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僕の偏見紀行
224 またもやベトナム(4)ダラット高原列車
2017年7月21日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ダラット駅ホームにて。ポーズをとる可愛い女の子
▲ 楽しさはじける記念撮影。楽しそうでいいなあ。
▲ 野菜畑を通過中の車内。手前がVIP1の席。
ダラットに行ったら是非乗ってみたかったのが人気のダラット高原を走る列車。これはベトナム戦争当時一度廃線となったローカル線を、戦後観光列車として復活した。片道30分ほどの隣村まで走っているが、観光用なので運行は時期によって異なるという。

ガイドブックでこの列車の写真を見たが、かわいいデザインの楽しそうな車両が気に入った。僕のダラットでのメインイベントだ。ところが運行状況や切符の購を入法などが分からない。

ホテルで尋ねてみたが要領を得ない。そこでインフォメーションセンターへ行くことにした。日本の真夏並みの炎天下を地図を頼りに汗をふきふき歩いた。センターは坂道を上った、市場を見下ろす高台にあった。早速スタッフに尋ねたが細かいことはよく分からず、駅まで直接きくように、ということだった。

駅はホテルからタクシーで10分ほどのところにあった。かわいい駅舎は遊園地の入り口のようにも見える。駅前にはタクシーやバスが並び、観光客が多い。最近はどこへ行っても鉄道ファンが多い。希望する切符がうまく手に入るだろうか、僕は思わず急ぎ足になった。

窓口で勢い込んで尋ねると、中年の係員がのんびりした口調でどんな切符が欲しいのかという。聞いてみると、切符には硬臥・軟臥・VIP2・VIP1、と4種類もあるという。硬臥というのは、中国でいう「硬い寝台」つまり普通寝台だと思うが、ここでは硬い座席の普通車ということだろう。

念願の列車に乗ることで少々興奮していた僕は、思い切って最上級のVIP1を張り込んだ。といっても15万ドン、750円なんだけど。

ようやく手に入れた切符を手に駅構内からホームへ向かうと、そこは賑やかな音楽が響く、人のあふれるお祭り広場のようだった。

ホームへは誰でも出入り自由、観光客目当ての露店がいくつも並んでいる。ありふれた土産物や安っぽいアクセサリーなどに人が群がっている。

その傍らでは似顔絵書きがイスにかけ、緊張した面持ちの女の子を前に鉛筆をはしらせている。絵の出来が気になるのか、父親らしい男性がその絵を時々のぞき込んでいる。心配しなくても可愛く描けているよ。

ホームはこれから列車に乗る人、もう乗り終えて露店をひやかす人など、沢山の人であふれている。観光客は東洋系そして欧米系が多く、時折賑やかな韓国語が聞こえて来る。

たちまちお祭り騒ぎが好きな僕の心がウキウキと心が弾んでくる。遠くからバイオリンの音色が聞こえてきた。行ってみると若者が一人、かろやかに演奏中だ。音楽にうとい僕には彼の腕前は分からないが、バイオリンの響きは人の心を浮き立たせるパワーがあった。

彼の演奏が気に入ったのか、先ほどから一人の中年女が彼の周囲を巡りながら、楽し気にカメラのシャッターを切っている。いい年をしたオバサンだが、若者のバイオリンを心ゆくまで楽しんでいる。まわりの人の目など気にならないようだ。

列車が入っていたので早速乗り込んだ。やや古びた、ヨーロッパ風のクラシックな造りがなかなかいい。これからこれでちょっとした小旅行、そう思うだけで嬉しくて笑いがこみ上げる。

賑やかな笑い声が聞こえて来た。中年女のグループが大騒ぎしながら記念撮影をしている。周りのことなど全く眼中にない。最早この世に怖いものなど無いようだ。羨ましい人たちだ。

傍若無人に声をかけあい、手を振り、足を蹴り上げ、ようやく写真のポーズが決まった。カメラを構えるオバサンは忙しく動きまわり、大声で合図しながらシャッターを切る。一瞬の静寂の後、再びはじけるような笑い声があたりに響く。

それにしても気の合う仲間との旅行はこんなにも楽しいのだ。いささかはた迷惑だが、楽し気な光景は見る者の心まで明るくしてくれた。

列車は定刻に発車した。4両編成を引っ張るのはディーゼル機関車、残念ながら蒸気の重厚さは無い。駅を出るとすぐに高原の野菜畑が見えて来た。たくさんのビニールハウスが陽の光を受けまぶしく輝いている。

期待したVIP1の席は何の変哲もないビニールシートの4人掛けだった。普通席との違いはよく分からなかった。いったいどこがVIPなんだろう。

窓の外を野菜畑がゆっくりと通り過ぎていく。まぶしい陽射しと透き通った風、見ているだけでとても楽しい。これが僕の旅する楽しみのひとつ。

30分ほど走って列車は終点のチャイマット村へ到着、そこで暫く休憩した後再びダラットへ戻った。半日ほどの小旅行、楽しかったなあ。(続く)
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