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僕の偏見紀行
184 メコンクルーズ(8)王女の館
2015年2月26日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ルアンパバンの朝。托鉢の僧侶の列と観光客。これは邪魔にならないよう配慮している例。
▲ ホテルのレストランから。朝食のバルコニー席からサッカリン通りを見る。
▲ タマリンドのスペシャルディナーのメイン。メコンの魚をバナナの葉で包んで蒸したもの。
翌朝、早めにレストランへ行く。客の姿は少なく、眺めのいいバルコニー席に座ることが出来た。ホテル前のサッカリン通りがよく見えて面白い。

行き交う自転車やバイク、そしてトゥクトゥク。車は比較的少ない。歩いているのはバッグを背負った小学生や物売りのオバサン、そして托鉢中の僧たち。オレンジの僧衣の列に観光客が群がりカメラを向ける。

通りのあちこちに供物を用意した地元の人たちが座り、僧が近づくとご飯や果物などを捧げる。時には撮影に夢中になって托鉢の邪魔となる観光客が現れ問題となっている。

ビュッフェスタイルの朝食は美味しかった。大きなホテルほどの品数やボリュームはなかったが、いずれも手のこんだものばかりだった。野菜、チーズ、ハム、ベーコン、フルーツ類が美しく大皿に盛られ、それは懐石料理を思わせた。イギリスの、じゃがいもや生のブロッコリーを丸ごとを並べる朝食とは雲泥の差があった。

オムレツとヌードルのコーナーでは、女の料理人が客の希望に応じて目の前で作ってくれた。僕らは毎朝、ベトナムのフォーに似たヌードルスープを頼み、その後で洋風の朝飯を食べた。特にパンやチーズ、ミルクが美味しく、つい食べ過ぎて困った。そして最後に、スイカ・パパイア・パイン・竜眼、さらに見慣れないフルーツまで皿一杯に盛り上げて食べたことはいうまでもない。

当初はホテルのスタッフはあまりにフレンドリーじゃないなあ、と思ったが、実はそうではなかった。顔見知りになると男も女も、ちょっと恥ずかしげにしかし心のこもった挨拶をしてくれた。きっと外国人に不慣れなんだろう。

日々のサービスは行き届いていた。部屋の掃除は日に何度も来た。外出から戻ると出かける前に散らかした部屋が片付いている。どこかで出かけるのをみているのだろうか。貧乏性の僕はなんだか申し訳なくて落ち着かなかった。

僕らの部屋は新館の2階にあり、外階段から上がる。階段を上がったところは東屋風の休憩コーナーになっており、その天井に夜な夜な可愛い珍客が現れた。灯りに集る虫目当ての体長5cmくらいのヤモリが10匹くらい現れて天井に張り付くのだ。

辛抱強く獲物を待つ姿を毎晩見るうちに情が湧き、夜間そこを通る度に天井を見上げるようになった。そしてヤモリたちが健気に天井に張り付く姿を見ては安心した。ある時はは30cmくらいのでかいトッケイが脇の柱に逆さまに張り付いて赤い目を光らせていたが、これは迫力があった。

ホテルの周囲には雑貨屋や特産の絹製品の店が多く、散策しながら買い物をするのに便利だった。すぐ近くに伝統織物を現代風にアレンジした衣服やショール・バッグを売る店があった。そこが気に入ったカミサンは何度も通うことになった。

この店は郊外に自社の工房を持ち、そこでは養蚕から製糸・染色・機織りまで手作業でやっているという。希望すれば専用のトゥクトゥクで案内すると言うので行ってみた。

僕らはそこで桑の葉に群がる無数の蚕を初めて見た。かたわらには染色に用いる自然素材の草木が展示され、風が吹き抜ける板張りの工房ではたくさんの若い娘たちが織機に向かっていた。

足踏み式の織機では色鮮やかな伝統模様の布地が織られていた。こんな様子を見るとまた一段と購買意欲が増すもので、僕らは買い物のために別棟の売り場に向かった。なかなか商売上手なお店だった。

アジアの町で数日滞在するために必要なものは、水を買うための雑貨屋、現地の人が利用する手軽な食堂、そしてランドリー。いずれもホテルでも用が足せるものだが料金が高い。ホテルの水やランドリーは町の相場の10倍はする。下着の洗濯で数十ドルも払うのはとんでもないことだ。

洗濯物1キロ1ドル、これが妥当な相場だ。時には目方をごまかされたり、安香水をふりかけられたり、他人のTシャツが紛れ込んだり、閉口することもあるが大した問題ではない。僕にはそんなところが面白い。

このたぐいの店を探すには、安宿の集る地区に行けば簡単に見つかる。ここでもホテルから遠くないところに数軒あって一安心。ただ初めて行ったランドリーのオバチャンは手強かった。

持参した洗濯物をハカリにかけること無く、手に持つと7キロ、と一方的に宣言した。とてもそんな量は無かったはずだが、なんとなく気合負けしてしまった。

前回ラオス料理のスペシャルディナーを食べに行った「タマリンド」というレストランは場所が変わっていた。市内を流れるナムカーン川のほとりの新興のホテル・レストラン街に移っていた。

ここの料理はなかなか美味しく、予約が必要だが金曜夜のスペシャルディナーは、様々な国からやって来た人々と話が出来るのも楽しみの一つ。

金曜日の夜、カミサンと出かけた。ここはラオス伝統料理を外国人にも親しみやすい味で提供するので観光客に人気が高い。この金曜日のスペシャルディナーはいつも満席という。

予約した時間に行くと、もう大半のテーブルは大勢の客で埋まっていた。僕らが案内されたのはコーナーの小ぶりのテーブル、合席はオーストリアから来たという中年のご夫婦だった。

メニューは前菜にメコンの川ノリ、数種のディップ料理など、メインはメコンの魚をバナナの葉に包んで蒸したもの、魚の身をほぐし、独特の調味料と、茹でた麺・ナッツ類・香草を合わせ、レタスで巻いて食べる。ベトナムの生春巻きに似た食べ方だ。これにもち米のご飯とデザートが付き、いずれも大変結構な味だ。

メインの魚は身の丈30cm以上はあろうかという大物、外側は全体に黒っぽく、ほぐすと引き締まった真っ白い身が現れ、実に旨い。ところがオーストリア旦那は魚が苦手のようだ。料理の写真はこまめに撮るものの、あまり手を出さない。

「この人は魚が嫌いで、せっかく私の誕生日に私の好きな寿司を食べに行ったのにあまり食べなかったのよ。」

旦那があまり食べないのをいぶかる僕らに奥さんこう話した。旦那は奥さんの話を苦笑いしながら黙って聞いていた。彼はもともと寡黙なたちのようで、あまり喋らなかった。オーストリアではもともと魚を食べる習慣は無かったらしいが、近年は寿司が大人気らしい。

僕がテキトーイングリッシュで、あなた方は、かのハプスブルグ帝国の末裔なのか、それは凄い、などとしゃべくっていたら、あなたの英語を理解するのはとても難しい、といきなり旦那にいわれてしまった。

そこで僕は、我々ジャパニーズは日常生活で英語を話す機会がほとんど無く、英語が苦手なのだ。しかし中学高校大学と10年も英語を学ぶ時間はあったのだが、と日本の英語事情についていい訳めいたことを話した。

旦那によると、オーストリアでも日常生活で英語を話すことは少ないという。しかし二人とも多少なまりはあるものの正確な英語を喋った。

いつも思うけど日本の英語教育は間違っている。言葉なんだから、円滑な会話で意思疎通が出来なければ始まらない。アジアに来ると、トゥクトゥクのドライバーも食堂のニイチャンもランドリーのママも、なまりのつよい英語を大威張りで喋っている。それも学校でキチンと学んだのではなく、日々の商売の現場で身につけたものだ。みんな生活がかかっているから必死なのだ。

我々日本人はカッコばかりつけて、正確な文章を正しい発音で、などと見栄を張るのが良くない。聞いてるほうは、日本人がキングスイングリッシュを喋るなんて期待していない。

日本も、少なくとも「おもてなしの国」を標榜するならアジア諸国を見習え!アクセントやLとRの発音なんか気にするな、通じればいいのだ、と言葉で苦労するジジイは言いたい。(続く)
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60 南会津の旅 弁愡浚村)
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32 ハワイ島滞在記(1)
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28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
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3 信州塩田平別所温泉
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1 東北紅葉雪見風呂
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