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刺客 |
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2005年8月22日 |
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 | 中山 俊明 [なかやま としあき]
1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。 |
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▲ 恒例わがファミリー全員で軽井沢に行きました。写真は千ガ滝の渓流に沿った森林道です。後ろ姿筆者。 |
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▲ 中央はわが孫です。 |
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自民党と民主党のマニフェストの相違点が少ない、というマスコミ論調があるが、僕はそうは思わない。たとえば、民主党はイラクの自衛隊を12月までには撤退させる、とはっきり言明している。この大事な部分がメディアでも大きくとりあげられていないし、国民の議論の対象にもなっていない。
自衛隊は戦争に参加しているわけではない。道路や水道施設の整備のため、イラク国民のために汗を流しているんですよ、という政府のプロパガンダにすっかり丸め込まれてしまったのだろうか。
もしくは、現実にイラク撤退となったら、あのアメリカからどんな仕打ちを受けるか。イラク「派兵」はよくないとは思うが、親切を施しているのであって人を殺しているわけじゃなし、というような思考が、国民をこの問題を真剣に考えることから逃げさせているのではないか、と思ったりもする。
民主党が勝利し、まずイラク撤退を決め、そしてアジア諸国にあらためて過去の戦争の謝罪をするとともに、今後の平和国家日本の道筋をはっきりと宣言する。そういう国になれたらどんなにすばらしいだろう。ところが選挙戦はすっかり劇場型と化して、やれ刺客だ、やれホリエモンだと、あらぬところで大騒ぎだ。
以下の文章は2003年9月11日に僕が当エッセイ欄25回で書いた「続・大胆予測」の一部である。
「派閥の力はこれから急速に減衰していく。それは小泉さんの功績大。しかしそれでも自民党ではしたたかな官僚組織には手をつけられない。となると、この作業を民主党政権にいったん託すのもまた良し。小泉さんはそんなことを考えているのではないか。負けを覚悟の衆院解散もありうる、という前号の主張の論拠はこういうことだ。彼が本当の「国士」だったら、このくらいの発想はありうる、と思うのだがどうだろう。」
この2年前の選挙で政権交替は実現せず、僕の予測は外れてしまったが、小泉さんの考え方は基本的には変わっていないと思う。「自民党をぶち壊す」というのは彼の本音であり、その思想が根底にあるからこそ、「刺客」を送り込んで旧勢力のつぶしにかかる、というだれも考えなかった荒っぽい戦略もでてくる。
さてそこにホリエモンの登場である。この人物、時代の風を読むことにかけてはすごいと思う。だが、ニッポン放送のときまでは支持できたが、今回の立候補に関しては??だ。
まず混乱はライブドアニュースセンターに出た。立候補表明と同時に同サイトは選挙関連のニュース提供を急遽ストップさせるという方針を決めた。いわば新聞社の社長が衆院選に立候補したのと同じだから、ライブドアニュースセンターの決定はきわめて良心的といえると思う。だが堀江氏、衆院選に打ってでようと決意したとき、自身がメディアをもっているという事実を少しは考えたのだろうか。僕はどうも堀江氏一流の突発的、動物的本能で出馬を決めたような気がしてならない。
ここで僕の動物的本能が何かささやく。「刺客」に気をつけるべきはホリエモンではないか。僕が心配する「刺客」とは、いま騒がれている、郵政民営化反対派に送り込まれる対抗馬ではなく、本当の刺客、つまりテロリストである。
世の中が方向を見失っているとき気をつけなければいけないのは、得体のしれない不満分子の登場だ。こういう輩がとつぜん凶器を握って、その時代を象徴する対象に襲い掛かることがある。
六本木ヒルズ森ビルのことを「3バカタワー」と言うIT関連者がいる。ライブドア、ソフトバンク、楽天という今をときめく企業がくしくも揃い踏んだビルを苦々しく見上げる人びとがいる。「3バカ」とは堀江貴文、孫正義、三木谷浩史3氏のことを言うらしい。
「金で人間のこころが買えると思っている人物に政治ができるか」と吐き捨てる政治家がいて、そういう政治家の言葉に一定の共感を覚える庶民が少なからずいる。くだんの政治家こそ、金で人のこころを買ってきた人たちだと、僕はおもうのだが、庶民にはこういう言葉がすんなりと入り込みやすい。
僻み、妬み、嫉み、やっかみ、そんな感情がいまの日本に渦巻いている。その「怨念」のターゲットにならないよう。ホリエモンさん、慎重に動かないと。
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