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かくてありけり
8 藤子不二雄の先見性
2003年3月1日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
「箱根山、駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋をつくる人」という諺がある。
世の中が役割分担で成り立っていることを平たく説明したことばである。また、商品やサービスを提供する側と、それを利用する消費者がいて初めて経済が成り立っていることを説明している。味のある言葉だと思う。

就職して間もないころ感じたのは、職場が実に多士済々な人で成り立っていることだった。外見だけでなく性格、技量、知識、発想法、価値観など、個人差はあった。それでも職場内でそれぞれに役割分担し、居場所を得ていたようだ。

それから約30年たち、ここ数年来は、自己完結度の高さ、つまりは一人で何でもこなせる多彩な能力を身につけることが求められるようになったと感じる。

報道写真の世界でも、昔ならカメラマンの仕事は、撮影しプリントを作るまでだったが、7年前に現場からの送信も仕事のうちになってしまった。
背景には、IT技術の進歩で機器とソフトが汎用化され、一般の人でもこなせるようになったことが挙げられる。

現在、職場の若手や中堅は電カメ・パソコン・携帯電話のセットで現場から次々に写真を送信してくる。
一方、中高年者ではITリテラシーの問題を抱える人もいる。ITデバイドの様相もある。居場所が狭くなり、さぞかしストレスが募ることだろう。

そんなご時世の中、「うりさん」の話に登場した、パソコンが使えなくても済んでいる米国現地法人会社の役員諸氏がこの上なく幸せな人に思え、随分余裕のある会社に見えてくる。

ストレス社会の到来を予見した論文や小説は色々あるだろうが、私には約40年余り前、少年雑誌に掲載された藤子不二雄の短編マンガが印象深く思い出される。宇宙旅行が普及した未来社会を題材に描いた作品である。

あるミッションのため編成された6−7人の宇宙船の乗組員は優秀なメンバーばかり、と思ったら、中に1人どじな人間がいた。ことあるごとにへまをして他のメンバーからどやされたり、馬鹿にされるのだった。それでもどうやら無事に長期の任務を終え地球に帰還し関係者はホッとする。そこで「実は、、」と彼の素性が明かされて”優秀なスタッフ”たちはビックリ、読者もビックリする。

実は、どじな乗組員は心理学を心得たエキスパートで、欲求不満の高まる宇宙旅行でスタッフのストレスのはけ口として阿呆役を演じたり、みんなのガス抜きのサンドバッグとなるため人材派遣会社から送り込まれたというのだ。彼のどじさ加減を見て、他のメンバーは優越感に浸り、気をよくして仕事をこなしたというわけだ。

当時、私がなじんでいた藤子不二雄のマンガは、子供が安心して読める勧善懲悪とハッピーエンドが基調であり、読み終えて怖さが残るようなことはない。しかし、この短編だけは違っていた。世の中は理想通りには行かない、決して平等社会ではない、そのような現実世界を認めたくない少年には、後味の悪い作品であった。しっくりとしないものが頭の隅にこびりつくように残った。不条理から来る不安だったかもしれない。

記憶の奥底に沈んでいたこのマンガが50代になって浮かび上がって来たのは、今という時代を見通した先見性の故だろう。藤子不二雄のマンガを読み直したいと思うこのごろだ。

PS. この作品をインターネット上で探したら、小学館文庫から「藤子・F・不二雄 異色短編集」全4巻が出ていた。その中に「イヤなイヤなイヤな奴」というのがあった。取り寄せて読んだ。構成はほぼ同じだが、主題の人物の性格付けが私の記憶していたのと違っている。しかも初出が1973年で、掲載誌はビッグコミック。私の記憶違いなのか?それとも藤子不二雄は後で改作してもう一度発表したのか?謎である。ご存知の方、教えてください。
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