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熱帯でゴルフを楽しむ法 |
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2005年8月16日 |
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 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房、翻訳)などがある。現在、文化交流を目的とした十長生の会を友人たちと運営、活動している。 |
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▲ さんごチップと赤いタイの竹ビーズを使ったラリエット。アイボリー色の部分は貝ビーズ。 |
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▲ 紺色の布はタイのマッドミー(絣の一種、シルク)。 |
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「こんな暑い国でゴルフをする人の気が知れない!」 友人たちに誘われ、私が言い放ったセリフだそうである。だが、この約半年後、私はひょんなことからゴルフにハマる。
夏の盛りになると、タイでのゴルフを思い出す。気温36℃、地上温度40℃の炎天下、スポーツドリンクをガブ飲みし、汗をダラダラ流しながら、ひたすら白い小さなボールを追う。
寒さに縮こまりながらする日本の冬のゴルフか、熱帯でのゴルフか、ニ者択一を迫られたら、私は迷わず後者を選ぶ。
スポーツというのは、もともと健康とストレス解消が目的であるはずなのに、炎天下でのゴルフなんてその対極にあるようなものだが、暑いには暑いが、身も心も伸びやかに思いっきりよくスウィングできる爽快さは捨てがたい。それに白いボールを夢中で追っているうち暑さなど忘れてしまうから不思議である。
とはいえ、日焼け対策は必須である。長袖シャツ、長いパンツ、帽子、サングラス、首を覆うスカーフ、手袋、外に出ているのは顔の皮膚だけで、その顔とて日焼け止めクリームとファンデーション。歌舞伎役者顔負けの厚塗りである。これが、タイでゴルフするときの私たち女性のイデタチであった。紫外線の強い熱帯でゴルフを楽しむにはこれぐらいの武装は覚悟しなければならない。
女性だけではない。男性だって…。コースでお面のように真っ白い顔の男性に会い面食らうことがある。ましてそれが親しい友人のダンナさんだったりすると、見てはいけないものを見たような気がしてドギマギする。噴き出しそうになるのをこらえあいさつしたものかどうか躊躇しているうちに、あちらは知らぬ顔で行き過ぎる。なんのことはない、あちらはあちらで、こちらが誰だかわからないのだ。なにしろ完全すぎる武装なのだから…。
熱中症対策ももちろん怠らない。スポーツドリンクをペットボトルで3,4本飲み干すぐらいの覚悟が必要だ。1ショットごとにスポーツドリンクをグビグビ飲む。(タイは湿度が高いので)必然的に汗がとめどなく流れる →化粧が落ちる→日焼け止めクリームを塗る→グビグビ→流れる→クリーム…この繰り返しである。
日本以外では、途中の昼食・休憩を入れず18ホールスルー(通し)でまわるのが普通である。カートは1人1台ずつ使えるから3時間もあれば、あっという間に終わる。早朝に家を出て暗くなって帰宅、という日本でのゴルフとは大違いだ。
キャディーさんもプレーヤー1人に1人ずつ。だから、キャディーさんとのコミュニケーションは大事な要素となる。わずかなボキャブラリーのタイ語を駆使し、気の利いた冗談でやり取りできるということなし。冗談好きのタイ人のこと、キャディーさんの働きも違ってくる。
ナワタニ(Navathanee)ゴルフクラブというゴルフ場がある。1975年にワールドカップが開催されたゴルフ場である。バンコク市の中心から車でわずか30分のところにあり、地理的便利さ、コースの美しさ、キャディーのマナーのよさなどから人気のゴルフ場である。
ここのキャディーさんはなぜかイスラム系の人が多い。おおらかで気がよく、タイ人特有のホスピタリティーに富んでいる。だが、中には長年のベテランでコワモテのキャディーさんもいて、こちらが欲しいクラブを言っても、「いいや、こっちでやってみて!」と頑固、頑固。互いに目と目で火花が散る場合もある。
こんなことならタイ語できないフリしておくんだった!語学がいつも役に立つとは限らない。世の中、なにごとも加減が難しい。
「お客様にお願い。オーナーがプレーしているときは、どうぞ道をお譲りください」 このコース、スタートホールの入り口にこんな立て札がある。
そう、ここはオーナー優先のゴルフ場なのだ。オーナーが毎日ゴルフを楽しむためにつくり、一般の人にも(ついでに)公開しているというスタンスなのだろう。この文言に出くわした日本人の反応は概ね2通りである。けしからぬオーナーだと気を悪くするか、常識がないとうすら笑いをするか。
このオーナーが特殊なのか、タイの常識なのか…いまだに私にはナゾのままである。だが、この看板が何年もそのままなところをみると、ここではそれほど非常識なことではないらしい。
とはいっても、タイでのゴルフは気楽でいい。たいしたレッスンも受けずにコースに出た初心者の私でも誰に気兼ねするでなく、ゴルフをエンジョイできたのは南国タイのこういった、どこかのんびりとしたゴルフ場事情(料金も安かった)によるところが大きい。
おもいっきり大汗をかいた後、シャワーを浴び、ゴルフ場内のレストランでタイ料理を囲み冷たいビールを飲む。つい今しがたわがボールを飲み込んだいまいましい池の水面を吹き抜けてくる風を頬に感じながら、仲間たちとその日の18ホールを振り返る。タイに来てよかった…そう思うひとときである。
ゴルフ、そしてビールと焼肉とマッサージ…これぞわが夫のいう“至福の4神器”。ゴルフの後、またまたビール片手に焼肉をおなかいっぱい食べ、焼肉店近くのマッサージ屋さんになだれ込む。昼間の疲れと満腹感で夢うつつの2時間…こうして霜降り肉が出来上がる。
(追記)タイのゴルフプレー料金はこの1,2年で急上昇している。昨年12月に訪れたときにはどのゴルフ場も軒並み上がっていて驚いた。私がタイに住んでいたころは、日本の3分の1以下であった。
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