|
|
|
46 |
|
 |
|
モティーフ |
|
2008年6月28日 |
|
|
|
 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房、翻訳)などがある。現在、文化交流を目的とした十長生の会を友人たちと運営、活動している。 |
|
|
 |
|
▲ タイの宝石学校で私が初めてデザインしたアクセサリーは、葡萄がモティーフ。(1998年) |
|
 |
|
▲ ブレスレット。コンピュータグラフィックではなく手描きでデザインした。葡萄の葉っぱをモティーフにダイヤで囲んでみる。(1998年) |
|
 |
|
▲ この夏、我が家の庭先で巨峰が陽の光を浴びている。
|
|
枯れ木のように硬くなった短い幹から、みずみずしい葉が立ち上がった。つるを伸ばし、アルミのフェンスに絡まる。鉢植えの葡萄を庭の片隅に移植したのは昨年末だった。
葡萄。その葉の緑の陰影は、強烈な夏の日差しから幼い肌を守ってくれるやさしい緑のベール。パリッとした五角形の葉と葉が重なり合い、その下には緑の濃淡で不思議な空間を作り出す。
私が育った田舎は、海に近く、歩いて10分ほどで海水浴のできる白い砂浜に出ることができた。80軒ほどの人家が途切れたあとの、砂浜に続くまっすぐの道すがら、両脇には葡萄棚が迫っていた。
熟しはじめた葡萄の甘い匂いが鼻先をかすめ、私たち姉弟は、西に傾き始めた太陽に向かって裸足で歩いたが、白く光る砂の道は充分に熱く、すでに水着姿となった焼けた肩にはパンパンに膨らんだ浮き輪が掛かっていた。
私の憧れの家は集落のはずれにあった。小さな木造平屋のその家には、私より少し年長の3姉妹が両親と住んでいて、波うち際に面する庭に葡萄棚がしつらえてあった。静謐なその庭の空気は、お遣いに出されその玄関先にたたずむ幼い私を異次元へと一瞬誘った。
私の思い出はしばしば“ぶどう”と連なっている。
旅先でも…。 トルコのエーゲ海側の町セルチュクで見た遺跡エフェスのレリーフ。(ワイン発祥の地はやはりエーゲ海に浮かぶクレタ島で、数千年も前からぶどう栽培が行われていたという。)イスタンブールで入ったレストランの葡萄棚。ウィーン郊外ハイリゲンシュタットの丘の麓に広がる葡萄園。
どれもなつかしく、癒されるような感覚。何千年もの昔から建築やアクセサリーに多く用いられてきた葡萄のモティーフ…その魅力に私はずっととらわれている。
|
|
|
|