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僕の偏見紀行
152 ミャンマー紀行(7)熱風都市マンダレー
2013年3月19日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ マンダレー駅構内にて。数時間も前から沢山の人がホームに座り込んで列車を待っていた。
▲ 炎天下で出会ったサイカーとそのドライバー。出会えて助かった。
▲ ホテルの屋上から眺めた夕暮れのマンダレー市街。
やはりウエイクアップコールは来なかった。見たら電話機が壊れている、なんじゃこれは。こんなこともあろうかと、持参した目覚ましをかけておいてよかった。最後までいい加減なホテルだ。早朝5時前、早起きは辛いけど、日本とは2時間半の時差があるので助かる。

フロントへ行くと灯りがついている。スタッフの若者と一組の東洋人のカップルがいた。若者に、ウエイクアップコールが無かったぞ、と文句をいうが、言葉がうまく通じず要領を得ない。そのうち彼は、僕が返したキーを持ったままいなくなった。

東洋人カップルは台湾の人だった。深夜バスで着いたばかりらしい。バスやボートを乗り継いて旅している。早朝に着くためこのホテルを予約していた。あとは安くて快適なゲストハウスを探す予定だ。

それがいい、このホテルはひどいぞ、気をつけたほうがいい、僕はそうアドバイスした。するとそんなことは慣れているので気にしない、といわれた。先日の韓国組や昨日のフランス人などもそうだが、みんな逞しい、

暫くして戻った若者が、ミネラルウオーター代金を払え、と言い出した。部屋の冷蔵庫をチェックしてきたらしい。故障した冷蔵庫のものなど飲むはずが無い。客室係りがいい加減だったせいに違いない。

そんなもの払えるか、と言ったものの、困惑した様子の彼に同情して払うことにした。後で彼がフロントの意地悪女にいじめられても可愛そうだ。ところで予約したタクシーは来るのか、と彼に念を押すと、これだけははっきりとうなづいた。

定刻に来たタクシーは、空港目指して真っ暗な夜道をすっ飛ばした。未だ朝の5時半だというのに、町角には人がたむろし、屋台の灯りが揺らめいている。

空港に着くと一番乗りだ。我ながらせっかちな性格だ。しかしすぐに人が増え、後ろの行列が長くなった。ほぼ同時刻に数社の便が出るので、ここでもヤンゴンと同じ混雑が繰り返された。

チェックインを済ませ、待合室へ行く途中に国際電話サービスカウンターがあった。申し込むと、係りの女が日本まで1分3ドル、といいながら携帯電話を渡してくれた。通話が終わると、どうやって計ったのか分からないが、2分間で6ドルといわれそのまま支払った。

今日の飛行機は自由席、マンダレーへ行く人、さらにその先まで行く人、みんな一緒にどやどやと乗り込む。早めに席を確保しないと座れない、ふとそんな不安がよぎる。無事に座れた僕は、隣りのアラスカから来たという男性に、あなたもマンダレーまでか、と尋ねた。すると彼は肩をすくめて「I HOPE SO!」

マンダレー空港はさすがに国際空港、設備の整った大空港だった。預けた荷物は回転台から出て来る仕組みだったが、途中で停電でストップし、長いこと待たされてしまった。

空港からタクシーで1時間ちょっとでマンダレー市内のホテルに到着した。早朝便だったので着いたのは10時過ぎ、部屋の準備が終わるまで待たされた。ホテルは中心街から数キロ離れた、交通量の多い通りに面した中国系のビジネスホテル風で、車やバイクの音がうるさい。

あたりに食堂や物売りの露店などなく、ホコリをかぶったビルや事務所の建物が多いようだ。これでは気軽に食事したりお茶をのんだりできない。こんなところに3泊か、いささか気が重い。ここはなかなか予約が取れず仕方なく選んだホテルだった。

しかし中国系と思われる若いスタッフは優秀だった。テキパキと仕事をこなし、僕の、静かな部屋を、というリクエストに、道路と反対側の最上階の部屋を素早く取ってくれた。広いだけがとりえのような部屋だが、お湯も出るしクーラーも順調だ。

とりあえず昼飯を食いに街に出ることにしたが、足が無い。バスもタク−もあまり見かけない。マンダレー駅あたりまでどうやって行くのか、フロントに尋ねた。すると、ホテルに1時間600円でチャーターできる車があるという。その車でまずマンダレー駅へ向かうことにした。

10分ちょっとで駅に到着したが、戻る時間がはっきりしないので車は返すことにした。

巨大な駅舎には数本のホームが並び、既に大勢の人が座り込んで列車を待っている。列車は1日数本しかないのに、この人たちはいったい何時間ここで待つのだろう、

構内のMTT(ミャンマー・トラベル&ツアーズ)のオフイスに入った。見ると、机を間にした中年女性と若者が、額をつき合わせてお金の勘定中だ。二人とも真新しいドル札を数えるのに夢中で僕に気づかない。

声をかけると若者が振り向いた。国営旅行社のスタッフらしく賢そうな顔立ちだ。マンダレー滞在中に列車で日帰り旅をしたい、と尋ねたが、要領を得ない顔でそんな列車はないという。ただ、列車に乗るのが目的の旅というのが、彼には良く理解できないようだ。

仕方がないの昼飯に適当な食堂を教えてもらうことにした。ミャンマー料理の旨いところ、というと、そこら中に沢山あるという。地元で一番評判のいい店、と念を押すと、地図で教えてくれた。駅から数ブロックで、歩いてもすぐらしい。

気楽に歩き出したものの、真昼の太陽は容赦なく照りつけ、ジリジリと焦がされるようだ。そして車・バイクの騒音と排気ガスが物凄い。マンダレーの喧騒が一段と激しいのは、バイクが多いせいでもある。ヤンゴンでは乗り入れ禁止のバイクが、ここでは沢山走っているのだ。降りつもる土ホコリで道路沿いの木々も白っぽくなり、一段と暑さを感じさせる。

車でも拾えればいいが、流しのタクシーなど見当たらない。諦めて出きるだけ日陰を選んで歩く。すると向こうからサイカーがユラユラとやって来るのが見えた。これは自転車の横っちょに座席を取り付けた簡易人力車、乗り込むと、風に吹かれてゆるゆると進んだ。

ようやくたどり着いた食堂は、昼飯時とあってお客で一杯だった。大半は地元の人のようで、その合間に外国人観光客がちらほら見える。席が無くて困っていたら、若い女店員が素早く裏手の第二食堂へと僕を案内してくれた。

そこも人が溢れ女店員が忙しげに走り回っている。ミャンマー風ランチをオーダーする。暫くすると、いつものごとくテーブル一杯に皿が並んだ。中でもチキンカレーの大きな腿肉が目立っている。早速かぶりつくと、ジューシーだが歯ごたえがある。しっかり噛みしめると、スパイシーなカレースープと肉汁が絡み合って実に旨い。

ご飯にぶっ掛けて夢中で食っていると、洗面器のようなおひつにご飯を盛り上げた店員が、何度も走り寄ってはおかわりを勧める。最後に店員の親方らしきオバチャンがやってきて、コイツはフリーだ、といいつつ僕の目の前にバナナをドンと置いた。フリー、大好き!、僕は応えた。活気溢れた食堂で、僕は身も心も満足した。

そこからホテルへ戻ることにしたが、どうしたらいいのか途方にくれた。サイカーは営業範囲が定められ、あまり長距離移動はできない。

とりあえず駅まで戻って、MTTで相談してみよう、僕はそう考えて再びサイカーに乗った。駅に着いてMTTに行くと、午後の休憩時間なのか、先ほどの若者が一人机にもたれて昼寝中だ。気の毒だったが声をかけ、タクシーはどこで拾えるか尋ねた。そこらに沢山いるよ、そういって彼は駅前広場を指した。

駅前広場に行くと確かに車が沢山並んでいる。しかしどれがタクシーなのか分からない。いずれも年季の入った乗用車やワゴン車・小型トラックだが標識もなく、ナンバーだけでは、どれがタクシーか分からない。仕方ないので、そこらでたむろしている男達に向かって、タクシー!タクシー!と連呼してみた。

すると一人の若者が素早く寄ってきてどこへ行きたいか、とカタコトの英語で尋ねる。僕がホテル名をいうと、彼はうなづいた。いつの間にか男達が周りに集まって、このやり取りを珍しそうに見ている。僕は最初に応えてくれた若者の車に乗ることにした。

彼の車は日本製の小型乗用車だった。中古車だが掃除が行き届いて清潔だ。ホテルへの途中、彼にタクシーの見分け方を尋ねた。するとプレートの色が同じでも、ナンバーと記号が違うことが分かった。しかし流しは少ないので、駅や市場などで声をかけるしかないようだ。

彼の名刺を見ると、彼はタクシ−のオーナードライバーのようだ。若いのに大したものだ、車も綺麗だし、礼儀正しいところも気に入った。僕は明日のマンダレー観光を彼に頼むことにした。交渉の結果決まったチャーター料は1日3000円だった。(続く)
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71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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