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本ものの偽もの |
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2004年7月24日 |
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 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房、翻訳)などがある。現在、文化交流を目的とした十長生の会を友人たちと運営、活動している。 |
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▲ 花束のチョーカとピアス ピンクのバラと白い花はドイツビーズ |
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▲ グリーンのビーズはスワロフスキービーズ、 チェコビーズ |
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「リアル・フェイク・ジュエリー」。自分が世に出すジュエリーをこう呼んだのはココ・シャネルである。つまり「本物の、偽ものの、ジュエリー」。
今、北鎌倉の小瀧美術館で「コスチューム・ジュエリーの世界」展が開催されている(注)。この美術館は、美しい建物とコレクションが素晴らしく、ビーズ好きの女性たちにはよく知られた場所である。館内を一巡したあと、カフェの小石の敷きつめられた静かな庭先で飲む熱いコーヒーが美味しい。訪れた6月には紫陽花が満開だった。
私は、ジュエリーといえば宝石のことだと思っていたが、ここに展示されているジュエリーはすべて、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤなど本物の石や貴金属は使わず、半貴石(注)、ガラス、人造パール、非貴金属などを材料に作られている。
展示されているのは、20世紀初めから1960年代にかけて活躍したヨーロッパ、アメリカの12人のデザイナーたちによるジュエリーである。
その中の一人シャネルは、宝石や貴金属を使わなかったというだけでなく、ガラスや人工パールを宝石と同等に扱い、本物の宝石の合間にガラスの石を平然とちりばめたりしたそうである。本物であろうと、なかろうと関係なかったのだろうか…。いや、むしろそうすることで本物の宝石を茶化してさえいたのではなかろうか。
フェイク=偽ものという意味では、ビーズはその最たるものであろう。ガラスや貝殻や淡水パールに穴を開けたものを、釣り用のテグスや真鍮のワイヤーや糸などで、繋いだり、編んだり、台座に固定したり…。
私が幼い頃にもビーズ編みが流行したのを思い出す。プラスチックでできた小さな色とりどりのビーズを同じパターンでくり返し編んでつくる。そうして編んだ指輪やブレスレットを、みんな競って身につけたものだ。ここ数年私が作っているビーズアクセサリーも、編むという作業においては基本的にはあまり変わりがない。
こうしてつくられたビーズアクセサリーだから、いうまでもなく宝石のような財産的価値は全くない。だが、ビーズそのものの軽さには、所有していることさえ忘れさせてくれる気軽さがある。
そしてそれ以上に、ビーズには自ら作ったものを身につけるという楽しみがある。
(注)
小瀧美術館:http://www.kotaki-museo.com/
コスチューム・ジュエリー:一般的には模造ジュエリーと訳される。
「その唯一の衣装(コスチューム)にあわせて作られたジュエリー…(略)…それぞれの人の、それぞれの好みや着ている洋服に合わせて作られた、つまり押し着せではなく、自由に個性を重視してつくられている」(日本出版社『渡辺マリのミリアム・ハスケルコレクション』より)
半貴石: 水晶、ガーネット、翡翠、アンバーなど比重の軽い貴石をいう。水を1とするとアンバーは1.1、水晶は2.6。 4を越えると重いとされ、高価な石は重い比重を持つ。
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