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僕の偏見紀行
153 ミャンマー紀行(8)マンダレー町歩き
2013年3月25日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 金箔工房、想像以上の手間と力仕事だった。
▲ マンダレー郊外の「ウー・ベイン橋」、チーク材の美しい橋。
▲ マンダレーヒル頂上の寺院で見かけた貴婦人。
約束の時間に来た車でマンダレー市内観光に出かけた。いくつかの寺院・仏塔を巡る。いずこも人で溢れ、強い日差しが容赦なく照りつけている。ただ寺院の内部や仏塔の日陰は涼しく心地良い。

著名なマハムニ・パヤーでは、金箔を購入した信者が壇上のご本尊の足元に群がり金箔を貼り付けていた。いったいどれほどの金箔がここで使われたのだろうか、ご本尊の裾のあたりは分厚い金箔で盛り上がっている。

その金箔を製造する工房があるというので見学に行く。作業場では、筋骨逞しい若者が一心にハンマーを振るっていた。あたりにハンマーの重くて鈍い音が響いている。

説明によると、数年間水につけて柔らかくした竹を乾燥させ、それを叩いてすのこ状に薄く延ばす。金をすのこに挟み、ハンマーでひたすら打って延ばしていく。なかなかの重労働だ。完成した金箔を紙に挟んで商品に仕上げるのは若い女達だ。僕はもっと簡単に機械で製造しているかと思っていた。

暑い町中を移動中、クーラーをつけるようドライバーに頼んだ。しかし、いつの間にかクーラーが止まり車内が暑くなっている。付けっぱなしにしてくれ、再度頼むと彼は、ガソリン代がかさむから追加料金をくれ、と言うのだ。そんなバカなと呆れたが、ここではそれが未だ常識らしい。車という道具が未だ特殊な存在のようだ。

街の中心部を走っているとお堀と長い城壁が見えてくる。ミャンマー最後の王朝、コクンバン朝の王宮跡だ。要所に物見の塔を構えた、3キロ四方の城壁は往時を偲ばせ壮観だ。

お堀を渡った先の入り口には厳重な検問所が設けられ、銃を構えた兵士によって守られている。今でも旧王宮は軍の施設としえ利用されているのだ。観光客はここで入域料を支払うことになる。

宮殿そのものは第二次大戦の戦火で消失し、その後再建されている。観光客は再建された宮殿までしか入れないが、その割には大げさな警備だ。宮殿は当時のまま再建されたというが、なんとなく映画のセットを思わせた。当時のまま残るのは城壁のみだ。

市街地を抜け、ホコリが舞う郊外の道路を南へ10kほど走ると、美しい湖に出会う。そのタウンタマン湖にはチーク材で造られた、全長1200mの橋が架かっている。

160年前に建造されたが、その後も修理を重ね、当時の美しい姿を保っている。人がすれ違うほどの幅しかないが、橋の中ほどには屋根つきの休憩所が設けられ、人々がのんびりと休んでいる。

のんびり歩くと、日差しが強いものの、水上を吹き渡る風が心地いい。乾期のため水位が下がり、湖岸に広がる草地では牛の群れがゆったりと草を食んでいた。

一日の終わりにマンダレーヒルへ向かった。旧王宮の裏手に聳えるこの丘には、多くの仏塔・寺院が建てられており、全体が仏教の聖地となっている。頂上の寺院からの眺め、特に夕陽はマンダレー観光の目玉の一つだ。

丘のふもとに差し掛かった時、突然ドライバーが車を止め、丘を登るなら追加料金が欲しいと言い出した。またか、なんで今頃そんなことを言うのか、腹が立つ。しかし彼は頑として、マンダレー市内巡りはふもとまで、登るなら500円追加と言い張る。頭にきた僕はこのままホテルへ戻ろうかとも思った、しかしここまで来て引き返すのも未練が残る。

結局彼の言い分を吞むことにした。しかし妥協する前に僕は、こんな話は事前にしなければ信用を無くす、特に日本人には嫌われるぞ、と言ってやった。

頂上の寺院に登ると地元の参拝客と外国人観光客で混雑していた。特に西側の夕陽を眺める一角は、日没には未だ早いというのに、観光客で一杯だ。

寺院には数匹のネコがいた。優遇されているらしい彼らは、満腹なのだろう、声をかけても知らん振りだ。悠然と歩きまわり、優雅に寝そべっている。大理石の床に映るそのシルエットは貴婦人を思わせた。

やがて西の空に茜色が広がり、周囲の雲は淡いピンク色に染まった。丘から見下ろすマンダレーの街並が薄闇に溶け込み、エーヤワディー川がほの白く見えている。次第に夕闇が広がり、沈みかけた太陽は、より赤く、大きくなった。さすがに多くの人をひきつける眺めだ。

ホテルへ戻り、ドライバーへ約束の料金を支払う。彼は悪びれることなく、3000円プラス500円を喜んで受け取った。後出しジャンケンのような、追加料金など、僕の感覚ではとんでもないことだが、彼らはそんなに気にならないようだ。

夕食はホテル屋上のレストランに行った。ホテルのまわりに食堂が無いため、あまり期待せずにいったのだが、これがよかった。さすが中国系のホテル、中華料理が旨い。白身魚の清蒸、ご飯、そしてミャンマービール。マンダレーにいた3日間、夕方になるとここに通い、ウエイターの若者と仲良しになった。

タクシーで連れまわされるのもあまり楽しくなかった。明日は自分の足で歩こう。エーヤワディー川の対岸に、ミングォンという小さな村がある。そこには建設途上で中断された巨大な仏塔遺跡が今も残るという。それは壮大な仏塔建設を始めたものの、志半ばで倒れた王の夢の跡らしい。(続く)
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60 南会津の旅 弁愡浚村)
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