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葉山日記
55
2004年7月20日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 葉山御用邸がみえる山の上を目指すYさんとTVクルー。猛暑下の登山にみな足ががたがた。
悪質で品の悪い噂話が徘徊している。いわく、

「皇太子妃・雅子さんが自殺未遂」
「雅子さんの病状は脅迫神経症である」
「雅子さんは離婚を決意した」
「雅子妃が美智子皇后の嫁いびりにあっている」

噂話ならまだしも、これらが週刊誌の中吊り広告の見出しになる状況は尋常とはいえない。

前にも書いたが現皇室のかたがたは、いまやなんの不自由もなくあらゆる情報にアクセスできる。もちろん上記の記事が掲載された週刊誌等も例外ではない。こういった話題は、最初はなんら根拠のない噂話ではあっても、そのうち尾ひれがつき、そしてあたかも真実のごとき色彩を帯びて、ひとり歩きし始める。うわさの「当事者」はたまったものではないだろう。それでなくても弱った神経に追い討ちがかかる。

ふつうだと「名誉毀損」で裁判をおこして当然のケースだが、皇族が裁判の原告になることはない(法律上それが可能なのかどうかは専門家の意見を聞いてみたいが)。となると、ご当人に代わり原告は宮内庁、ということになるのだろうが、このお役所、事にあたって、はっきり論理で白黒をつけることを好まない。なぜなら天皇制自体が「論理」では説明できない、あいまいな「装置」=制度そのものだからだ。あいまいな「主体」は論争を好まない。

このところ、というか、また、というか、皇太子発言をきっかけに宮内庁が槍玉にあがっている。なにかことが起こるとスケープゴート(またはヒーロー)を創りあげてストーリーを単純化し、白黒をはっきりさせたいという悪しき傾向が、人間にはある。マスコミはそういう人間の悲しい性(さが)の映し鏡ともいえる。

さいきん名誉毀損で敗訴がつづく週刊誌メディアにとって、反論もせずただ黙って堪え続けてくれる宮内庁は、まことにありがたい存在だ。現に湯浅利夫宮内庁長官は「いまは私が黙って堪えるしかない。辞職するのは簡単だが、それでは天皇ご一家をお守りする役人としての責務を放棄したことになる」と近しいジャーナリストに語っているという。

先日、週刊Bの取材を受けた。また宮内庁批判のお先棒を担がされるのかと思ったら、「紀子さんと結婚する以前の秋篠宮の女性関係についてなにか知っていることはありませんか」と聴く。なぜ今頃そんな取材を? なぜ僕に? あの結婚式の写真を撮ったカメラマンだから、さぞかし身近でいろいろなことを見聞きしたはずだ、と考えたのだという。

「すみませんが私、そういう週刊誌的、あ、週刊誌の方でしたね、失礼。そういう芸能ニュース的話題にはぜんぜん興味がないのです。たとえ知っていたとしても職業上知りえたプライバシーに関するお話はできませんよね。それをしたら、それこそルール違反ですよね」と僕。

「紀子妃髪直し」写真はその撮影にあたって「ルール違反があったのか、なかったのか」で、「宮内庁とマスコミが戦争をした」ということですっかり有名になってしまった。「写真撮影にルール違反はなかった。そもそもルールが存在しなかった」というのが僕の主張であり、だからこそ「ルール違反はしない」という言葉に力をこめたつもりだったのだが、記者氏はその強調の意味を理解してくれてはいないようだった。

YAHOOで「中山俊明+紀子妃」というキーワードを入力したら、10件がヒットしてきた。その2番目に「新潟日報・日報抄」(97年10月3日付)記事がある。ダイアナ妃が事故死し、パパラッチカメラマンが批判を浴びた出来事と「紀子妃髪直し写真事件」を重ね合わせた内容になっている。

http://www.niigata-nippo.co.jp/syo/97syo/syo1002.html

最後の部分だけ引用する。
[外電が世界に打電するほど注目された問題は内閣官房長官が「扱い方は報道機関が責任を持ってされればいい。写真はほほえましい」という見解を示したが、中山さんは所属する会社に辞表を出した。フランスのジャーナリストが聞いたら理解に苦しむだろう。胸の痛む結末だった。]

おいおい、いい加減にしてくださいよ、と思わずつぶやいてしまう記事である。これでは僕がいかにも、「写真撮影の責任をとって辞めた」と読者にうけとられてしまいかねない。確かに僕は、この写真を撮った1年後に、23年間勤務した通信社をやめた。だが退社の理由は、直接的にはこの事件とは関係がない。夢の実現にむかって大きな組織を離れ、勇躍アメリカに移住したつもりだったが、これではなにやら僕は悲劇の主人公ではないか。まちがった前提で「胸を痛」められてもねえ。「胸の痛む」のは、こちらの方だ。この記者氏、「善意」で書いているだけに余計始末が悪い。フランスのジャーナリストが理解に苦しむかどうかは知らないが、僕自身がこの記事はいったいなにを言いたいのか、理解に苦しむ。

それでなくても「あの写真を撮ったおかげで宮内庁が通信社に圧力をかけ、カメラマンを辞職に追い込んだ」「その結果、カメラマンは日本にいずらくなり、国外逃亡した」というまことしやかな噂が流れたことがあるくらいだ。荒唐無稽なお話だが自分が局外者であればけっこう面白い筋書きではある。やっかいなのは、噂の「媒介者」はほとんどの場合悪意がない、どころか自分のことを「善人」と思い込んでいるひとびとである。

こういった根も歯もない噂もいつの間にか拡散していくなかで「あっても不思議はないよね」「さもありなん」と半ば既定事実化していく。それが回りまわって当事者の耳にはいって、そのこころを残酷に痛めつける。自分の噂話を聴かされるときの気持ちは、その当事者になってみないかぎりわからないだろう。だから、僕はいま皇太子と雅子さん夫妻の置かれた立場に深く同情している。

「あの中にはなにもない、ということを経験で知った方の文章ですね」−過去数回の連載を読んでくださった方からのメールがきた。発信人は元宮内庁職員のYさん。数年前退職し、現在は情報関係企業の経営者となっている。

彼は、僕が宮内庁嘱託カメラマンとして天皇一家の写真を撮っていたときの総務課員。宮内庁総務課といえば一般企業の広報課にあたる。「あの中にはなにもない」とは、宮内庁を内部から20年以上見続けてきた彼の見方でもある。つまり「宮内庁は、世間一般のひとが考えているほどの『伏魔殿』でもなければ、『魑魅魍魎』が跋扈する陰湿な世界でもない」ということだ。

僕個人と宮内庁総務課は、「1枚の写真をめぐって激しい戦争を繰り広げた」とされる。その当時者同士の親交が「戦争」後も続いている。そのYさんと、「噂話」というやつのばかばかしさについて、TVで語りあってみることになった。2人の考えかたに共通するのは、宮内庁という「装置」をあまりにも過大視するマスコミ報道の異常さ、だ。

さて敵味方に分かれて戦ったはずの「戦友」2人の思いが、TVという「装置」を通じて正確に伝わるのかどうか、放送をご覧になった読者の感想をぜひうかがいたいものだ。
―――――――――――――――――――――――――
※テレビ朝日(全国朝日放送系列)水曜スペシャル「皇室特番」
7月21日19:00〜20:48 下記のうちの●15分程度

○苦悩の日々…雅子さまご学友が託した一通の手紙。
●独占!元宮内庁職員が語る皇室の現実。
○相談役に!?皇太子さま恩師が緊急来日。
○流産乗り越え…美智子さまご静養秘話初公開。
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