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ホームセンター |
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2008年7月5日 |
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 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房、翻訳)などがある。現在、文化交流を目的とした十長生の会を友人たちと運営、活動している。 |
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▲ ローズクォーツとパールのアクセサリー。 |
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▲ 実家に帰ると犬との散歩がうれしい。 (2008年5月) |
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自室のビーズコーナー、庭、市立図書館…遊び場ともいえるそれらの場所を私は日々行ったり来たりしている。そして最近の私のお気に入りの場所はホームセンターだ。
ホームセンター通いを始めたのは、九州の実家への帰省がきっかけだった。80歳になる母が一人で暮らす実家の母屋は、築36年になろうという2階建ての木造家で、あちこちにガタがきている。
乗ると不思議な浮遊感覚を与えてくれる床、娘時代に使っていた部屋のほころびかけた壁、生半可な力では開かなくなった箪笥の引き出し、建て付けの悪いドア…。そして3年ほど前に起きた福岡西部沖地震で浴室のタイルには幾筋かの亀裂が入っている。
10日間ほどの滞在中、私は近くのホームセンターに何度も通い、タイル補修剤や、ペンキ、壁紙、玄関先の敷ものなどを買って来ては家を整え、庭の草むしりに励んだ。
それから1週間ほど後、俳句をたしなむ母の句が地元の小さな新聞に載った。
母の日に子に尽くされて疲れをり
げに親孝行とは難しい。これといった理由もなく、実家に帰るのを先延ばしにし、とうとう一年半もの空白を作ってしまった私は、その埋め合わせをしなければと頑張った。そして母はその娘の姿に押され我も…と老体に鞭打っていたのだ。
ホームセンター行きは私の楽しみのひつになった。どのホームセンターにも園芸コーナーがある。植木鉢、コンテナスタンド、ハーブ苗、ガーデンファニチャーは、私の小さな庭を広大な庭に錯覚させるほどイマジネーションを与えてくれるし、木材や、ドアノブ・フック・ネジ・クギの金属類、ペンキ、接着剤などが陳列された屋内の売り場は、それらが渾然一体となって醸し出す匂いで私をうっとりさせる。
ホームセンターは家の修理や庭づくりに目覚めた私のテーマパークだ。
そんなある日「パート募集」の張り紙が目に留まる。緑のエプロンを掛けテキパキとした身のこなしで店内を駆け回る自分の姿が目に浮かぶ。う〜ん、ちょっと心が揺れる。
だが、待てよ? わがインフォネット例会の会計報告で、千円冊をわしづかみで報告したという伝説?を持つこの私。商品陳列だけならいいがレジ係となると…。答えはいわずと…。
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