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葉山日記
71 新年読書三昧
2006年1月1日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 「さいきん目立つネオンは消費者金融ばかりなり」という友人のことば。JR新橋駅前を見上げてみると、まさにその通り。金、金、金の世の中を象徴する光景でした。
ひたすら読書三昧の新年である。本に向かっているときの、なんとも知れぬ、心の安らぎはなんだろう。至福の時間だ。過去数ヶ月の書評のなかから以下3冊を厳選して年末に購入した。

1)「信長の棺」(加藤廣著、日本経済新聞社刊)

本能寺で明智光秀に討たれた織田信長の遺骨が一片たりとも発見されていないのは歴史上の事実。その歴史の空白に迫ったフィクション小説。小泉首相が「感動した」とお勧めの本らしい。それゆえ反発するものがあったのだが、すべての書評欄で高位置にあるいじょう、騙されたと思って買ってみた。だが「失礼をばいたしました」と、思わず居ずまいを正されてしまうような良書である。1行、1行に、著者が歴史書や古文書を調べつくし、歴史の裏側に潜む真実を考えに考えぬいた執念のようなものが漂っている。これだけ史実の裏づけがあると、これはフィクション小説ではなく、ノンフィクション小説といえるかも知れない。

2)「凍」(沢木耕太郎著、新潮社刊)

まだ読んでいないが、凍傷で指を失いながら、それでもまだ厳冬の山をめざす夫婦の物語を、沢木が書いた、となれば、期待を裏切られることはまずないだろう。

この2冊を新年2日までに読む予定だ。

インターネットを主軸にしたビジネスをやっているのに、一方で、そのデジタル世界に疲れきっている自分がいる。インターネット時代が来る、と回りを説得し、走り続けた10年だったし、時代はまさにその通りになった。だが自分はそう力説しつつも、いつも心のどこかに「いや、違うかもしれない。なにかが違う」とつぶやく別の自分がいた。

それはいったいどこからやって来る声なのか。背景は単純で、紙をめくるときの心の安らぎを、コンピュータ画面は感じさせてくれない、というきわめて感覚的なものだ。とはいえ、仕事である。デジタルの可能性をせっかく追い求めてきた以上、そして本の世界に浸っているだけでは飯が食えない以上、過去の仕事の延長線を追い求めないわけにはいかない。

3)「ザ・サーチ グーグルが世界を変えた」(ジョン・バッテル著、日経BP社刊)

この世界にあって恥ずかしい話だが、ヤフーとグーグルがどう違うのか、いまだによくわからない。グーグルが、「いまインターネットの世界にあらたな地平を切り開こうとしている」と喧伝されているが、それはいったいどういう理由なのか。

正直いうと、ずっと小説の世界に閉じこもったまま新年を過ごしたいのではあるが、現実世界に戻らねばならない。インターネットや、あらゆるコンテンツのデジタル化が目指すのは、つまるところ、「細分化、単純化、効率化、高速化、大量化」である。最終目標がそこにあるのだとしたら、それに付き合わされる人間が疲れないわけがない。このしんどい世界から逃げ出すか、それともその中で果敢に戦い続けるか。この本がもしかしたら、今後の事業展開にヒントを与えてくれるかも知れない、というわずかな希望をもって、読んでみよう。

余力があれば、「自動車絶望工場 ある季節工の日記」(鎌田慧著、講談社文庫)を読んでみたい。

古い本だ。著書がトヨタ自動車の季節工として半年、ベルトコンベアの歯車として働いたときの記録=ルポルタージュである。発行は昭和48年(ベトナム戦争停戦の年)著者35歳。資本主義の矛盾を体当たりで書いた、とされる古典的名著ではあるが、僕自身はこれまで読んだことがなかった。当時の自動車製造現場で酷使される労働者と、IT時代に酷使される労働者=プログラマーやデザイナー、に違いがあるのか、ないのか、そんなこと考えてみたい、と地元図書館で探したがずっと見つからなかった。書庫リストにもない。それが偶然、ブックオフで手にはいった。文庫本でなんと105円。


以上4冊を4日までに読み上げれば、僕の新年休暇の目標はまず達成。そうだ、これらの本の「息抜き」時間に、ぜひ再読したい本があった。友人(女性)から薦められた、吉永みち子のエッセイ集「老婆は一日してならず」(東京書籍)。著書は僕とほぼ同年代である。50歳代になった心境を正直に、ずばりと書いている。以下、さわりをそのまま引用。

「所詮、四十代で考えていた様々な明るい老後は、折り返し地点に近づいてはいるものの、まだ折り返してはいないこれまでの延長線上の目線で捉えた老後だったのである。折り返してしまうと、目線もこれまで見ていた向きではなくなる。ゴールに向かう目線であり、ゴールには死が待っているのだとはっきり認識できてしまうのだ。死の前には、荒涼とした老いの風景も見える。ついでに、世の中における自分たちの位置取りなども身につまされてわかってしまう。」

僕がデジタルに疲れる、というのはデジタル世界があらゆる人間に与える本質的、全体的なテーマなのか。それとも単に僕自身の年齢と、それにともなう「目線」や「位置取り」の変化(考えたくないが=老化)に起因する問題なのか、そのヒントめいたものを示しているように思う。

どちらにしても、還暦(うわあ、これも聴きたくないっ!)を4ヶ月後に控えた僕の、新年初頭に与えられたテーマは、かなり重く、深刻で大きい。
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