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かくてありけり
10 合成写真
2003年4月5日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
 4月3日の各紙夕刊によると、2日付の米ロサンゼルスタイムズ紙は、3月31日付で掲載したイラク戦争の写真が合成写真であったと一面に謝罪社告を掲載し、カメラマンの解雇を発表しました。
 カメラマンは英国兵士とバスラ市住民の接触場面で、両者の動作や目線がかっちりと呼応しなかったので、PC上で2カットの写真から「いいとこ取り」をして1枚に合成したものです。
 画面の端に同じ人物が複数写っているのに同紙の編集部が気付いて、問いただしたところカメラマンは合成したことを認めたそうです。

 合成写真は今に始まったことではなく昔からありました。報道写真の歴史をたどると、黎明期では写真の善し悪し以前にまず写ることが大事で、写りの悪いのを修整したり描き起こしたりすることは日常的茶飯事でした。
 それが一歩進んで、写っていない物まで画面にはめ込んだり描いたりして完璧な構図にすることがしばしば行われたようです。暗室で行うこの作業は、職人芸と言って良いものだったそうです。

 しかし80年代から90年代にかけフィルム感度が向上し、望遠レンズも明るいものができ、確実に写真が写るようになると、そういうやり方はだんだんすたれてきました。カメラマンとデスクに「合成は読者を欺くことでやってはいけないことなんだ」という共通認識が出来、一方でプロとして自分の技量に対するプライドがあったからでしょう。

 90年代前半、写真のデジタル化が始まりました。画像加工ソフトの性能も高まり、PC上でいかようにも画像加工ができるようになりました。ネット上では有名タレントの首にすげ替えたポルノ写真が出回っています。
 一昨年の9・11事件では、貿易センタービルから撮ったと称する「突っ込んでくる2機目のハイジャック機」の写真までありました。誰でもできるレベルに合成技術が進歩したわけです。

 90年、米国のAP通信社は時代の流れを見越して、ニュース写真について社内的な指針を出しました。
 それは「写真の内容を変えてはいけない」という基本原則でした。「写真はいじればいじるほど読者の信頼を失う」と言う考えに立っています。デジタル写真術の時代なればこそ一層必要な指針でしょう。共同通信も96年デジタル画像処理のシステムを導入した際に社内規定を作りました。

 合成写真はアートの世界では全く問題になりません。前に述べた「裏焼き写真」と同様、新しいイメージの創造を可能にする表現手法の一つです。あのナショナルジオグラフィックですらギゼーの2つのピラミッドの位置関係を変えたことがあります。

 では報道分野で合成手法は一切許されないのでしょうか?
私の職場では次のような場合に限ってやっています。鍵は、そうすることがニューステーマを読者が理解する助けになることです。
 スポーツなどの連続写真、月食や日食の推移を示す連続写真
 複数画面をつなぐパノラマ写真。
 数字、記号、矢印、点線などの書き込み

 その際に、合成であることを写真説明に明記することが絶対に必要です。明記しないと、結果として読者に誤解を与えてしまいます。合成以外の画像加工や特殊技法でも同様です。

 奈良の若草山の山焼きで長時間露光をして全山赤く燃え上がる非日常の写真を作り出します。ある意味で特殊撮影の技法の極致といって良いかもしれません。しかし断り書きがないと、読者は実際にそのように山が燃えるものだと期待してきて、少しずつしか燃えないことを知りがっかりするそうです。

 それにしても今更ながら思います。技術の進歩には落とし穴がついて回ると。アナログ世代のデスクもデジタル写真術の可能性と危険性を把握しなくてはいけない。仕事をする上で相互の信頼関係が基本だが、デスクはカメラマンの写真の真贋を見抜く眼力が必要だなと。
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