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葉山日記
33 思考スパイラル
2003年12月26日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ ランチを食べるソウルのサラリーマン。皿かずがこんなに多くて500円程度。
▲ 南大門市場。都市開発のせいで市場規模は小さくなったよう。
12月はじめソウルに行った。3泊4日の短い滞在だったが、それなりに面白かった。その報告を書こうと思いながら帰国したとたん、鈴木龍志(当研究会元副代表)の死の報だ。気が抜けた。しばしなにもする気がなくなった。以来なんだか生きていることが虚しくなった。

人間、生きていればいいこともあれば悪いこともある。努力は必ず報われる。そういう考えでこれまで生きてきた。が、そうかあ?生きることってそんなに甘いもんじゃないんじゃないかあ、悪いことばかり続き、なにも報われない終わりだってあるんじゃないか。いやそんな人生を送る人間の方がずっと多数派だろう。

虚無感である。腎臓移植手術が成功し、やっと人並の生活ができるようになったと思ったら胃ガンの宣告、そしてさらに転移。そしてだれに告げることもなく静かにこの世を去った、その心中やいかに。意思あるところに道あり?へん、そんなのは嘘っぱちだ。天網恢恢疎にして漏らさず。へん、悪いやつらがけっこう長生きして、えらそうにのさばっているではないか。神も仏もあるもんか。

僕もこの2年8ヶ月はこれまでの人生で体験したことのない苦しい日々であった。企画が次々とつぶれる。今度こそは、今度こそは、と相手企業の結論をただじっと待つ時間のほうが圧倒的に多かった。不採用の連絡を受け、奈落の底に突き落とされる体験を何度したことだろう。

逃れられない死の宣告に黙って耐えた故人の心境に較べればなんということはない、とは思う。しかし、である。努力はいつか報われる、という固い信念、拠り所のようなものが、身近な人間のあっけない死によってがらがらと音を立てて崩壊してしまった。

先日ひさしぶりにベンチャーの集まりに出た。若いビジネスマンが見事に消えていた。小さな有限会社からスタート、一時は資本金7億円の会社を作り上げ、朝日の日曜版に大きく掲載された20歳代のA君はじめ、とてつもないエネルギーにあふれていたあの若者たちの姿が、バブルの崩壊といっしょにこの集まりから見事に消えてしまっていた。

たまたま鈴木を知る会員のひとりと立ち話。「残念なことしましたねえ。でもね、もしかしたら死んだ人の方がラクかもしれませんよ」。一瞬失礼なことを言う人だな、と思ったが、なるほどねえ。たぶんこの人はいま資金繰りで地獄の苦しみを味わっている真っ最中なのだろう。サラリーマンには絶対に理解できない心理だと思うが、資金繰りの苦しみというやつは、時としては「死んだ方がまし」と思えるほど過酷なものだ。

「自分がこの世の中に必要とされてないのではないか、と考えたときの怖さってわかりますか」。かつて若い女性からこんなことを言われたことがある。彼女は企業の採用試験を落ち続け、1年の就職浪人後ようやく職を得た。その否定され続けた2年間の苦しみを僕に話してくれたのだ。

正直、僕にはそのとき彼女の言うことが理解できなかった。「就職試験に落ちたくらいで、自分をそんなに卑下するのはちょっとオーバーじゃないの」というようなことを僕は笑いながら彼女に言ったと思う。彼女は「中山さんはね、これまで幸せな人生を送ってきたのですよ。そいう人には、世間から、あんたなんか要らないよ、と言われる人間の気持ちは分かりません」。20歳も歳下の若い女性から、こんな説教を食らった僕だが、今なら分かるような気がしますねえ。

自分や自分の考えが否定され続けたり、失敗が続くと、人間は次第に自信を失い、そのうち「間違っているのはまわりではなく自分の方ではないか」「自分の考えはもう古くて、時代に合わないものになってしまったのではないか」「世の中から退場を迫られているのではないか」という負の思考に陥ってしまうものだ。過去数年僕はまさにこの悪い循環にすっぽりはまりこんで、くだんの若い女性の言葉を繰り返し繰り返し思い出してしまったものだ。

近しい友の突然の死が、この暗い思考に追い打ちをかけた。いかんいかん。この悲観的な思考スパイラルをはやく断ち切らねばいかん。

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本年最後の原稿は少々ペシミスティックになってしまいました。これは個人的な問題もさることながら、時代的背景もあるのかもしれません。経済という下部構造が、精神という上部構造を規定する、という理論はあながち間違っていないようです。とはいえご安心のほどを。年末にかけて徐々に僕個人の精神状況は回復基調にあります。他人様から「たとえ苦しくても苦しくないように装うのがビジネスマンです。あなたの文章は正直過ぎますよ。これでは人が近づいてこない」とよく言われます。いいのです。仕事や金目当てに近づく人間は僕には必要ないのです。来年もこの調子でなるべく正直な報告をこころがけます。1年間のご愛読ほんとうにありがとうございました。そして来年もよろしく!
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