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僕の偏見紀行
177 メコンクルーズ(1)いささかくどい前置き
2014年12月19日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ホテルの窓から見えるチェンマイの街並み、緑と寺院が多い街。
▲ ホテル近くの旧市街入り口、夜のターペー門。
▲ チェンマイの街に夕日が沈む、ホテルの窓から。
虚しく年月のみが過ぎ、気付いてみれば今年で数えの70、僕は古希を迎えた。節目ということで中学と高校の同窓会がひらかれた。久しぶりに再会した旧友達は、それぞれ年相応の悩みを抱え、一様に年老いていた。

旧友との久しぶりの会話は、なんとなくしっくりこず楽しめなかった。一方的に自分の趣味や健康法を自慢する話に辟易させられることが多かった。これは彼らが老いた証し、相手のことを考えて会話する能力が衰えてきたのだろう。そしてそれを許容できない僕の偏狭さも同様だ。

この先僕らの肉体・精神はともに老いる一方、どうあがいても避け様のないそれを忘れたくて、みんな健康自慢、趣味自慢に走るのかもしれない。心細さのうらがえしの自慢なんだ。僕も似たようなものだが。

これではいけない、衰えたとはいえ、未だ残された体力・気力のあるうちに、したいこと、やるべきことをやろう。いったいお前は一番何をしたいのか、僕はそう自問した。

そうだ、やっぱり旅しかない。大げさで回りくどい前口上のわりには、結局ごくありふれた変わり映えのしない、ぼくにとっては至極当たり前の結論に至った。たかだか1〜2週間の旅行に、こんないい訳めいた事をくどくど書き連ねるとは、これは僕の思考回路も随分と老化が進んだぞ。

どう考えても僕にとって、心ふるえる感動は、見知らぬ国の路上、熱風吹き込むローカルバス、そんなところで見つけるしかない。

かくして僕はタイ・ラオスを巡り、メコン川を下る旅に出かけることにした。僕の大好きな東南アジア、SOMETHING HAPPENSの地、沢木耕太郎の言う、こちらから仕掛けなくても何かが起きる地、へ。

前回に続き今度もカミサンとの二人旅、航空券とホテルは事前に予約することにした。それぞれ格安予約サイトで予約したが条件は悪くない。往きは成田発タイのバンコク乗り継ぎチェンマイ、帰りはルアンパバン発ハノイ乗り継ぎ成田、このチケットが1人6万円弱だった。

ホテルはチェンマイ、ルアンパバンその他で合計10泊2人で8万2500円(朝食付きツイン)だった。こまかくいうと、さらにこの他にクルーズ専用ロッジでの1泊がある。

ネットで出来るだけ安いチケットやホテルを探すのは僕の楽しみのひとつ。安くても解約条件が厳しいくらいで品質には何の問題も無い。

飛行機だって事前に座席指定が出来るし、みんなと同じ塔乗口から大威張りで乗り込むことも出来る。機内食も隣の人となんら変わりない。ただ運賃は共同運航の日系エアラインから購入した人とは気の毒なくらい差がある。

ホテルもサイト限定プランなどあってかなりお得。上記ホテル代は移動中の国境沿いの町を除けば、いずれも老舗の四つ星クラス、朝食込み、ツインルーム、1人1泊平均4000円ちょっと。もっとも国境越えのホテルではひどい目にあったけど。ただそれも現地の事情からするとましな方とは思う。

一方で携行品の準備には手をやいた。年を重ねるごとに旅行に持っていくものが増えて困る、と山口瞳がエッセイでいったように、出かける度に増えていく。

出発は11月下旬の早朝、かなり寒い。一方旅先の日中は日本の真夏並み、しかし朝夕は冷え込む。夏冬両様の備えが必要だった。さらに近年、僕は一段と暑さ寒さに弱くなり、詰め込む衣類は増えるばかり。いやはや難儀なことだ。

さらに、医薬品も増えてきた。全てが常用ではないが万一も考え、胃薬・便秘薬・風邪薬・大腸用サプリ・目薬・筋肉痛の貼り薬・のどアメ・手足の荒れ軟膏・うがい薬等々用意した。タイの税関でクスリの行商と間違えられたらどうしよう。

準備が整った11月下旬、朝9時半に成田を発って第一の目的地チェンマイに到着したのは予定通り夜の11時頃だった。最も安い便を選択した結果、乗り継ぎの待ち時間が長くなった。3年ぶりのチェンマイ空港、真夜中のロビーのぬるい空気に僕は、アジアに来たぞ、と実感した。

宿はチェンマイ旧市街入り口のひとつ、ターペー門近くの大型ホテル、深夜にもかかわらずフロントの中年男はテキパキと受付を済ませ、希望通りの高層階のツインをまわしてくれた。

部屋の窓の下には闇に沈むチェンマイの街並が広がり、ひっそりと灯る外灯やライトアップが美しい。遠くの山の中腹に灯りが見えるのは有名な寺院、ドイ・ステープ山頂に建つワット・プラ・タートだろうか。

さて明日から4日間、ここチェンマイではどう過そうか。カミサンとは観光客の多い名所旧跡には行かない、その日の気分で、ブラブラしようと決めていた。

今回の旅で僕はやりたいことがいくつかあった。まずカミサンとのメコンクルーズ、次に僕が日本から写真を用意してきた2人の人物との再会、そして5日間ずつ滞在するチェンマイとルアンパバンでは気ままにノンビリ過すこと。  (続く)
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