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かくてありけり
58 日曜農園から(2)−農事暦
2015年3月25日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
▲ 普段より1か月早いジャガイモの植え付け。種イモを2〜3等分して灰をつけ、切り口を下に向け埋める。6月中旬には収穫できる
▲ 独特の香りを放つ沈丁花の花
▲ 1月末に農園から自宅の庭の隅に移植した九条太ネギ。鍋の材料や薬味に大変重宝している。3月いっぱいは食べつなげるだろう
最寄駅から帰宅の道すがら、本通りから1本入った住宅街を散策していると、夜陰に生姜菓子を思わせる匂いが漂い、鼻腔を刺激する。姿は見えないが、どこかで沈丁花が咲いている。この花の香りに接すると「ああ農閑期は終わりだな、農園も活動再開だな」と思う。そう、沈丁花はジャガイモの定植時期を知らせる暦なのだ。

温度や日照など自然条件に依存する農業は暦を大事にする。農業に特化したものは農事暦と呼ばれ、農作業開始時期の目安となっている。農業は四季の変化を如何に的確に把握するかにかかっている。

立春、啓蟄、春分など1年を24の季節に等分した二十四節季や、節分、彼岸、入梅など季節の変わり目を表した雑節などはそれぞれが具体的な日付に結びついている。
一方、数字ではなく、その時期に現れる自然現象が示してくれるものもある。例えば沈丁花、サクラ、コブシの開花や、虫、蛙、鳥などの出現は、皮膚感覚に根差した指標として分かりやすいものだ。こちらの方が実際の気候を反映しているように思える。植物の生理学からは、開花に至るまでには固有の積算温度があり、寒ければ遅くなり、暖かければ早まるのだと教える。

生物だけでなく景観の変化も農事暦となる。山の残雪が形作る「雪形」もその一つで、「農形」と呼ばれる。鳥の形の「農鳥」、種を播く老人の姿の「種まき爺さん」など雪国の各地に伝承されている。その形の現れ方、変化の具合が田起しなど農作業開始の基準となってきた。
インターネットの画像検索をすると富士山や鳥海山などの例がたくさんヒットする。静岡県と山梨県をまたぐ農鳥岳はまさにそのことを呈した名前だろう。北アルプスの白馬岳は雪形の「代掻き馬」が「代馬(しろうま)」となり「白馬」に代わったと言われる。

30数年前、ニュース写真を取材する上で季節感が大切と思うようになった。そこで、歳時記それも写真やイラストで表したカラー歳時記全五巻を購入した(これは今でも愛用している)。その後、日曜菜園を始めたら、季節の移り変わりが肌身で感じられるようになった。

作物栽培の参考書も数冊購入した。それらを見ていて、ある一冊の記述にずれがあることに気付いた。他の本と比較して分かったのは、その本の著者は京大農学部の先生で、関西地方を基準に書いており、横浜の気候には当てはまらないことが散見された。土地によって暦は違うんだなと思った。それ以来、種まきや苗の定植時期は、地域の農協や、地元の農家に聞くのが一番間違いがないと知った。

週末菜園を始めた数年間はまめに作業日誌をつけていたが、年間の流れが把握できてからはこれをやめ、5年連用日記に日常の出来事と共に簡単に記すことにした。連用日記は今4冊目に入っている。これのよいところは、同時期の数年間の比較が簡単にできることだ。読み返すと気候は毎年同じようでいて、実は各年で差があることがよくわかる。記録の集積が、自分用にカスタマイズした農事暦になり、歳時記にもなっている。

ちなみに前回以後の農作業は以下の通り。
1月25日(日)自区画の収穫を終え、残滓を片付け更地にした。九条太ネギが畝幅で1.5m分残っていたが、根を付けたまま掘り起し、自宅の菜園に移植した。

2月15日(日)新年度分の契約締結。年間費用4万円を納める。その後、畑全面に堆肥を散布。

2月22日(日)ジャガイモ「キタアカリ」を定植

3月1日(日)大根、小松菜、ホウレンソウ、小カブの種まき

3月14日(土)ナス畝を作り、土壌消毒を施す

※これを見ると分かるように、我が農園は沈丁花の開花よりかなり早く、ジャガイモの植え付けをした。今回、園主さんは、収穫時期や後作の都合を勘案し、早めたようだ。晩霜が降りないことを祈りたい。

次回3月29日(日)から本格的に動き出す。
ここまで書いてふと思う、私の花粉症も、暦の一部となっているなあと。20数年来の付き合いかと苦笑いする。
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