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葉山日記
75 ホリエモン(下)
2006年3月5日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
あるビジネス本を読んでいたら、次のような1行に遭遇し、ついなるほどなあ、と思ってしまった。

「バカは成功に学んで失敗し、利口は失敗に学んで成功する」(「起業バカ2 やってみたら地獄だった」渡辺仁著)

さいきんの本屋は、「株でカンタン1億円儲ける法」だの「またたく間のベンチャー成功法」だの、といった安易なハウツウ本ばかりが積みあがっていて、嫌になってしまう。そもそもこういう本の著者、儲け方のノウハウがそれほど分かっているのだったら、自分だけでこっそり実行し、人知れず儲ければいいのだ。そこで、上記の1行が腑に落ちる。多くの人は成功談に引き寄せられ、そしてだまされる。この手の本を買って、真剣に読むひとのことを「バカ」という。

事業や人生の成功者は間違いなく、失敗を繰り返しながらもその失敗の原因を分析し、批判やクレームがくれば、その発生原因を探り、というようなスパイラルを繰り返し、長い時間、地道な努力を続けてきた人たちだ。しかも、それだけの努力を続けていながら生涯成功に届かない人もいる。率としては不成功のまま人生を閉じる人びとのほうがずっと多いだろう。しかし「バカ」はそのことに気がつかない。

言ってみれば、ホリエモンこと堀江貴文氏の一時期の成功は、「多くの人が成功談に引き寄せられる傾向があるなら、その成功例を機関銃のごとく発射していけば、いずれ人はついてくる」という彼独特の直感の勝利だったのだろう。ちり(分割株)も積もれば山となる、だ。

堀江氏は彼のある本のなかで「アイデアや企画を出すのは実は簡単なんです。問題はその後で、形のないものを形にしていく、その具体的な形づくりこそが大切なのです」という意味のことを言っている。僕自身はその言葉にいたく同感した。僕自身が「理念先行型」「アイデア重視型」で、地道な形づくりを軽視する傾向があることに気がついていたからだ。

おそらく、ある時期までの堀江氏はまちがいなくこの地道な考えを実践していたと思う。現に過去、彼の買収した企業は、良いものを持っていて、苦労しながらある地点までは来たが、いま一歩のところで資金が続かずもがいている、と思われる企業が多かった。その「いいとこどり」のやり方が批判も浴びたのだが、僕自身はこれはこれでひとつのビジネスの形態だと思っていた。ユニークな事業を立ち上げたひとや企業には、経営権や資本が他に移ったとしても、その事業が継続され、花開くなら、社会への貢献という意味で、それはそれでそれでよし、という発想があるかも知れないからだ。

その地道な考え方がどこで狂ってしまったのか。たぶんあの球団買収事件がきっかけだろう。会社経営が黒字になっていなければ、世のエスタブリッシュメント、特に球団経営者たちは自分たちを一人前とはみなさない。であるならば、と堀江氏は考えたのだろう。「黒字にしちゃえばいいじゃん」と。

この辺が彼の思考法のある意味ユニークなところだ。このエッセイ前号で、「人が金で変わる。女が金でなびく」ものなら―金を持つ側に回ればいいじゃん、とホリエモンは単純に考えただけの話だろう、と僕は書いたが、黒字の件もどうようだ。

この考え方に立てば、彼が衆院選挙に立候補した理由も浮かびあがってくる。世の人びとは権威やムードに弱い。現に小泉さんの手法。

規制緩和、靖国参拝。規制緩和、靖国参拝。規制緩和、靖国参拝。規制緩和、靖国参拝。

同じフレーズを臆面もなく、なんどもなんども呪文のごとく繰り返す。「なにが悪いんですか」と持論をまくし立てているあいだに、相手は黙ってしまう。それでも反対するやつは押しつぶす。みてごらん。国民はいつの間にか、彼を支持し、自民党は世紀の大勝を得てしまったではないか。であるならば、いまいちばん強いものに乗ればいい。その権威を借りて、「ライブドア、ライブドア」と連呼すればいいのだ。

なにやら地検が蠢いている。しかし自分が選挙に打って出て大衆を味方につけ、さらに政権政党に近づいてしまえば、地検は動こうにも動けなくなる。世のなか、そういうもんなら、政治家になっちゃえばいいじゃん。ここでも彼独特の動物的カンと実行力が動いた。

強制捜査までのホリエモンは人生が楽しくて仕方がなかったろう。世の中が自分が考えたとおりに動く。夢を可能な限り大きくふくらます、自分とライブドアの「成功」をマスコミをつかって派手に振りまく。そういう繰り返しのなかで、大衆や株主は自分およびライブドアに引き寄せられていく。その実態を現実にまざまざと見たのだから、彼の日々はそれこそ光り輝いていたに違いない。財務の粉飾はこの流れのなかではきわめて自然のものだったに違いない。

拘置所のなかの彼はいま考えている。自分は知らなかった、であくまで押し通す(現にこまかいことはわかっていなかった=筆者注)。裁判でもその主張を断固押しとおす。押し通している限りは「ヒーロー」だ。自分はあくまで、ライブドアを世界一の会社にするため働いていたのだ。役員や社員を叱咤激励したが、それはあくまでこの目標に到達するためだ、と。

いずれ時間が経てば、ひとはこの事件のことを忘れていく。ひととはそういうものだ。そしてもしかすると、いずれ「堀江待望論」が息を吹きかえすかも知れない。自分が地検に「落ち」たら、それは自分の最後だ。自分の存在価値は、人に夢を、メッセージを与え続けること。それを継続するかぎり、「バカ」はけしてこの世の中からいなくなることはない。

蛇足ながら、「バカ」というのは、あくまで筆者が考える「風になびきやすい一般大衆」の意である。堀江氏自身が彼の支持者を「バカ」とみる意識があるかどうかは、分からない。もちろん、その「風になびきやすい一般大衆」的要素が筆者自身にあるかも知れないことは充分自覚している。
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