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かくてありけり
14 走査型電子顕微鏡写真
2003年6月8日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
 先週、佐賀県で最古級の国産カメラが発見されたという記事が出ていました。江戸末期1850年代に旧佐賀藩で作られ、鍋島家に伝わったものだそうです。木製の箱を蛇腹でつないで、レンズの筒も木で出来ていて写真術創成期の様子がうかがえます。それから約150年後の現代、カメラは進化しデジタルカメラの時代を迎えましたが、形や材質は変わっても暗箱にレンズが付いて受光部に感光剤が置かれる基本的構造は一緒と考えて良い。しかし写真が進化する中で従来の枠に収まらない画像形成の方法も出てきました。今回紹介する電子顕微鏡写真はその一つです。

 6年前、方言の本が縁で知己を得た新潟市の考古堂書店から、写真集を発売したので新聞向けに紹介をと依頼が来た。面白くなかったらお断りしますよと予防線を張ったけど、送られてきた西永奨氏の写真集「Micro Fantastique(ミクロファンタスティック)」を見て、写真の内容と画質のすばらしさに唸った。それが走査型電子顕微鏡(Scanning Electlic Microscope:SEM)写真の世界を追求する西永氏との出会いでした。

 SEMは本来、生物学、医学、工学などの研究と産業分野の利用に開発されたものです。真空中で、細く絞った電子線を試料表面に走査し、発生した電子を画像として映す。光学顕微鏡の500倍の被写界深度があり、リアルな立体感を備えている。原理的にモノクロしかないが、なめらかな階調と質感描写で微細なものを鮮明に表現できます。

日常見慣れたものをSEMに通すと今まで見えなかった部分が精緻に描き出され、変貌します。倍率を上げるとまた新しい世界が。写真集のページを繰る度に次々と見たことのない小宇宙が飛び出してくるのは新鮮な驚きでした。思わずつぶやいた言葉は「神は細部に宿り給う」でした。当の西永氏はミクロの世界の不思議さに出会う感動をアルチュール・ランボーの詩集「地獄の季節」の一節を借りて写真集の巻頭に掲げています。
   「また見つかったよ!」
    「何が?」
     「永遠が、、、」

 西永氏は最先端のツールでアートの世界に挑むこの分野の第一人者です。日本より海外で有名かもしれない。本業はカメラマンでなくデザイナーと言うところがいかにも新しい写真術の具現者らしい。

 富山市在住の氏が上京の折り、お話をうかがいました。SEMは一家に一台といえない高価な装置であり、大学など研究機関の便宜供与を受けていること。しかもどの機種でも良いというわけではないこと、真空中に置いて操作するので標本組織の固定が難しいことなど、色々とご苦労があるようです。
 
 氏の作品集は他にも「たくさんのふしぎ184号、電子の虫めがね」(福音館書店)や「ミクロの世界−その驚異と幻想」(京都書院)があります。作品の一部は氏のホームページでも載せています。
http://www.d8.dion.ne.jp./~susumu9/fantasticmicroworlds_001.htm

 
PS.
SEMの描写力とクローズアップ性能は、新しい表現手段として注目されています。日本電子顕微鏡学会でも毎年写真コンクールを開いています。医学生物学電子顕微鏡技術学会では、標本写真のレベルを超えた、造形的で見応えのある画像をサイトで紹介しています。
http://www02.so-net.ne.jp/~emtech/

もう一つ中学の先生が開いている「走査型電子顕微鏡画像集」もなかなかのものです。
http://www.asahi-net.or.jp/%7Eqf7n-adc/index.html
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