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葉山日記
54 不思議な「装置」
2004年6月25日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 都内営業の間に時間が空くと、美術展をみたり、映画をみたり。1人会社の醍醐味ですね。ボテロ野外彫刻展(恵比寿ガーデンプレース)より=本文とはなんの関係もありません。
「『お家断絶』もそれはそれであり、とここに書いてありますが」―。

手元の資料の束から1枚のコピーを抜き出しながら、その若い男性は、遠慮ぶかげに僕にきいた。研究会インフォネットサイトに連載中の僕のエッセイ(第52回「皇族の自己責任」)に蛍光ペンでアンダーラインが引いてある。

6月23日午前。東京・渋谷のホテル喫茶ルーム。研究会のことを事前に話してはいないし、独自に調べたのだろう。これまで取材を受けたマスコミ関係者の「不勉強ぶり」は目を覆いたくなるものばかり。目のまえに座った2人のディレクターは「従来の視点とは異なる皇室番組をつくりたい」とけっこう意欲的で、勉強もされているようだ。

「あのーワタシ、××TVの××ともうしまあす」
元気のいい若い女性の声。
「『紀子妃の右手』というご本について、ぜひインタビューをお願いしたいと思いましてえ」
「あのお、本を読んでいただければ分かると思いますが、私、宮内庁ばかりを批判しているわけじゃないんですよ。マスコミの報道姿勢にも問題がある、という立場なんで…」
「そこはゼンゼーン問題ありません」
そうですか、では構いませんよ、と取材日時の確認。
「えーと、じゃお越しいただくときに、ご本を持ってきていただけますでしょうか。本屋さんで探したんですが見つからなくって」
「…」(血圧上昇)

というようなことが続いたので、やや安心。ただ、「お家断絶」というような穏やかならざる文章を書いて大丈夫ですか、と心配してくれている風でもある。

「皇太子に男の子が生まれなければ、自然消滅、これはだれでも知っていることですよね」
「はい」
「断絶を避けるには典範改正しかない、と言っているだけで、これも間違っていませんよね」
「はい」
「雅子さんは、そういった状況を承知で結婚したわけで、だからお世継ぎをはやく、というプレッシャーが陰に陽にかかるのは当然ですよね。だって皇太子がもし一般民間人だったら、たぶん雅子さんは結婚を決意したとは思えませんよね。決意のうえでのお嫁入りですよね」
「はい」
「でも嫁入り先は自分の予想と違った、と。そこで皇太子は『われわれにも世間並みの自由を』と会見で訴えたわけです。だったら『断絶』もありじゃないですか。それで世間なみのファミリーになれる。国民もマスコミも『開け開け』というわけだし、じゃ開いちゃって国民と気楽にお付き合いを、という選択もあり、ですよね」

「そう考えていくと、私のお家断絶発言はカゲキでもなんでもなくて、ごくあたりまえのことを言っているだけだと思うのですがいかがでしょう」
「なるほど」
「私は天皇制廃止論者でもなければ、宮内庁批判派でもない。マスコミ批判はしますが、僕も13年前まではマスコミにいたわけで。いってみればご同類。お立場よくわかるところもあります。ただマスコミは、自分だけが安全地帯にいて、あれが悪い、これが悪い、と他に責任を転嫁ばかりしている。それが日本を悪くする要因のひとつなんじゃないかと、そう思っているだけの常識人間です」
「たしかにおっしゃる通りですね。反省する部分があります」

実は、親戚いじょうのお付き合いをさせていただいている近所の奥さん(Sさん=70歳)から、この数日前に質問を受けている。
「エッセイとても勉強になるんですが…」

この「が…」が気になった。
「読んだ感想はどうですか。遠慮なくなんでも言ってください」
「あのう、『雅子さま』のことを、『雅子さん』と書いてますよね…」
あ、そうか。僕は皇族に関して過剰な敬語は使わないようにしている。Sさんはそこが気になるようだ。皇族に対してはもう少していねいな言葉を使うべきだと考えているのか、それとももし右翼に狙われでもしたら、と身内意識でそこまで心配してくれているのかも知れない。

Sさんが心配する「右翼」はまったく心配ない。純粋な右翼(というのが具体的にどういう考えのひとをさすかは脇において)にとって、日本の天皇は「神」としての存在でなくてはならない。「私、実は人間です」と宣言をしてしまった天皇は、彼らにとってはもう意味がない。ましてやファミリー路線をひたはしる天皇に彼らの関心はない。だから皇族に敬語を使おうが使うまいが、彼らにはどうでもいい問題だ(と僕は勝手に解釈して、特別敬語を使わないが、これまでなんら圧力を経験したことはない)。天皇という「装置」が大事であり、パーソナリティは関係ない、ということは天皇が政治に利用された過去の歴史をみればあきらかだろう。

「Sさんも雅子さんも、僕からするとなんら変わりのない、いってみれば同じ人間ですから。だからこうやってSさんはSさんだし、雅子さんは雅子さんでいいと、僕は思うんですが」

ケムにまかれたSさんは「はあ…」と言ったまま、あとの言葉がでない。僕はふと考えた。Sさん夫妻は、敬虔なクリスチャンである。神のもとのすべての人間の平等を信じるクリスチャンと、天皇制はなぜ矛盾しないのだろか、と。

日本人にとっての天皇制とは、まさに不思議な「装置」であると、考えることしきりの日々である。
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