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かくてありけり
13 気送管
2003年5月25日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
 先日、年内に行われる社屋移転の対策会議に出席し、新社屋では業務のやり方がどう変わるか点検していて気付いた。あれっ「気送管」がないじゃないか!

 気送管とはエアシューターとも呼ばれる、パイプの中を空気圧を利用して円筒を往復させる文書輸送の仕掛けです。事務所やホテルや病院で使われています。我が写真部でも写真プリントや説明をこれに入れ、整理部や技術部に送ったものです。写真が画像ファイルとして社内ネットワークでやりとりされるようになり、活躍の場は減りましたが、新社屋ではフロアーが分離されるので出番があると考えていました。

入社して初めてこれを見たとき「文明の利器だなあー」と感心したものです。それは、一旦故障した場合、わずか10グラムもないプリント1枚を運ぶために大の男が階段を上ったり下りたりする羽目になったとき一層実感されました。
それから30余年たち、新社屋では時代遅れなものとして廃止される。新しい時代のOA(オフィスオートメーション)はネットワーク環境でのペーパーレス実現をうたっています。

 でも、待てよと思います。一昨年、近所にできた某大学の病院は最新設備を盛り込んだモデル病院というふれこみでした。たまたま身内の入院でその一端を見ることができました。電子カルテ、医療機器、院内PHS、自走給食カート、寝たままで見られるアーム式液晶テレビetc。
 一方、要所要所に太いパイプが走り、ヒュー、ポンッという音を立てて気送管が届く様も目にしました。

 そうか、物(ブツ)だ!ブツを運ぶんだ。検体やらレントゲン写真フィルムやら、現物をやりとりするには気送管でなくてはならない。実体のないファイルでは用が足りない世界があるのだ。

 ここで古い記憶がよみがえって来ました。職場の酒盛り風景です。泊まり勤務で仕事も一段落した深夜、仮眠前に同僚4人で一杯やる。ある時、上階の職場の人に、あぶって反り返った熱々のスルメを気送管で差し入れしたことがある。相手は筒のふたを開けたとたん、立ち上がる香ばしさを楽しんだことでしょう。
 気送管メーカーのホームページを見るとバーチャル世界での現物輸送の大切さと省力化に力点を置いて広告を展開しています。

 そういえば、パリではビル内だけでなく市内全域を結んで使われていた。それが近く廃止されると言う記事があったはずと切り抜きを探したが、残念ながらどこかに埋没して見つからず。あらためてインターネットで調べました。中田薫という人のサイトで、仏文学者の鹿島茂氏の文を引用して紹介しているのが面白い。http://www.bekkoame.ne.jp/~hujino/no29/29nakata.html

 それによると、パリでは1860年代に実験的に始まり、30年後には全域をカバーする。地上をパカパカと馬車が行き交うその下をパイプが張り巡らされ、郵便物が走っていた。プヌマティク(pneumatic)と呼ばれ、プルーストの「失われし時を求めて」やフランソワ・トリュフォーの映画「二十歳の恋」などにも登場したこの仕掛けは1984年に廃止になった。約20年前まで市内の要所を結んで使われていたことは驚きです。

 切手コレクターのジャンルの1つに気送郵便用葉書や切手があります。それを見るとチェコ、イタリア、ドイツの主要都市でも同様の設備が敷設されていたことが分かります。都市と都市を結ぶほどの広がりはないが、都市内で中央郵便局と主要ビルや配達局を結び郵便を送っていました。

 日本でも、1909年(明治42年)12月に逓信省が東京中央電信局と兜町株式取引所・神田郵便局間に気送管通信を始めたと言う記録が残っている。
 約70年前の1934年(昭和9年)に竣工した明治生命館は当時最先端の設備を取り入れたビルで、今ならインテリジェントビルと呼ばれるでしょう。ダイナモ付き電気時計、災害対策の自家発電装置、消防署直結の火災報知機、街灯の自動点灯装置などと並んでエアシューター(書類気送装置)も設置されていて、セールスポイントになっていました。

 洋の東西を問わず、当時の人にとって、気送管システムは大変ハイテクなものに映ったことでしょう。現代人にとってのインターネットやe-mailに匹敵するのではないかと考えられます。
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