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コンテンツ(9) |
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2004年4月27日 |
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 | 中山 俊明 [なかやま としあき]
1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。 |
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コンテンツのことばかり書いていてもキリがないし、他の話題が書けなくなるので、次回でいちおうこの連載の区切りをつけたい。
僕がインターネット時代のコンテンツの問題に興味がある、というより、こだわるのは「写真」というコンテンツと、「インターネット」という流通手段を組み合わせるビジネスをここ10年やってきたからだ。
「写真」もご他聞にもれず、インターネットの登場とともにいま大きな波のなかで翻弄されている。写真はフィルムという受け皿(メディア)に映像が定着されてはじめて、人と人が運搬可能な「商品」となる。紙というメディアに文字が印刷されてはじめて新聞や雑誌という商品になるのと同じことだ。実は写真ビジネスの世界でも、新聞と共通する「流通の中抜き」問題が大きくなってきた。
「ストックフォトエージェント」というビジネスがある。写真家から撮影された作品を預かる。写真を必要とするユーザーはこのストックエージェントにでかけ、ロッカーから自分のイメージにあったフィルムを探し出す。これぞというものが見つかればそのフィルムを借り出す。印刷等で使用したあと、このフィルムをエージェントに返却する。
この業界が売り上げ激減に悩んでいる。10年前に比較すると、日本の業界全体で250億円くらいあったはずの売りあげが30−40%は落ちた。10年でこれほどの落ち込みを示す業種は、はっきり言ってしまうと(関係者がこれを読むと怒るかもしれないが)「将来はない」ということだ。
一般人の感覚だと250億円というのはけっこう大きい市場のように思えるかも知れないが、産業としてみると小さい。日本全体の納豆の売り上げ額が年間1600億円だ。この差は、かたや大衆向け数と低価格で勝負する世界(B to C)、かたやプロ向け高価格、小点数商売(B to B)という背景からくるものだが、特に不景気の時代はB to Bビジネスが受ける影響は、B to Cビジネスが受けるそれより大きい。
しかも写真は、質が落ちることにさえ目をつぶれば、素人が撮ってもなんとかなる場合も多いし、いまはやりの超安値の著作権フリー写真を使う手もある。つまり予算がなければ他の代替手段がけっこういろいろと考えられる世界だ。ということはお客からの値引き圧力も強い、ということになる。
だがストックフォトエージェント業界低迷の原因は不況だけではない。ここでも「頭痛の種」はデジタルとインターネットである。デジタルカメラをお使いの方はご存知のとおり、もうフィルムはいらない。写真は電子ファイルである。ファイルであるからインターネットで簡単に送れてしまう。ならば、すべての写真をファイルにしてしまい、それをデータベース化し、インターネットにつなげば、オンラインビジネスがやれるではないか、ということになる。
となるといま都会の一等地にあるエージェントの店舗はいらなくなる。サーバはどこにあろうと、たとえ山の中に置いてもいっこう差し支えないからだ。店を訪ねてくる顧客対応係はいらなくなる。フィルムの貸し出しや返却といったわずらわしい手間がいっさいかからなくなる。お客がインターネットで検索し勝手にダウンロードしてくれればいいのだから。
ではストックフォトエージェントは高い地代と人件費の都会から離れ、すべてをデジタルとインターネットにまかせてしまえば良いではないか、ということになるが、ことはそう簡単ではない。
フィルムをスキャナーにかけデジタル化ファイル化するのに相当な手間と費用がかかる。写真のファイルは文字などに較べると桁違いに情報量が多い。例えばA4サイズの印刷にたえる写真ファイルの大きささは50メガバイト。写真1枚でなんとフロッピーディスク50枚分の容量が必要だ。これを何十万枚と蓄積するための設備投資は想像を絶する巨額である。
たかだか250億円の市場を細々と分け合ってきた小企業にはとても耐えられないほどの先行投資が必要となる。だがいっぽうCORBIS、GETTYといった世界企業がこの写真販売ビジネスの世界にがんがんと進出しつつある。CORBISの経営者はあのビル・ゲイツ。GETTYはあの石油王ゲティの孫である。(続く)
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