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僕の偏見紀行
183 メコンクルーズ(7)ルアンパバン上陸
2015年2月19日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ルアンパバン上陸。僕らの荷物を運んでくれたポーター。一人で何個も担いでくれた。本当に助かった。
▲ ホテルの庭で。水面に花びらを浮かべて模様を描くスタッフ。ホテル内あちこちで毎朝この作業が行なわれていた。
▲ ルアンパバンのサッカリン通り。レストランやカフェなどいろんな店が並び観光客の集るところ。
ルアンサイロッジは3年前と変わらぬたたずまいでひっそりと森の中に建っていた。人の住むパクベン村から離れ、大自然に囲まれた静かな宿だ。ロビー棟を中心に木々の間にロッジが点在し、それぞれ木道でつながっている。

食事時になるとこの木道を通ってロビー棟のレストランへ向かう。メニューはラオス料理の洋風にアレンジ、勿論ラオスの主食カオニャオ(もち米)付き。

ボートのランチもそうだが、ここの料理はとても美味しい。スタッフは全員ラオス人のようだが、気取った五つ星ホテルよりよほどいい。

食後は村の子供達の歌や踊りを鑑賞、最後には一緒に踊ろうと引っ張り出された。村伝統の踊りは見た目より難しかった。自慢じゃないが我が家はオンチで運動神経ゼロ、そんな僕らに子供達の指導は容赦なかった。僕が今までやった踊りといえばフォークダンスくらい、子供達についていくのは大変だったがとても楽しかった。

再び木道を通り部屋へ戻った。簡素な造りのロッジにあるのは天蓋つきの大きなベッド、トイレ、ホットシャワーのみ、テレビ・冷蔵庫・電話などは無い。窓は竹を編んだ観音開き、開いた時はつっかい棒で支える。勿論、閉めても隙間から虫やヤモリの類がいくらでも出入りする。その内冷たい夜気も静かに忍び込んで来た。

夜が更けるに従い森から聞こえてくるのは、鳥か獣か分からない、生物の鳴き声と虫の音。さらに遠くから川の水音も聞こえる。メコン川はこのあたりでゆるやかにカーブしながら瀬となっている。熱いシャワーを浴び、身体が冷えないうちに急いでベッドにもぐりこんだ。あたりは漆黒の闇、大自然の底に沈みこむように眠りについた。

翌朝、早めに朝食を済ませて再びボートへ乗り込んだ。朝の冷え込みに備え厚着をしてきたが、さほどではない。未だ乾期の始まり、本格的な冷え込みはもっと先なのだろう。それでも川の中央に出ると風が冷たい。日本の真冬並みの寒さだ。

両岸の森が立ちのぼるもやの中で黒いシルエットを見せている。心なしか昨日より川幅が広くなり、流れが緩やかになってきたようだ。タイとラオスの間を流れてきた川はラオス領へと入った。

日が昇るにつれ気温が上がってくる。昼前には真夏のような日差しとなった。そんな時に舳先に立ち、雄大な流れを前に風に吹かれるのはなんともいえず心地よい。

ボートは途中で一度山岳民族村に立ち寄り、ルアンパバン目指して川を下った。午後になって、ルアンパバン近くの洞窟寺院に立ち寄る頃には川幅は一段と広くなった。寺院を後にして程なくルアンパバンの町が見えて来た。乾期のためか、川岸が随分高い。船着場から町へは急勾配の階段を登るようだ。

僕らはそれぞれキャリーバッグを引っ張り、リュックを背負っている。あの階段はちょっと大変だ。ポーターがいるといいが。心配していたらガイドが、ポーターとホテルまでのトゥクトゥクは用意する、と言ってくれたのでホッとする。

このルアンサイクルーズ、本社はフランスらしいが、なかなか充実したクルーズといえる。アテンドするガイド、船内でのランチやお茶、そしてロッジでの1泊、どれも満足すべきものだった。

難点は、料金が1人500ドル以上と少々高いことだが、その価値は十分あると思う。僕は日本のラオス専門旅行社を通じて予約したが、ネットで直接予約すればもっと安く済むことがガイドにきいて分かった。

ガイドが用意したトゥクトゥクで走ること数分でホテルに着いた。これなら歩いてもすぐだった。ホテルの周りはレストラン、カフェが立ち並び町歩きに便利なところだ。

このホテルは、かつてこの地に都をおいたラーンサーン王朝の王女の館だった。ラオスの伝統の木造2階建て、趣のある小さなホテルだ。通りに面した本館の1階にロビー、その上の2階はゆったりしたバルコニーのあるレストランになっている。

ロビー奥にプールを囲む中庭があり、周囲に客室が並んでいる。小さなホテルなので本館の客室はすでに満室だった。僕らが案内されたのは裏手の新館だった。新館といっても、緑豊かな庭園奥の木造2階建ての伝統建築だった。

部屋のすぐ裏手に小学校があり、塀越しに子供たちの元気な声が聞こえてくる。先生の教えを大声で復唱しているようだ。荷物を整理しながら、これからどうするかを考える。ルアンパバンでも観光地へのツアーなどには行かない。とにかく5日間のんびりゆったりラオスの古都を楽しもうと思う。

ただ、僕は大事な用件をひとつ抱えていた。僕は前回ここルアンパバンで、野良猫に手を引っかかれるというアクシデントにあった。その時の病院探しを助けてくれたトゥクトゥクのドライバーにもう一度会ってお礼を言いたい、そう考えていた。

詳細は前回の紀行文に書いたが、狂犬病のリスクを心配しながら病院を探しまわる僕を、ボウさんは大きな病院に連れて行くだけでなく、診察室までついて来ていろいろ助けてくれた。彼がいなかったら僕はちゃんとした治療を受けることが出来なかっただろう。

僕は、その時撮った彼の写真をプリントして持ってきた。この紀行文の始めにも触れた2枚の写真の1枚がボウさんなのだ。もう1枚は既にクルーズのガイドに渡すことが出来たが、どうなることだろう。実はチェックインの時にフロントで写真を見せたが、誰も彼を知らなかった。

彼の写真と2人の息子さんへのお土産を前に、僕はどうやって探そうかと思案した。とりあえず夕食と町の雰囲気を知るために散歩に出た。

ホテルのある旧市街のサッカリン通りには旅行者が溢れていた。圧倒的に欧米人が多い。そのせいか通りには彼ら好みのレストラン、カフェ、土産物屋、旅行社、両替商などが軒を連ねている。

とりあえずラオス通貨kip(キープ)への両替が必要だった。目に付いた両替商の窓口で1万円を差し出すと、顔色の良くない中年女が手際よくお札を数え、キープの札束を差し出した。計算書が付いてないのはおかしい、と思ったが、旅の疲れと空腹でいささかボンヤリしていた僕はついそのまま受け取ってしまった。

夕食後ホテルに戻って確認すると、今のレートでは65万kipのはずが55万kipしかなかった。到着早々まんまと初歩的な手口にやられてしまった。いつも計算書をみながら自分で数えなおすのに、今度ばかりはうっかりしていた。10万kip、1500円ちょっとの損害だ。

計算書をくれなかった、小銭が多かった、やけにオーバーな手さばきで数えて見せた等々、冷静に考えれば怪しいことばかり。今までいろんなところで両替をしてきたが、こんな目にあうのは初めてだ。優雅な古都でそんな目にあうはずがない、そんな甘い自分勝手な思い込みが通用するはずがなかった。

夕食は大通りに面したレストランにした。店内は欧米系の客で一杯だった。混雑する店内を動き回る若いウエイターはアイソがよく英語も達者だった。ヌードルスープとラオス風の魚料理にご飯を頼む。いずれも独特のスパイスが効いて旨かった。

食事中、店内を歩き回るクロネコ発見。看板ネコなんだろう、テーブルを回りながらお客に挨拶している。ウエイターに名前を尋ねると、スターと教えてくれた。やっぱり人気者のスターなんだ。思いがけずかわいいスターに出会え、ネコ・命のカミサンは大いに喜んだ。(続く)
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71 小笠原の旅(1)波路はるかに
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69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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