でもそうなのでしょうか?

それにしても、東京に電車や地下鉄が完備しているのは本当にうらやましい限りです。私は乗っているだけで楽しいというほど列車好きなので、うちの近くから通勤電車に乗ってサンディエゴのダウンタウンまで行きたいのですが、なにせ本数が少なくて不便。そして、下車してからの移動が大変で、結局車で出かけてしまうのです。

高速道路もかなり使いやすくなりましたね。いい時間帯に動いたからかもしれませんが、スイスイ移動できて、びっくり。車線数が少ないとか車線の幅が狭いとかいうのは変わりませんが、まぁこれは仕方がありませんね。

でも、公共交通手段の便利さには大変な地域格差が生まれているということも潮来で知りました。潮来へは中山さんに車で連れて行ってもらったのですが、神奈川県平塚の近くから2時間そこそこで着いてしまいました。最初は電車で行くつもりでしたので、行き方を路線検索で調べてみたのですが、そのときは時刻表全部は見なかったので、電車ではどんなに不便かということには全く気が付きませんでした。が、私たちに会いにわざわざ潮来へ来てくれた友人から、東京から潮来まで2時間以上もかかること、電車の本数が極端に少ないこと、そして夕方以降は潮来駅は無人駅になってしまうということがわかりました。

3年前に長野電鉄屋代線の小さな電車に乗って、雨宮という駅で降りたことがあります。そこが私の祖先の出身地だろうということだったので。ちっぽけな駅で、常時無人駅でした。それに比べると、潮来駅は大変に立派なものなのですが、夜の利用客は本当に少ないのでしょう。昼間でも地元の人たちは車で移動することが多いのだろうと思います。観光客も車で訪れるのがほとんどかもしれません。それにしても、東京からそう遠くはない潮来が、あまりに不便であまりに「田舎」なのには驚きました。

話を東京近辺に戻しましょう。東京は世界で2番目ぐらいに物価の高い所で(1番はたしか北欧のどこかだったと思います)、私は東京での値段はドルに換算して考えないようにしています。いちいち換算していたら、その都度びっくり、どっきりして、精神衛生に良くないし、日本滞在を楽しめないからです。

でも今回は、意外と物が高くないと感じました。円が安くて1ドル=120円弱だったこともありますが、1ドルを100円と考えても、そう高いとは感じられないことがしばしばでした。特にファーストフードがそうです。ハンバーガーを食べたりはしませんでしたが、日本食ファーストフードは安くて味も良かった。「日本ではファーストフードでもおいしい」と、トーマスが言ったくらいです。

高いお金を出せばおいしいものが食べられる、というのは当たり前。(ところが、その当たり前がいつもそうとは限りませんね。)お金をどっさり出さなくてもおいしいものを食べさせてくれる―それが優れた食文化のある所だと私は思います。中国がそう。イタリアもそう。そして日本もそうですね。

たとえば、あの喜三郎うどんのおいしさ! 倍以上のお金を払っても、アメリカではあんなにおいしい麺を食べさせてくれる所はありません。それでもカリフォルニアではこのごろはかなりよくなったのですよ。日本食の影響で、お魚でもたたき式にして出すレストランが珍しくないくらいです。でも、内陸の田舎へ行くと、もうだめ。去年テキサスへ行ったときは、道中本当にうんざりするくらいまずいものの連続でした。おいしいはずの中華料理も、全然だめ。おいしいものを求める人がいない土地ではおいしいものはできないのですね。

日本人は細かいことにも注意を払うとよく言われますが、その態度がちょっとしたものでもおいしく作ることにつながるのでしょう。また、リサイクルにもそれがよく現れていますね。各家庭で3年前よりもこと細かく仕分けてゴミを出すのには本当に感心しました。アメリカ人にはとてもできないことです。サンディエゴでは、リサイクルできるものは、紙(段ボール箱も含めて)・プラスチック(それも種類が限られています)・ガラス・缶ぐらいです。それらは仕分けたりせず、全部一緒くたに大きな容器に入れて、2週間に1度回収してもらいます。回収所で仕分けするのですから、費用もウンとかかりますし、効率も悪い。環境問題対策のこういう点でも、アメリカは遅れているとつくずく感じました。

日本独特といえば、ちょうど大相撲五月場所の真っ最中で、トーマスも楽しんでテレビを見ていました。私はお相撲は何年ぶりに見たのか覚えていませんが、外国人力士と言えば、ハワイかサモア出身だったころで、モンゴリア出身者は1人もいませんでした。もちろんグルジアやルーマニアの出身だなんて、想像もできませんでしたよ。伯母や従弟は「お相撲だけは日本人じゃなきゃいやだ」などと言うので、「いいじゃない、なに人だって」とは言ったものの、力任せのはたき込みのような勝負が多くて、技を競い合う取り組みが少なくなり、なんだか寂しいような気がしました。これも仕方のないことなのでしょうか。

変わっていなくてびっくりしたこともありますよ。浅草の仲見世近くの小さな入り口から地下に潜って地下鉄浅草線の駅へ向かった途端、「あっ、ここは何度も来たことがある」と思いました。私は7歳のときに浅草線の稲荷町から出た下谷に8ヶ月ほど住んでいて、その頃の思い出が蘇ってきたのです。50年以上も前のことなのに、浅草駅に向かうその狭い通路はちっとも変わっていませんでした。ただ、そこに並ぶお店にいまはタイ料理店があり、昔は床屋さんだったのがいまはヘアーサロンになっているのが変わった証拠と言えば確かにそうですが、ごみごみした感じは昔のまま。思わずニヤニヤしたくなるほど、懐かしい感じがしました。

世田谷の喜多見(そのころは田舎でした)に生まれて幼年時代を過ごし、それから下谷、そして赤羽,江戸川区の篠崎(そこも田舎でした)、そして再び赤羽と、子どもの頃は東京の中でも移動し続けたので、私には故郷はないと思っていたのですが、今回は東京があまりに居心地よくて、私の故郷は東京かもしれない。 帰宅してから、そんなふうに思うようになっています。

もっとも、日本にいる間はイラクのことは考えずに済んだから、余計に居心地がよかったのかもしれない、と昨夜テレビを見ていて気が付きました。アメリカがイラクでしていることが、私の日常生活に大きな影を落としているのだということを改めて痛感した次第です。


[お詫び] 皆さんに早く感想をお伝えしたくて書き連ねましたので、ちっともまとまりがなく申し訳ありません。
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