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ボーダーを越えて
141 ときめく日の足音
2009年1月15日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
「Kozy」
という呼びかけで、そのメールは始まりました。

(Kozyというのは、Kazukoをアメリカ人に発音しやすく略した私の愛称です。)発信時刻は2008年11月4日午後9時11分50秒(西海岸時間)。西海岸の投票所が閉まって、オバマの大統領選勝利が正式に確認されてすぐ、オバマがシカゴのグランドパークで勝利演説をする直前に発信されたものです。

 「いま、私はグランドパークに集まっているみんなに話に向かうところです。でもその前に、あなたに書いておきたい。
 私たちは、いま、歴史を生み出したのです。
 どうやってそうしたのか、忘れて欲しくありません。
 選挙キャンペーン中、毎日あなたたちは歴史を作り上げてきたのです。毎日、選挙民の家を訪れたり、献金したり、家族や友だちや近所の人にいまこそが変化のときだとあなたが考える理由を話したりして。
 そうやってこのキャンペーンに時間や才能や情熱を注いでくれたあなた方みなさんに、私はお礼を言いたいのです。
 我が国を元の軌道に載せるには成すべきことがたくさんあります。これからどうするかについては、間もなくお知らせします。
でも、いまはっきりさせておきたいことが1つあります。
これが可能になったのは、あなたのおかげだ、ということです。
ありがとう。
                            バラク」

投票日の夜遅く夢心地で家に帰った私は、このメールを読んで思わずニッコリしてしまいました。すごいなぁ… 私はオバマの支持者メーリングリストに載っているという1300万人のうちの1人にしか過ぎない、ということがわかっていても、です。

あの夜、シカゴのグランドパークに集まった10万人近い支持者に、オバマは「この勝利はあなたたちのものだ」と言いましたけど、あの場に行けない支持者のすべてに、オバマはまず、同じメッセージを送っていたのですね。オバマはインターネットを最大限に駆使して支持層を広げて行ったのですが、こんなふうに1人1人の支持者との繋がりを保った候補者がこれまでいたでしょうか。

私がオバマの支持者メーリングリストに載ったのは、3回ほど献金したからです。献金なんて言うと大袈裟で恥ずかしいです。私の献金額は1回ごとに50ドル前後という僅かなもの(しかも最後の献金はTシャツ目当て)でしたから。1300万人のほとんどが私のようにつつましい金額を送った庶民なのです。でも、1人が10ドルを1度だけ献金したとしても、1億3千万ドルという金額になりますから、オバマが選挙資金をあふれるばかりに集められたのも不思議ではありませんね。

投票日の前にはほとんど毎日、オバマ選挙事務局やオバマ自身やミシェルの名前で何らかのメールが来ましたが、選挙が終わってからも、メールは送られてきます。一番多いのは就任式祭典にできるだけ大勢の人が参加できるように寄付を募るものですが、オバマ新政権に注文したいことを書いて送ってくださいというのもありました。20日の就任式には150万から200万人という前代未聞の参加者数とそれに伴う費用(1億5千万ドル)が予想されていますが、みんなが就任式祭典をワクワクして楽しみにしていて、これまでの大統領とは違うぞ、と感じます。

就任式の前日はキング牧師のお誕生日を祝う祭日で、オバマは地域に新しい息を吹き込む運動を生み出そうと、Renew America Togetherというサイト↓を立ち上げました。
http://www.usaservice.org/content/home/
これもオバマらしいですね。

国務長官に指名されたヒラリー・クリントンを始めとするオバマ政権閣僚審査が議会で始まりました。就任式のリハーサルも無事済んだそうです。就任式の当日は、ある映画館チェーンはハイデフィニションによる同時中継を無料で放映するとか。これも前代未聞。毎週火曜日の午前中は中国語のレッスンがあるのですが、来週は日を変えてもらって、就任式の中継を(自宅のテレビで、ですが)是非見ようと思っています。実はこれは私個人にとって前代未聞なことなのです。これまで大統領の就任式なんて、夕方のニュースで見ただけで、中継で見るなんて1度もなかったのですから。

過去50年もホワイトハウスを報道し続け、記者会見では厳しい質問をどしどしするのでブッシュから敬遠されて無視され続けてきたヘレン・トーマスというベテラン女性ジャーナリストがいます。(ブッシュを「アメリカ史上最悪の大統領」だと言ってブッシュを怒らせたことも知られています。)オバマは彼女が報道する10人目の大統領だそうで、彼女は88歳ですから、オバマの2倍近い年齢ですね。オバマに何を望むかと聞かれて、イスラエルのガザ攻撃に憤慨している彼女は、「しっかり勇気を持って進んでほしい」と答えました。私もそれを願っています。

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