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ボーダーを越えて
144 言葉雑感(8)regift
2009年2月13日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
▲ トーマスからクリスマスプレゼントのお下がりをもらったベン。

▲ 長新太著『おなら』の英訳本。
去年の暮れからずうっと考えていて、思い出そうとしている言葉があるのです。日本人の友だちにも聞いてみましたが、どうも記憶とピッタリしません。

どこからか頂いた贈り物を、別の包装紙に包んだり熨斗紙を付け替えたりしてそのまま誰かに贈り物として利用する、ということをぴったり言い当てる言葉があったと思うのですが、何でしたっけ? 子どもの頃、私の母親が他所から頂いたお歳暮の品を「これは○○じゃないかしら」などと言いながら、自分も○○していたのを思い出して、その○○がどういう言葉だったのかを一生懸命考えているのです。

まず思いついたのは「たらい回し」という言葉です。友人もまずその言葉を思いついたそうです。でも、「たらい回し」は邪魔者(物)を別な人(あるいは所)に押し付けるという感じがしませんか。別の友人は「使い回し」だと言いましたが、それは「使って回す」の意味でしょうから、使わずに回してしまうのとは違うと思います。たしか、もっとぴたっと言い当てる言葉があったと思うのですが… それとも私の思い違いでしょうか…

どうしてその○○を思い出そうとしているのか、と言うとですねぇ、エヘヘ、実は去年のクリスマスに○○をやったのです。2件も。1件は堂々と(でも承認を得てから)、もう1件はこっそりと。

私たちはクリスマスプレゼントは限られた人たちにしか贈りません。一番親しくしている親類のヘザーの2人の子どもへのプレゼントには、物質主義に陥らないような物で、私たちの気持が伝わるような物を、と特に心を配っています。去年はそれぞれに指人形のセットと本と決め、上の女の子のアナには私がとても気に入っていてずうっと持っていた斎藤隆介著『花さき山』を自分の翻訳文を添えてプレゼントすることにしました。下の男の子のベンには、長新太著『おなら』の英訳本を贈ろうと思いました。身体の仕組みを長新太独特のおもしろいイラスト付きできちんと説明してあって、3歳の男の子にはちょうどいいと考えたからです。大人が見てもおもしろいその本は、実は私が10年ほど前のクリスマスに連れ合いのトーマスにプレゼントしたもので、表紙の内側には「トーマスへ」と書いてあります。そんな物を受け取る側はどう思うでしょう。それで母親のヘザーに打診してみたところ、「とってもいいアイディアだわ」と言ってくれて、めでたし、めでたし、「トーマスからベンへ」と書いて贈った次第です。

問題は(でもないかな)、もう1件の方です。品はある人から頂いた黒い金属製のかなり大きなロウソク立て。すっきりしたアーチ型のデザインで、小さなロウソクを8つ載せられるようになっており、決して安物ではなさそうです。でも、ロウソクは晩餐にも単なる装飾品としても使わない私にはどう考えても向いていません。それで何ヶ月も袋に入れたままになっていました。クリスマスが近づいてきたときに、親しいある友人に何を贈ろうかと考えていて、彼女はロウソクが好きだし、彼女の家にはこのロウソク立てがよく合うだろうということに思いつきました。それでクリスマス用の紙に包み直し、きれいなリボンを付けて、彼女にクリスマスプレゼントとして贈ってしまったのです。頂き物だということは秘密にして。彼女は「こんなすばらしいものを!」と大喜びしてくれました。このことは私にそれをくれた人にも内緒のままです。

こういうことは、私や私の母や日本人だけではなくて、アメリカ人ももちろんやるのです。しかもかなり頻繁に。私も「お誕生日のプレゼントにもらった物だけど、あなたの方に向いていると思うからあなたにあげるわ」とお誕生日プレゼントをもらったことがありますし、知らないうちにそういうプレゼントをもらっているかもしれません。

このことを英語ではregift(動詞)といいます。この言葉が最初に登場したのは、テレビのコメディー番組「となりのサインフェルド」(Seinfeld)の1995年1月に放送されたエピソードだそうですが、私は見ませんでした。いや、この言葉が生まれるはるかに前からアメリカ人はregiftしていて、ある調査によると半数以上の人がregiftをしたことがあり、78%の人がregiftingは悪いことではないと考えているそうです。

しかも、不景気のご時勢のせいでしょうか、去年の暮れにはregiftがマスメディアでも大きく取り上げられ、ニューヨークタイムズ紙にも半ばおもしろおかしく書かれた記事が載ったりしたくらいです↓。
http://www.nytimes.com/2008/12/25/garden/25regifting.html
ためしに「regift」をグーグルしてみてください。上手なやり方、やってはいけないこと、失敗例、等々いろいろ出てきますよ。

このregift、日本語にはかなり前からちゃんと言葉があったと思うのですが、何でしたっけ?

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