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葉山日記
60 シ・ア・ワ・セ
2004年12月19日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
この数ヶ月の忙しさは尋常ではなかった。報道カメラマンをやっていたとき、航空機墜落事故などの取材で4昼夜連続不眠不休といった経験はあるが、これほど連続した長時間労働、というのは経験がない。

多忙理由のエクスキューズや、やたら「忙がしい」を連発するのは仕事ができないことをみずから暴露するようなもので、あまり口にだしてはいけないのだが、言わずにおれない忙しさ、というのも確かにある。

朝起きて、パソコンのスイッチを入れる。深夜または未明、パソコンを切ってドタンキュー。パソコンのスイッチが入っている時間がすべて労働時間というなら、過去3ヶ月1日16−18時間労働が続いた。

パソコンがすべてのショーバイだから、疲労はまず目に来る。ふと室内を見まわすとなにやら白煙が漂い、すべてがぼやけて見える。蛍光灯の周辺に虹が見える。やばい、白内障か。幸いにも仮眠をとれば元に戻るのだが、危ない、危ない。とはいえ納期は迫っているので、視力が回復すれば仕事再開だ。

自分だけではない。このプロジェクトを外注でお願いしているプログラマー、デザイナー、そして画像処理やキーワード担当者からも悲鳴が聞こえてくる。「倒れました。24時間仕事の遅れがでます」「頭が朦朧として階段から落ちました」「最新鋭スキャナーが故障で動かない。メーカーに問い合わせたら、こんなに酷使される自社製品をみたことがない、とのことです」。いやはや男たちの壮絶バトルである。

「このまま脳血管が切れて突然死するんではないか」。頭のてっぺんあたりに、チリチリ感(説明がしにくい)が漂い始めた頃にはそんな不安もよぎった。

指の裏で目を押さえ、しばし椅子の背にもたれかかっている僕に妻が声をかける。「あなた大丈夫? 死なないでよ。気分はどう?」。

僕は彼女を振り返り、笑い顔で答える。

「シ・ア・ワ・セ」

これは僕の本心だ。だから、つくり笑いではない。今のご時勢、仕事がなくて苦しんでいる人々がたくさんいる。仕事に見合う金銭的な見返りがいかに少なくても、いまは仕事があるという、そのことだけで幸せだし、感謝すべきなのだ。

しかも、現在僕らがつくっているウェブサイトはいずれ世界中の何百万という人が見に来ることになる。たとえ僕が死んだとしてもそれはこの世に残る。そんな幸せな仕事をいましている。

この春までの僕は3年寝太郎をしていた。大会社を無謀にも退職し、その後夢ばかり追い、それがかたちにならないまま今日まできてしまった。

僕はこのまま朽ち果て、この世になにも残さないまま死んでいくのだろうか。形にならない、ということはお金にならない、ということでもある。自分自身を責め、自分を理解しない世間を悪者にする日々が続いた。

いま現在の不安。未来が見えないことの恐怖。これは体験したことのない人にはけしてわからない感覚だろう。だからこそ、現在の多忙な日々がうれしい。

●仕事がない、収入がない。なおかつ未来が見えない。
●苦闘、クライアントの厳しい声、合わせて資金繰りの日々。しかし、この地獄を通りすぎれば、未来がある(かもしれない)。

前者から後者への変化は、僕にとっては「シ・ア・ワ・セ」以外のなにものでもないのである。

あ、僕の嫌いな多忙自慢、になってしまったかもしれない。さ、仕事にもどろう。
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