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葉山日記
37 野狐禅
2004年1月25日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 野狐禅の2人組。http://www.yakozen.net/より。
竹原ピストル(右=ボーカル、アコースティックギター)と濱埜宏哉 (はまのひろちか=鍵盤、コーラス)
※転載にあたっては許可を得ていませんが、PRと思ってお許しください、野狐禅さん。
当会掲示板に投稿された「野狐禅」という言葉が気になっている。当初僕はこれを「のぎつねぜん」と思い込み、「のぎつねぜん、って知ってるかい?」と妻に尋ねた。「きつねうどんとご飯がセットになったお膳でしょ」と彼女瞬時に応えたが、じつはこれ「やこぜん」と読むらしい。

生まれてこのかた、まったく聴いたこともない言葉が、まだ20歳代の若者から発せられたことが気になって図書館にでかけた。「小学館のことわざ大辞典」を調べたら以下のような説明がある。

「まだ禅を悟ってもいないのに悟ったつもりになってうぬぼれるものを野ギツネにたとえていう。転じて、一般に、なまかじりでうぬぼれること。または、その者。生禅(なまぜん)。」

そうか、これは「禅」用語なのだ。自分自身の能力を客観的に判断できず、自信過剰の人間のことをいうのだろう。この言葉がなにやら気になる理由がわかった。反射的に自分のことを言われているような気がしたのだろう。

さて、言葉の意味は分かったのだが、キツネがあえて選ばれたのはなぜだろう。野狸禅でもよいではないか。その成り立ちを探るべくYAHOOで検索をかけてみた。出るかどうか半信半疑だったのだが、なんとヒット件数1820件。うーむ、これほど人口に膾炙した言葉だったのか。それを知らずに57歳まで生きてきてしまったのだとしたらなんと不勉強な、と一瞬愕然。

しかしそれも束の間、すぐになるほどと合点が行った。「野狐禅」という2人組のミュージシャンが実在するのだ。検索結果のほとんどはこのミュージシャンがらみ。「ファン」のメッセージがあった。

「野狐禅とは、二人組のミュージシャンの名前だ。最近聴いた彼らの曲があまりにダイレクトに僕の心に響いたので、さっそくCDを買ってみた。何といっても攻撃的で無防備でソリッドな歌詞がいい。自分のリアルな日常を、思っていることをそのまま詞にしたんだと想像する。」

なるほど、なるほど。当の野狐禅のホームページに入ってみる。竹原ピストル、濱埜宏哉という名の2人組だ。曲名に変わったものが多い。『自殺志願者が線路に飛び込むスピード』『便器に頭を突っ込んで』『さらば、生かねばならぬ』『金属バット』『拝啓、絶望殿』etc。かなり過激ですね。プロフィールにはこうある。

― 漠然と音楽で暮らしてゆくことを考えていた二人は、北海道のとある大学に在学中に知り合いました。何かをしたい、しかし何もできない。そんなことを思いながら、ダラダラとあまりにも長い時間を無駄に過ごしてきた二人は、そんな自分たちを「これでは死んでいるのと同じだ」とするにまで至りました。しかしそれは、「生きる」ということを、自分の情熱の矛先を見極め、それに向かって突っ走ることだと定義づけることになります。「生きてもないのに、死んでたまるか」。そんな想いから、1999年9月21日、二人は野狐禅を結成しました。―

たぶん進む道に悩んでいる頃、禅の世界に飛び込んだに違いない。そこで野狐禅という言葉にめぐり合ったのだろう。

それはいいとしてなぜ狐なのか、依然不明。漫然と検索サイトをみていくと次のようなフレーズにもぶつかった。

―達磨大師に【この野狐禅もの】と蹴ちらされるだけでしょう!!

すると、野狐禅はあの達磨(だるま)大師の言葉か。しかし、それを裏付ける資料が見当たらない。

僕が類推するにこういうことではないか。夕暮れの丘の丘に一匹の野ギツネがいる。前足を立て、じっと座って動かぬ姿をシルエットでみているとなにやら瞑想する禅僧のようにみえる。だが所詮はキツネ。実はなにも考えていないのさ。

しかし一方、野に座るキツネは「腹が減ったなあ」とただぼんやりしているだけなのかも知れないし、野ウサギが飛び出してくるのをジッと待ち構えているのかもしれない。つまりキツネなりに生きようと必死なのだ。それを、生意気にも瞑想のまねなどしやがって、などと考えるのはキツネをみる人間の側の勝手というものだ。

さらにサイトを探っていくと、ある禅のサイトに以下の解説があった。

 ―野狐禅とは『無門関』第2則の「百丈野狐」の話に因ちなんで「似て非なる邪禅」を指していう言葉である。真実の「無位の真人」は自我を空じた無我のところに自覚体認されるはずのものなのに徒に「未証已証(まだ証し得ていないのにすでに証し得たとする、ひとりよがり)」の大我禅者のことをいう。百丈野狐の公案においては、迦葉仏の時代に百丈山にいたという老人がかつて「悟った者は因果に落ちない」と断言して、仮の「空」の境涯を持ち出して因果を無視したために、五百生のあいだ野狐身の畜生道に落ちたという話である。ここから仮の「空」に停まって「妙用」の境涯に達しないうちに自ら悟り了ったとするひとりよがりの思い上がった禅を批判する言葉として用いられるようになった。

というところが野狐禅の由来だとしても、なぜキツネなのか。「野狐身の畜生道」とまで言われる筋合いがキツネにあるのか。このままでは当のキツネがあまりにもかわいそうな気がする。

「野狐禅」には次のような解釈も成り立たないだろうか。

師と仰ぐに足ると思った高邁そうなな人間であっても、もしかしたらその内面は、一見利口そうにみえる野ギツネのごとく、実は目先のエサのことぐらいしか考えていないかも知れぬ。浅はかな見方で他人をかいかぶるな。他人に安易に教えを請うな。道は自らの力で切り開くしかないのだ。

以上はもちろんこれは勝手な「野狐禅的」解釈に過ぎないのではありますが…。
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