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葉山日記
78 SOMETHING
2006年6月11日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 旅客機の窓から見えた富士山。撮影はことし4月初旬なんですが、山頂がこんなに見事に見えたのは初めてなんで、時期遅れですが、あえて掲載。
インターネットのオークションに初めて出品してみて、その威力のほどに正直驚いた。

実は会社で不要になったフィルムスキャナーの処分に困っていた。市場価格で買えば200万円前後の品物。世界最高品質を誇る優秀なマシンなのだが、それだけに一般ユーザーには高嶺の花、オークションに出しても反応はたぶんまったくないのではないか、とダメモトで出品したのだ。ところがである。あっという間に買い手がついた。しかもこちらの希望価格をはるかに超えたのだ。

世の中はアナログからデジタルへ急速にシフトしている。それは写真界もおなじことで、大メーカーのフィルムカメラ生産中止の報が相次いでいることは僕のエッセイや掲示板でしばしば触れた。そういう時代であるから、フィルムをスキャナーでデジタルファイル化する需要はある。その需要を見込んで、僕の会社も高性能スキャナーを導入したわけだが、商売となると厳しい。大きな契約が継続中だったのだが、ある日ずばりと切られた。あわてて他に営業展開をかけたが、すべて価格競争に敗れた。「敵」は国内だけではない。韓国、中国、マレーシア、インド。人手を要するスキャニング作業は、イコール人件費をいかに低く抑えられるかの勝負。となると負けは明らかで、この業務からの撤退を決断せざるを得なくなったわけだ。

さて、では残った3台の高級マシーンをどうするか。金を稼ぎ出さない機械をいつまでもオフィスに置いておく余裕は僕の会社にはない。そこでネットオークションにかけたら、あっという間に3人の買い手が見つかったしまったのだ。

買ってくださった方々の何人かと直接会ったり、電話で話したりする機会があった。

1)プロカメラマンをしている。デジタルで納品を要求されるケースがほとんどになってきた。この先、フィルムカメラをデジタルカメラに代えて転換を図ることも考えたが、やはりフィルム主体で生きることにした。すると自分が撮影したフィルムをデジタルデータ化するために高性能スキャナーがいる。しかし理想のマシンは高くてとても手が出ない。悩んでいたところたまたまオークションを見たので飛びついた。

2)印刷の前工程に関わる仕事をしている。いま高い機械を買ったとしても、採算は合いそうもないが、(中古なら)デジタル時代への勉強代だと思って思い切った。(この方は資金的にかなり余裕があるのだろう。競り合ったあげく、当初設定価格に20万円以上上積んだ額で買っていただいた)

3)モデル撮影を主とするプロカメラマン。最近の写真家は「シャッター押し屋」と化そうとしている。自分の撮影現場のすぐ後ろで、クライアントやデザイナー、ヘアメークがモニターで撮影直後の写真をみて、すぐさま指示を飛ばしてくる。その指示に基づいて、次々とシャッターを切るのです。自分が撮ったフィルムもすぐさまデジタル化しなければ売れない時代になった。

いやはや、ネットオークションを通じて初めて知り合ったプロカメラマンや写真関係者の話を聞いて、まさにデジタルの時代に突入し、好きか嫌いかなどお構いなしに、現代の写真家はデジタル武装しなければ生き残れないという厳しい現実があることにようやく気がついた。

テーマをネットに戻そう。僕が驚いたのは、日常の生活の中ではけして出会えなかったであろう、ごくごくわずかのマシンの潜在購入希望者を、インターネットはいともたやすく見つけ出してしまった、という点だ。同業者との交渉が半年も続き、それでも売れなかった品々の売り先きが瞬く間に決まっていったのだ。インターネットの威力に口あんぐり、というのが正直な気持ちだ。

そこで考えるのが、最近の迷惑メールの氾濫だ。とくに出会い系サイトへの勧誘メールは目に余る。こんなメールに引っかかる人間などいるのだろうか、と毎日200を超えるスパムメールを消去しながら思うのだが、ネットオークションを経験する中で、考えが変わった。間違いなく、いる。

つい最近それを裏付ける新聞記事を読んだ。

― ××容疑者らはサイトの広告メールを無差別に送信し、閲覧者を勧誘。別のポルノサイトなどから画像を集め、クリックすると「入会完了」などと書かれたページを表示させていた。「メールを100万通送ると1千人がサイトを訪れ、10〜20人が金を払った」と供述しているという。―

100万人に10〜20人が現実に引っかかっているのだ。成功率はきわめて低い。しかし分母が巨大になれば、成功率は零コンマ零以下でも、獲物=売り上げ、が捕獲できる時代。


(≒0)×(≒∞)=SOMETHING

これは「博士の愛した数式」ではない。今話題の本「ウェブ進化論」(梅田望夫=ちくま新書)で強調されているインターネット時代のビジネスを表現した数式だ。「限りなくゼロに近いもの」に「限りなく無限大」を掛ければ「何か」が生まれる、と。僕が経験したことや、出会い系サイトで逮捕された容疑者の話とぴったり符合するではないか。

さて、インターネットが生み出すSOMETHIGとはいったい何か。それは人類にとって有用なものか、それとも害悪か。僕自身はいまその問題をしきりにかんがえているのだが、結論はしばらく出そうにもない。
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