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僕の偏見紀行
167 越南二人旅(1)大雪そして長い一日
2014年3月2日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 雪に閉ざされた車庫と門扉。一部雪かきが終わったもののこの後がが大変だった。
▲ 成田空港にて、除雪作業を機内から眺める。
▲ やっとたどり着いたホーチミンのホテルロビーにて。到着の翌朝、旨い朝飯で元気回復。市内は旧暦のお正月気分が残り、飾りがあった。
数日前に降った大雪の影響が未だ残っていた。そのため乗り合いタクシーの来る時刻が通常より2時間以上繰り上がった。午前3時前に起床して朝食もそこそこに4時過ぎには車に乗り込んで成田へ向かう。

今年の雪にはひどい目にあった。この週末、前夜から降り続いた雪は朝には記録的な大雪となっていた。庭は一面の雪に覆われ植木の枝も折れていた。玄関わきでは垣根のカイヅカが倒れ、門扉と車庫の入り口は雪に埋もれていた。雪かきをしなければ家から出ることも出来ない。

当初多寡を括っていた我が家は、明るくなり近所で雪かきの音が聞こえるようになっても、年寄りの二人暮らしだからとずぼらを決め込んでいた。ところがお節介な、じゃなかった親切なご近所がわざわざチャイムをならし、我が家の惨状を教えてくれた。垣根のカイヅカは道路に倒れこみ、壊れた雨どいが落下している。

かくして雪との格闘が始まった。今までも雪かきのマネゴトはしたが、30センチ以上も積もった雪で家から出られないなど初めてだ。家内と二人、文字通り老骨にムチ打ってスコップを振るうこと5時間、ようやく門扉が開き車が動いた。その間も時々、轟音とともに巨大な落雪が襲って来る。まともにくらったら無事ではすまない。直撃を受けた車の屋根はへこんでしまった。

家内とのベトナム旅行はその2日後に迫っていた。とりあえずリフォーム業者に電話を入れ、帰国後にあらためて修理の打ち合わせをすることにした。庭の植木や垣根のサツキも雪の下、帰国するまで手のうちようがなかった。

タクシーは夜明け前の暗闇を順調に走った。闇の底には残雪が白くぼんやりと見えている。心配した渋滞も無く、いつも通り1時間で成田へ到着しホッとする。通常より2時間も早く出たのでチェックインまで3時間半以上あった。来る途中から降り始めた雪が未だ降り続くのが気にかかる。

予定時刻にチェックインが始まった。早くから並んだのですぐに終わるだろう、と思ったが様子がおかしい。異常に手間どっている。いつもなら簡単に終わるはずの単身者がカウンターに張り付いたまま延々とやり取りしている。いつの間にか僕らの後ろは長蛇の列だ。

やっと僕らの番になった。係りの女によると数日前の雪による欠航便の客がずれ込んできているらしい。緊張した面持ちの彼女が唐突に言い出した。

「申し訳ないが席を譲ってくれませんか、昨日から待っている客がいるのです。そうして貰えればラウンジやアップグレード等の特典を差し上げます。」

気の毒だったが僕は即座に断った。台北乗り継ぎで今日中にホーチミンに着きたかった。そうしないと明日からのベトナム旅行のスケジュールが狂ってしまう。国内線やホテルの予約がぐしゃぐしゃになる。初めて家内をベトナムへ連れて行くのだ、出きるだけ混乱は避けたかった。

なるほど、こんなことでチェックインが長引いていたのだ。それにしても席を譲れとは初めてだ。航空会社もよほど困っているのだろう。押し問答の末やっと搭乗券を獲得する。しかしこれではチェックイン作業が予定時間に終わらないだろう。出発が遅れなければいいが。外を見ると雪は依然として降り続いている、嫌な感じ。

やきもきしたが予定より30分ほど遅れて搭乗開始となった。台北での乗り継ぎ時間は2時間弱あるので30分くらいなら問題ない。そう思いつつ座席に座ったものの一向に飛び立つ気配が無い。準備が終わった乗務員達は手持ち無沙汰の様子で待機している。

機長のアナウンスが始まった。長時間駐機したため機体に雪が積もりこのままでは飛び立てない、除雪作業をするので暫く待ってほしい。

やがて窓の外に、人が乗った、クレーン状の装置が現れ、機体に向けてホースから激しく液体を噴射し始めた。みるみる雪が吹き飛ばされるものの、機体が大きいので時間がかかりそうだ。

乗り継ぎできるだろうか、不安がつのる。何故乗り継ぎ便を選んだのか。それは往復約6万円と運賃が手頃なのと、午前中に出て夕方早めにホーチミンに到着するのはこれしかなかった。予定通りなら、午前9時半に成田を出て、現地時間午後5時前にはホーチミンに到着する。乗り継ぎ時間の2時間もちょっとした休憩と気分転換にちょうどいい。

結局成田を2時間以上送れて出発した。これで乗り継ぎはアウトだろう。どうしたらいいか、乗務員に尋ねるが、現地スタッフが対応しますの一点張り、こうなったら成り行きまかせだ。

意外にも台北は寒かった。作業員やクルー達は分厚いコートを着ている。機内から出たが案内の地上スタッフは誰もいない。シンガポールで乗り継ぎに遅れたた時は待機していたタッフが案内してくれた。しかしここは台北、自分でやるしかない。不安そうな家内と乗り継ぎカウンター目指して歩き始める。

幸いにもカウンターでは乗り継ぎチケットを用意して待っていた。それによると、一旦香港へ飛び、そこでホーチミン行きに乗り継ぐという。しかし香港へは台北までと同じ航空会社だが、そこからは別の会社だ。これは要注意、インドではひどい目にあった。入っているはずの予約が無かった。

係りの男に僕はしつこく確認した。香港からの予約は確実なのか、預けた荷物はちゃんと積み替えてくれるのか。僕の剣幕に圧倒されたのか、男はうろたえつつ書類をチェックして大きくうなずいた。僕も二人分の搭乗券と荷物のタグがちゃんとホーチミンまでとなっているか、再度確かめる。

台北・香港でそれぞれ2時間前後待つことになるが、うまくいけばなんとか今日中にホーチミンに着けそうだ。午前4時ごろ家を出て、今は午後3時過ぎ(日本時間)、少々疲れた。空港のカフェで中華麺とジュース、旨かった。

気をもんだが、台北、香港、ホーチミンと順調なフライトを経てホーチミン空港に無事到着、入国手続きを終えたのは現地時間の午前零時をまわった頃だった。

空港内で両替を済ませ外へ出る。真夜中というのに凄い人だかりだ。出迎えのカードを掲げた人、家族を迎えにきた人たちの壁が出来ている。初めてのベトナムに家内は緊張した面持ちだ。

タクシー乗場を探していると、胸にIDカードを下げた男が近寄ってきて、タクシー?とにこやかに尋ねる。疲れと熱気にいささかモーローとしていた僕はうっかりうなずいた。

どうぞこちらへ、と男は荷物を受け取ると歩き始めた。ついて歩き始めたものの、こいつは怪しい、何か引っかかる。そこでホテルまでいくらか尋ねた。すると20ドル、とんでもない話だ。相場は7ドル前後、空港使用料を入れても10ドル前後だろう。危険を感じた僕は急いで荷物を取り戻しその場を離れた。家内もあわててついてくる。荷物を奪われ、車に連れ込まれたら危ないところだった。いささか間抜けな白タクで助かった。

落ち着いてあたりを見渡すと、向こうのほうにタクシー会社の立看板があった。なじみのビナサンタクシーだ。やれやれ助かった。家内と乗り込んだ僕はホッとした。家内には少々刺激が強かったかな。

深夜のホーチミンを走ること約20分、ホテルへ無事到着。シャンデリアが輝くロビーがまぶしい。フロントに、遅れて申し訳ない、といいながらバウチャーを出す。すかさず、とんでもない、お待ちしていました、とニッコリ。フロントの男が頼もしく見えた。

部屋に落ち着いて一息ついたのはもう午前1時を過ぎていた。日本時間で午前3時過ぎ、家を出て24時間近くが過ぎていた。(続く)
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72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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