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寄り道まわり道
2 カニカレー
2003年2月11日
吉田 美智枝 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]

福岡県生まれ、横浜市在住。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在に至る。自作のアクセサリーをBeads Duoというブランドで販売しながら、韓国の主に女性たちについてエッセーを執筆中。『朝鮮王朝の衣装と装身具』(共著)、韓国近代文学選などの翻訳がある。
▲ ションプーというピーマンのような形をした果物を買う。さっぱりとして不思議な美味しさがある。バンコク郊外にある水上マーケットで。
1年を通じ気温が36°C前後の蒸し暑いタイに住んでいると、ほのかに甘くピリリとスパイスの効いたタイ料理が本当に美味しいと感じるようになる。インドネシアやフィリピン、マレーシアなどに暮らした人ならきっと同じような体験をしているだろう。
 
一口にタイ料理といっても、さまざまである。スープ類、麺類、サラダ類、肉料理、魚料理、揚げ物、そして炒め物。これらのタイ料理の中で私の一番好きな食べ物は、カニカレーだ。タイ語で「プー・パッ・ポンカリー」。「プー」は蟹、「パッ」は炒める、「ポンカリー」はスパイスミックス(カレー)のこと、つまり蟹のカレー炒めのことをいう。

甲羅つきの大ぶりの蟹をネギなどの野菜と一緒にカレー味に炒めたものをタイ米の白いご飯にかけて食すのだが、ココナッツミルクを含んだトロリとしたカレーの味が口いっぱいに広がる。冷えたビールを片手にカニカレー…。昼間の汗と疲れが吹き飛んでいくようだ。
 
バンコク市内には、このカニカレーを出すお店がいくつもある。「ソンブーン」という大衆タイ料理店もこういった店の一つである。といってもあなどるなかれ、おざなりな味の料理を出す店ではない。

地元のタイ人に聞くと、厳密にはこの店は中国海鮮料理店に分類されるのだそうだ。そういえば、空芯菜の牡蠣油炒め、アサリの辛味炒めなどどれをとっても美味しい。タイという国は不思議な国で、一流レストランでも路上の屋台でも同じメニューを取り揃えており、そして“ハズレ”がない国なのだ。
 
カレーといえば、私はインド料理と思っていたが、タイにも“ケーン”と名のつく汁状のカレー料理があった。中の具(野菜、とり肉、アヒル肉、エビなど)によって呼び名もさまざま。ターメリックなど数種のスパイスをミックスしてできたカレーは、食べるときはふうふう汗をかくほどだが、体にはいると体を冷やす効能があるのだそうで、まさに常夏の食べ物なのだ。タイにはインド系の人びとが多く住んでいるので、カレーが発達したとしても不思議ではない。
 
そこで、私はハタと気づいた。
「な〜んだ、そうだったのか。カニカレーは、インドのカレーと中国の炒め物をミックスした食べ物じゃないの」と。 

昔からこの地域のことをインドシナ、英語ではIndochina(=インドチャイナ)という。そうなのだ。ここはインドとシナ(中国)の間にある国なのだ。インドシナのインドシナたる所以…それがこのカニカレーに象徴されているのではないか。
 
そして、インドと中国という大国に挟まれた半島の一国タイの成り立ち、その地理だけでなく食に象徴される文化の形…きらきら光る寺院や仏像や民俗衣装、ときに広東語に似た単語の数々、そしてタイ人たちのワイをする(手を合わせる)あいさつなどが、私の脳裏をよぎったのであった。
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