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僕の偏見紀行
148 ミャンマー紀行(3)ヤンゴン発06:10、バガンへ
2013年2月20日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ バガンのニャウンウー空港に到着したヤンゴン発06:10、YJ891便。未だ朝の8時前で肌寒い。
▲ バガンの道を裸足で歩く僧二人。炎天下をどこまでも歩く。
▲ ホテル近くの仏塔で、炎天下の塔の周りを歩き続ける僧。日の当たる大理石の床は熱い。
早朝4時ウエイクアップコールで起床、手早く身支度を済ませ予約したタクシーに乗り込む。朝食なしでチェックアウトする僕に、ホテルはパンとフルーツの弁当を用意してくれた。タクシーは夜明け前の真っ暗な街を走り抜け、昼間なら1時間かかるところを30分足らずで空港へ到着した。

これからヤンゴン発6:10の国内線でバガンへ向かう。毎日数社の便が、ヤンゴンから人気の高い観光地であるバガン・マンダレー・ヘーホー(インレー湖に近い空港)を経てヤンゴンへ時計回りで飛んでいるが、何故かいずれも早朝に集中している。ミャンマー人は早起きなんだ。

カウンターへ行くと未だ誰もいない。搭乗予定の航空会社を確認してその前に並ぶ。一番乗りだったがすぐに人が増え始め、僕の後ろにも行列が出来た。アンタはミャンマー人か?いきなり僕の後ろから声がかかった。振り返ると韓国人らしい中年グループのオバサンだ。

ミャンマーに来て何度か声をかけられたが、向こうから日本人か、と言われることは無かった。ミャンマーか?も初めてだ。チャイニーズ?、コリアン?が多い。評判はともかくとして、この国に日本人の存在感は乏しい。

正月早々、わが国の大臣がミャンマーを訪問し、閣僚による今年初の訪問国だ、と恩を着せ、さらに過去の債権の一部を放棄し新たな円借款を再開する、などとクチをへの字にして言った。しかしこれには、ミャンマーへの進出競争で他国に後れをとった焦りが透けて見え、素直に喜んでもらえたか疑問だ。

僕の後ろの韓国グループは、中年男女数名でインレー湖へ行くという。ホテルは予約せず、現地で探すのが彼らの流儀らしい。しかし一人旅のバックパッカーならいざ知らず、中年男女グループは珍しい。僕に比べたくましい人たちだ、ちょっと羨ましい。

インレー湖のホテルは殺到する欧米人観光客で、殆どのホテルが満室だ、と僕は自分の経験を話した。3泊するのに毎日違うホテルしか取れなかった、というとさすがにオバサンはあわてたようで、今すぐ電話するからと、僕のホテルの番号を尋ねた。元気で積極的な韓国オモニ、彼女がグループのツアーリーダーのようだった。

時間通りにチェックイン手続きが始まった。手続中に、カウンター脇の若者がいきなり僕の荷物をヒョイと持ち上げ、自分の手で重さを確かめ、積み込み用のコンベアに載せる。

手荷物検査場は、前後数人分がごっちゃになったのをそのまま検査装置に押し込んで、ハイ終了。僕は腕時計をはずし忘れ、ブザーが鳴ったが、そのままフリーパス。要するに検査という手続きさえ踏めばOK、そんな感じだった。些細なことにもうるさいどこかの国とは大違いだ。

待合室は搭乗を待つ人で溢れていた。圧倒的に欧米人が多く、みんな大声で喋っている。かつてわが国の団体も評判が悪かったけど、どの国も群れると騒がしくてはた迷惑なのは同じだ。そんな彼らに圧倒されたのか、元気な韓国グループもおとなしい。

乗客はそれぞれ胸に飛行機のワッペンを着けている。航空会社によってデザインが異なる可愛らしいワッペンは、ほぼ同時刻に複数の便が集中するため、乗り間違いを防ぐいわば認識票だ。いい大人がワッペンを胸に群れているのは、幼稚園の遠足みたいで面白い。

時間になると、便名の書かれたプラカードを掲げた係りが、大声で便名を叫びつつ、あたりを歩き回る。すると同じワッペンがどっと搭乗口へ殺到する。これがほぼ10分おきくらいに数社続くので見逃すと大事だ。

乗り込んだ飛行機は80人乗りくらいの小型プロペラ機、満員だ。大柄の男性は膝を窮屈そうに折り曲げている。飛び立って1時間くらいでバガン平原が見えてきた。

赤茶けた土色の乾いた大地が広がっている。山にも平原にも緑が少ない。丘陵には深い谷が切れ込み、褐色の川が大きく蛇行している。

平原は一見土色の砂漠にも見えるが、周りを樹木で囲まれた畑も散在している。やがてその大地に広がる無数の仏塔が見えてきた。これが有名なバガンの仏塔群か。

いかにもローカル空港といった趣の空港は降りる客、乗り込む客でごった返していた。預けた荷物がリヤカーで運ばれて来る。沢山の男が荷物に群がる人海戦術だ。

荷物を待っていると、なぜか団体客のものばかり出てくる。良く見ると、団体に雇われたらしいポーター達が、リヤカーに群がっている。彼らは団体の荷物しか眼中になく、個人客は後回しになっている。リヤカーに積まれた僕の荷物は見えているのに、誰も運んでこない。仕方が無いので、僕は大声で荷物を指差し、早く持ってこいと叫んだ。

やっと荷物を受け取りロビーにでると、正面の机に数人のお役人が座っている。外国人はみんな呼び止めら10ドル払わされる。バガンへの入域料という。この地域の観光施設への入場料を一括して事前に払う仕組みだ。

10ドル払ってやれやれと思ったが、もう一つやるべきことがある。バガンからマンダレーへ移動する便のリコンファームだ。今時珍しい話と思うが、ミャンマー国内便では必須事項となっている。予約した航空券をヤンゴンの代理店で受け取る際に、くれぐれも忘れるなと念を押された。

僕は3日後に搭乗予定の航空会社のカウンターを探して、その旨を申し出た。係りは慣れた様子で、僕の航空券をチェックし滞在先の電話番号を尋ねた。そしてその情報を大きな台帳を開いて書き込み、何かあれば電話します、といった。全てが手書きだ。

そういえば航空券も手書きだった。未だ飛行機の予約システムが機械化されていないのだろう。だからたくさんの予約が殺到すると迅速に処理できず、全てを一旦キャンセル待ちにした上で、手作業で割り当てていくのではないか。そのため僕の予約もギリギリまで確定しなっかたのだと思う。

手続きを終え空港を出た。出発が早かったので未だ朝の8時過ぎ、爽やかな空気が心地よい。チェックインには早いけど、空港にいてもしょうがないのでとにかくホテルへ行くことにしよう。

僕は空港前にいた男にタクシーはどこか尋ねた。彼がまわりに声をかけると、真面目そうな若者が現れた。彼の車に乗ってホテルへ向かう。8人乗りのワゴンタイプ、これも日本の中古車だ。

着いたホテルは緑の多い庭園に囲まれたコテージタイプだった。環境はいいがかなり古びている。チェックインは出来たが、部屋は掃除中で昼まで待つことになった。

時間がタップリあるので、ホテルの自転車で付近を見てまわることにする。ホテル前の通りに出ると、車やバイクそして2輪馬車が行き交い、交通量は多い。舗装道路だが、路肩は舗装がなく、乾いた土が積もっている。そこに自転車のタイヤがめり込むとハンドルをとられて危ない。僕は早々に諦め自転車は返却し歩くことにした。

ホテルはバガン遺跡に近いニャウンウーの村はずれにあって、付近には新しいゲストハウス、レストランが点在している。真新しい両替所もホコリっぽい通りにポツンとあった。

時間の経過と共に日差しが強くなり、ジリジリと灼熱の太陽が照りつける。ホテル近くの仏塔では一人の僧が炎天下を歩いていた。やけた熱い大理石の床を裸足で何周もただ歩き続ける僧。赤い僧衣には汗がしみ込み、顔も汗にまみれている。

僕が見たミャンマーの僧はいつも歩いていた。ホコリ舞う道路を、誰も通らない夜明けの山道を、街中の雑踏を、早朝の托鉢でも、ひたすら歩いていた。(続く)
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64 インド紀行(1)遠かったインド
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61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
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32 ハワイ島滞在記(1)
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28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
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1 東北紅葉雪見風呂
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