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僕の偏見紀行
182 メコンクルーズ(6)いざクルーズへ
2015年2月8日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ボートに乗船。出発前の船内光景。船首側から船尾方向を見る。
▲ クルーズ途中の山岳民族村訪問。
▲ 初日の航行無事終了、ロッジに着いてロビーで一息。
ひと騒動あったものの、2時間も早くレストランへ行ったお陰で一番乗りで朝食を済ますことが出来た。7時を過ぎた頃欧米人グループが現れて食事を始めた。目玉焼きにトースト、サラダ、コーヒー、と洋風の朝飯を食っている。

あの無愛想な若者がヘイコラしながら走り回っている。僕らに対するのと随分違う。あきらかに僕らを欧米人と差別している。ただこれはラオスに限らず、ベトナムその他のアジアでも同様である。彼らはおとなしい日本人を特に軽くみる傾向があるので要注意だ。なにも威張るつもりはないが、公平なサービスを受ける権利がある。

今日は今回の旅のハイライト、メコンクルーズに出かける日、8時から8時30分の間に迎えの車が来ることになっている。それまで少し時間があったので町を散歩することにした。できれば朝の托鉢風景を見たかった。

通りをぶらついていたら、向こうからどこか見覚えのある若者がやってきた。この町に知り合いはいないはずだが、近づいて分かった。同時に相手も気付いたようだが、3年まえのクルーズで世話になったガイドだ。

いろいろと親切にしてもらったので、今回もし会えれば渡そうと、その時撮った彼の写真を用意していた。彼は今回の旅で再会したい2人のうちの1人だ。会いたいと思ってはいたが、クルーズ会社にガイドは何人もいるだろうしあまり期待はしなかった。それがいきなりクルーズ前にこんなところで会えるとは、やっぱり何かの縁があった。

彼に用意した写真を渡すととても喜んでくれた。思えばこの3年半、僕は年老いたが若い彼はあまり変わっていない。僕らが乗船することは既に名簿で知っていたらしい。

彼は、それでは後ほどボートでお会いしましょう、9時から9時30分の間にスタッフがホテルまで迎えに行きます、といった。それを聞いて僕は仰天した。出発前に聞いたことと1時間も違う。

あわてて彼にそういうと、どうしてそんなことになったか分からないが、出航は10時だから9時の迎えで充分らしい。やはり僕の不安は的中した。海外とのやりとり、しかもいくつもの仲介を経た、は本当にあてにならない。

それにしてもよく彼と偶然出会えたものだ。もしこの出会いがなければイライラしながら迎えを待つ羽目になるところだった。きっと僕のことだから、あちこちに電話を掛けまくって大騒ぎしたに違いない。出会えて本当に幸運だった。

9時過ぎに迎えの車に乗って船着場へ行った。沢山のボートが並んでいる。スタッフに案内されボートに乗り込む。ボートは30人乗りで乗船予定は28人らしい。ガイドは彼のほかに後輩らしい若い男性がもう1人いた。彼は若いガイドの指南役としての勤務らしい。僕はそんな彼がちょっと誇らしかった

ボートは前回と異なり、ボックスシートが並び一段と乗り心地がよくなったようだ。奥にはサービスカウンターやキッチンなどが続いている。クルーズ中はランチ、飲み物、オヤツなどがサービスされる。

僕らに続いて客が乗り込んできた。東洋系は僕らだけのようで残りは欧米系だ。あまり若い人は見られず、殆どが中高年のカップルのようだ。その中にちょっと変わった男性2人組がいた。

乗りこんでくるなり、年かさのほうが僕らに声をかけてきた。我々はU.K.から来た、君たちは?日本からと応えると大仰にうなづき、ところで昨晩の宿はどうだった、と尋ねる。同じホテルではなかったはずだが、といぶかりながら僕は、いろいろトラブルがあって大変だった、と応えた。

すると彼は、いかにも嬉しそうに、そうだろう、我々のホテルにすればよかったのに、新築で船着場場までたった1分だった、と自慢した。真新しいパナマ帽をかぶった銀髪の彼は、いささか大人気ない自慢話が好きなオヤジだった。

この2人組み、他にもいたイギリス人グループと交わることも無く、2人だけで行動していた。年の離れた友人同士、あるいは親子だったのだろうか。

この2人、日本人が珍しかったのか、僕らにはよく声をかけてきた。彼らは食事時になると変なクセがあった。セットされた食器に加えて小さなボウルを要求するのだ。シチューやカレーなどの汁物をご飯と一緒に皿に盛るのが嫌らしい。

下品なぶっかけ飯など食えるか、と言うことのようだ。他のイギリス人達は男女を問わず旨そうにぶっかけ飯を食っていたのだが。勿論僕らはぶっかけ飯大好き、様々な香辛料の混じったスープをご飯にかけて食うと実に旨かった。

賑やかな男女数名のイタリアグループもいた。陽気で騒がしく人懐っこい人達、いかにもイタリア人だった。中年オジサンの一人は乗客の誰から構わず声をかけ、特に女性には熱心だった。日本人が珍しいのか、うちのカミサンにも親しげに挨拶をした。

イタリアオバサンの一人は、クルーズの途中で山岳民族村訪問の際に子供達を集め、持参したお菓子や文具を配っていた。僕はそんな光景を見ながらなんとなくいたたまれない思いがした。それではどうしたらいいのだ、といわれれば言葉が無いが、もっと他のやり方があるのではないか。

カナダ人らしいカップルはぶっきらぼうな人達だったが、山岳村に行く坂道で僕らが難渋していたら、さりげなく手を貸してくれた。嬉しかったものの、もうそんな年になったのか、といささか複雑な心境だった。心をこめてお礼をいうと、奥さんの方がつぶやくように、イッツ マイ プレジャー、といってくれた。いい言葉だ、イッツ マイ プレジャー。

ロンドンから来たという年配の物静かなご夫婦がいた。ロッジに宿泊した翌日のことだが、ご主人がカミサンに声をかけてきた。ロッジでは夕食時に地元の子供達と一緒に民俗ダンスを踊る機会があった。僕らもヘタクソな踊りを楽しんだが、ご主人はそれを見たらしい。

奥様の踊る姿はオリエンタルでとてもチャーミングにみえた、と彼はいう。多分彼も日本人が珍しかっただと思うが、カミサンをほめられて悪い気はしないものだ。

30名足らずだが、なかなか多彩な顔ぶれを乗せたボートはゆったりとメコン川を下った。川幅は広がったり狭くなったり、山間部では狭い岸壁の間を通り抜けていった。川面は薄いコーヒーのような色合いを見せながらどこまでも続いていく。白く泡立つ瀬にも時々出くわす。だからメコン川は夜間は航行できないという。

両岸に深い森が見え、その合間に高床式の家々が見え隠れする。時おり岸辺に水牛の群れや水浴びをする人々が見える。そんな時、巨大な望遠を装着したカメラを抱えた紳士が船内を忙しく動き回りシャッターを切る。

ボートは出発して6時間後、黄昏迫る森の岸辺に着いた。坂を登ったところの森に今夜泊るロッジが見え隠れしている。一日ボートに揺られていたがあっという間のことだった。

出迎えの民族衣装の若いスタッフたちが見えて来た。(続く)
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65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
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57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
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52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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