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僕の偏見紀行
161 (続)韓の国迷走記(1)再びのソウル
2013年11月19日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 水原華城、蒼竜門から続く城壁に立つ旗幟。秋の日差しの下で鮮やかな色彩が美しい。
▲ 只今仁寺洞でブレイク中。奇妙な曲がりくねったこのパイプ、実はソフトクリームのコーン。注文するとこれ一杯にアイスを詰めてくれる。1個500円だったと思う。いい大人(僕もその一人)がコイツをかじりながら沢山歩いていた。味は一度食えば十分といったところ。
▲ 仁寺洞の路地裏食堂。店頭で旨そうな巨大餃子を蒸していた。
抜けるような青空の下で水原華城の蒼竜門が聳え、城壁には華やかな彩りの旗幟が秋風にはためいている。門に上り広大な城跡を眺める。昨年やり残したことがひとつ達成できた。

1年前の秋、ソウルから不慣れな地下鉄で無事水原に到着したまでは良かったが、バスを乗り間違え、暑さと空腹に負けて途中で引き返してしまった。今年は水原駅からタクシーを利用したが、実にあっけないほど簡単に蒼竜門に到着した。淋しいことだが僕も意地を張らずにバックパッカーのマネゴトから卒業する潮時かもしれないなあ。

水原でやりたいことがもう一つ残っている。それは城内巡りの華城列車に乗ること。列車といっても遊園地の豆電車の自動車版なのだが。

チケットを購入して乗場に向かうと、すでに列車は幼稚園の団体で一杯だ。係りの女は満員だから午後の便に乗れという。それでは2時間以上待つことになる。僕は手にしたキップを係りに見せて何とかならないか頼んだ。キップを見た女は、それはウオーキングチケットだ、と素っ気ない。あろうことか、あわてていたのでよく確認しなかった僕のミスだ。またしても思いを残した。

ソウルに戻り旅情報を集めに韓国観光公社の窓口へ向かう。今回初めて訪れる予定の安東(アンドン)へのアクセスとそこの伝統芸能に関する情報が欲しかった。

もう2度目のソウルだから市内の移動はもっぱら地下鉄にしよう、と昨日仁寺洞の宿に荷物を置くとすぐに地下鉄乗車訓練に出かけた。

宿から最寄の地下鉄駅は鐘路3街(チョムロサンガ)、3本の路線が乗り入れる巨大な駅だ。地下鉄の入り口を降りると通路が迷路のように交錯し、いたるところにカフェや様々な商品を売る小店が並ぶ地下商店街が広がっている。

僕はまず駅の場所とおぼしきあたりで入り口を探した。3号線と5号線の入り口はすぐに発見できたが、翌日行く予定の水原方面の1号線はさっぱり見つからない。僕は通りすがりの人に何度か尋ねたが言葉が通じず途方にくれた。

やっと英語を話す親切な男性に出会いほっとする。彼は、着いて来い、数百メートルくらい先だ、といいながら人ごみをズンズン歩く。僕は遅れまいと後をついて歩きながら見知らぬ国に来た心細さを感じた。

男性は改札口までついて来たばかりか、乗場の方向まで教えてくれた。韓国に着いたばかりで不安だった僕には彼の親切がしみじみ有り難かった。

その後半日掛けてあちこち地下鉄を乗り降りしたらなんとかコツが分かってきた。乗車券は日本と同じプリペイドカードだ。日本と異なるのは1回限りのカードがあること。これはカード代込みの料金を支払って1回カードを購入、使用後は出口脇の発行機でカード代金を回収するようになっている。

駅は自動化が徹底され構内に駅員の姿は殆ど見あたらない。万一のために改札口ヘルプボタンが設けられている。使用済みの1回カードの精算がうまくいかないのでこのボタンを押した。するとすぐに駅員が現れ、事情を聞くや自分のポケットから500ウオン玉を出してくれた。もしかしたらこれは個人のカネ?

鐘路3街乗り入れの3本の路線も地下通路でつながっていた。注意して見ると案内標示にはハングルと英語が併記されている。それに従えば時間はかかるが問題なく移動できた。地下通路の様々な店を見物しながら歩くのは結構楽しい。洒落たカフェのそばにトッポギの屋台風の店があったりするのが面白い。
これ以降ソウルでの外出には市内地図と地下鉄路線図が欠かせなくなった。

こうして地下鉄で観光公社にたどり着いた僕は地下の案内コーナーへ行った。昨年もお世話になったがここのスタッフは優秀だ。日本語、中国語、韓国語に対応してくれる。

今回の目的は安東の韓屋村見学とそこで上演される伝統芸能の仮面劇を見ること、そして昨年訪れた全州(チョンジュ)にももう一度行って静かな韓屋の路地など歩いてみたい。

ガイドブックで大体の状況は分かっているが、その情報を再確認しないと現地で困ることになる。また安東へは向かう高速バス乗場や時刻表も確認したかった。

安東韓屋村の仮面劇は予定通り、週末と水曜の午後上演ということが確認できた。バスの時刻やターミナルも分かった。安東行きは1日に40数便も出ており、3時間で到着らしい。

全州のパンソリについても尋ねた。昨年はパンソリ国際フェスティバルのため定例の劇場公演が取りやめだった。今年はどうか気になっていたが、滞在予定の週末にはいくつかパンソリ関連の公演があるようだが詳細は現地での確認となった。ただその頃は全州名物ビビンバに関するお祭りもあるようでかなりの混雑が見込まれるという。

公社を後にした僕は、家内達と合流するためにソウル市役所そばのホテルに向かった。実は僕の家内は九州に里帰り中だったが、福岡から自分の姉と2人でパックツアーを利用してソウルに来ていたのだ。全州の魅力を僕から聞いた彼女がツアーの合間に全州へ行くというので僕が案内することにした。

夕食は仁寺洞でとることにしてホテルからタクシーに乗った。仁寺洞の大通りから路地裏に入り、昨夜宿の女将さんに教えてもらった食堂へ入った。そこで食ったプルコギがとても旨かったのだ。この食堂、入り口は小さいが中は広い。入り口あたりで巨大なギョーザを蒸し、チジミを焼いている。その香りがたまらない。

6時を過ぎた頃には店内は満員となり、仕事帰りのサラリーマンや女性達のグループで大いに賑わう。観光客の姿は殆ど無く地元の人たちが多いようだ。僕たちもプルコギ・カルビタン・麺類など腹いっぱい食った。それにビールを飲んでも1人1000円はかからなかった。

食事を済ませた僕は家内達と別れて宿に戻った。僕の宿は仁寺洞大通りから少し離れた路地裏の韓屋だ。日暮れには入り口の頑丈なお屋敷の門が閉まるので、客は通用口の合鍵を渡されている。夜になると宿の主人は近くの自宅に戻ってしまう。韓屋の宿はこの方式が多く、昼間でも不在のことがあるのでチェックイン出来ず困ることもある。

この宿は中年の夫婦でやっており、昼間は旦那と奥さんが交代で詰めている。インテリ風の旦那は英語を話し、奥さんはあまり話さないがこちらの言うことは分かるようだ。ふたりともいろいろと気を遣ってくれ、時おりお茶やジュースなどを差し入れてくれた。

相客は香港から来たという若いカップル1組と欧米人の中年男性が1人だった。中年男は出張で来たのか、毎日朝早く出勤スタイルで出かけていた。香港カップルは何をしているのかよく分からないが、朝8時の朝食には現れず、9時ごろ起き出していた。

10月下旬のソウルは晴れれば日差しが強く暖かいが朝晩は冷え込む。部屋はオンドル式の床暖房だった。狭い部屋には小さな机とセンベイ布団一組以外何にも無い。センベイ布団といっても綺麗な模様の上布団と清潔なシーツ敷き布団が気持ちいい。床を触ってもそんなに暖かいと思えないが、夜に外気が冷え込んでも部屋の中はほどよい暖かさだった。

床に入って驚いた。薄い布団の中はホカホカととても心地いい。外気とは障子で隔てただけの部屋の薄い布団の中がこんなに暖かく心地よいとは。ずい分昔からあるというが、オンドルは大した技術だ。昔はカマドで薪を燃やした熱を利用したらしいが、今は温水式のようだ。  (続く)
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71 小笠原の旅(1)波路はるかに
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68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
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57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
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53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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