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かくてありけり
17 クレジットの怪
2003年10月22日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
 10月15日午前、中国が有人宇宙船の打ち上げに成功しました。米ロに次いで世界で3番目の「宇宙大国」に仲間入りしたわけです。衛星打ち上げビジネスの盛んなフランスですらやっていなかったことなんですね。
 大変な数の科学者や技術者の確保と、多額の予算を必要とし、しかも、すぐには経済的なメリットをもたらすわけではない。採算を度外視し、専ら国威発揚や軍事目的を優先して行うには、国家プロジェクトとして取り組まないかぎり出来ない。中国にとっては2008年の北京五輪と並ぶ大事業です。それを、世界に向かって予告し、成功させるとは、自信のほどがうかがえます。

 中国当局は外国メディアを発射場のエリアに立ち入らせなかったものの、国内メディアを使った報道には力を入れていました。当日、私はパソコンの前に座り、国営新華社通信の写真データベースにアクセスし、画面を注視していました。打ち上げの一報から45分ほどでその写真が掲示され、ただちにピックアップしました。関連写真は昼過ぎまでに合計約30枚を数えました。
 新華社の写真配信は、お国柄で、政府要人の動向やデリケートな内容には検閲が入るため、半日遅れも珍しくありません。この日の敏速な対応は大変異例です。

 それらの写真は日本でも当日の夕刊一面に大きく掲載されました。でも、複数紙を比較した方の中には、「あれっ」と思われた人もいるかもしれません。同じ写真なのに、掲載紙によってクレジットが(AP)、(ロイター)、そして(新華社=共同)と異なっていたからです。
 写真はいずれも新華社が配信し、それを外国通信社が転電(キャリー)したものです。前述のように外国メディアは取材規制を受けたため、今回の報道合戦は転電の早さを競うものでした。

クレジットとは何でしょう?少しおさらいをしてみます。
一義的には、ニュースの配信元を示します。写真を撮影したり入手した通信社名を記します。複数クレジットの場合は配信経路が加味され、言語が異なる場合は翻訳作業が入ったことを意味します。
 二義的には、著作権や二次使用権などの権利関係を明示します。雑誌などの出版媒体はこれを見て写真購入に動きます。
 クレジットを付けることで配信元はその報道に責任を持ち、読者はその記事や写真に一定の信頼を寄せるわけです。

 では同じ写真なのになぜ異なったクレジットが現れるのでしょうか?理由として考えられるのは、これまでの業界の慣行です。
新聞社は、配信を受けた通信社のクレジットを載せなくてはいけません。しかし、複数社が介在する場合は最終取り扱い社の名前だけ載せ、前段の配信社の名前は省略します。

 ちなみに、APが転電した打ち上げの写真の英文キャプションを見ると、末尾には「(AP Photo/Xinhua, Li Gamg)」と、新華社のLi Gamg氏の撮影であることが明記されています。一方、ロイターでは「REUTERS/Xinhua」と末尾にあります。それが紙面に載る時には新聞社の編集者が「(AP)」や「(ロイター)」だけにしてしまうわけです。1字でも短くしたいという心理が背景にあるでしょうし、英文と和文では処理が違うのかもしれません。

 共同通信は「(新華社=共同)」というクレジットで配信し、共同通信の加盟社はその通りに掲載しました。新華社の写真を共同通信が受信し、写真説明を日本語に翻訳して配信した−出所と経路が明確です。

 どちらが読者に対して親切でしょうか?またどちらが取材社の権利を守っているでしょうか?日ごろ、読者の知る権利に応えるとか著作権の尊重を格調高くうたっている大新聞社にしては無頓着であり、建前と実態の落差には驚きます。
 あるべき姿は「(新華社=AP)」や「(新華社=ロイター)」だと思います。

 私がこの面で神経質になるのは、立場を置き換えて、自社の写真が海外にキャリーされて、そこに共同通信の撮影によるものであることが反映されてなかったら悔しいからです。

 一連の流れを見て、ふと「マネーロンダリング(money laundering) 」という言葉が浮かびました。日本語では資金洗浄と訳され、麻薬取引や賭博などの不正手段で手に入れた資金を出所が分からないようにする操作を言います。趣旨は違うものの、前歴や出所を隠してしまうという点では同じです。せめて、意図したものでないことを祈ります。

ps.
今回「(新華社)」というクレジットが見あたらなかったのは、同社から直接受信している新聞社が日本にはなかったからです。

前に紹介したYahooのニュース写真のページで「Xinhua」を入力して検索すると、キャリーされた新華社の写真が見られます。ロイターやAPが出所を明記しているからこそ可能なことです。

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