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僕の偏見紀行
191 カンボジア紀行(5)ランドリーとバインミー
2015年7月9日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ ホテル付近の路地裏。変貌著しいホーチミンで、いつまでこんな光景が見られるだろうか。
▲ 10ドルツアー、メコンクルーズのベトナムランチ。韓国から来たらしい親子と同席。
▲ やっと発見、バインミーを売るパン屋。店頭のガラスケースにパンが並んでいる。店奥にはパン焼き釜。
お土産を買おうと国営百貨店目指してタクシーに乗り込んだ。手頃なお土産は百貨店の中にあるスーパーが一番。豊富な品揃え、しかもめっぽう安い。日本人にも人気が高く、いつ行っても老弱男女のご同輩に出会う。

何故国営百貨店にスーパーなのか、よく分からないが便利なので利用している。我が家は、スーパー以外の高級品を並べた百貨店売り場を利用したことがない。

タクシーを降りて驚いた。百貨店が消えている。1年前、僕らは間違いなくここでコーヒーやお茶など買い込んだ。

百貨店があったと思しきあたりには巨大な鉄骨が聳え、足場がその周りを囲んでいる。現場の看板によると中心部の大掛かりな再開発工事のようだ。施工は日本のゼネコンを含めたJV方式とある。なるほど経済成長真っ盛りのベトナムらしい光景だ。

付近をうろついてみたがらちが明かない。どこかの仮店舗で営業しているはずだが、どこへ移転したのか。通りがかりの人にも尋ねたが要領を得ない。

年寄り3人組が途方にくれるのを見た現場監督が話しかけてきた。国営百貨店スーパーの移転先を尋ねると、もう何度も日本人に同じことを尋ねられたのか、すぐに教えてくれた。

教えられた場所は歩いて10分ほどの別の通りだった。汗を拭き拭きたどり着いたら、そこはは真新しい高層ホテルだった。まさかこんなところにスーパーが?、僕は不安になった。

入り口のボーイをつかまえ、国営百貨店のスーパーはここか、と尋ねた。一瞬彼は驚いたが、それは隣りだ、とホテル脇にある古いショッピングセンターを指差した。あまり地味で小さいので僕には見えていなかった。

出だしで手間取ったが無事買い物を済ませた。いつものコーヒー・お茶・調味料等々。ここのお土産は、いくら買い込んでも心配無用、それくらい安い。しかもベトナムコーヒーはお土産として評判がいい。問題はバッグにうまく収納できるかどうかだ。

お土産の買い物後、雑貨屋・洋服店へまわり、カミサンと義姉は刺繍の小物入れ・衣類などを購入した。

洋服店は、ベトナム伝統のアオザイを観光客向けに短時間で仕立てるのをウリにしていた。カミサンは今更アオザイでもあるまい、と夏用のワンピースをベトナム伝統模様の色鮮やかな生地で仕立ててもらうことになった。

ベトナムといえばアオザイだが、ベトナムに行けばどこでも見られるわけではない。ホーチミンで見かけたアオザイ姿は、女学生やホテルフロントの女性などだった。余計なお世話だが、日本人には体型的に無理があると思う。

アオザイのルーツは知らないが、小顔で細身の大陸的体型向きの装いだろう。時おり見かけたが、アオザイ姿でお買い物、といった旅行社のプランにはのらない方が無難だ。余計なお世話ではあるが。

買い物中、僕は日本人の女店主と少し話をした。ホーチミンにも日本人経営の店が結構あるらしい。その店は最近の日本企業進出ブームに先駆けての開業だった。

話しているうちに、シェリムアップで我々が買い物をした店も同系列、ということが分かった。アジアの各地で活躍するやり手の女店主だった。

ホーチミンに来たらやはりメコンデルタツアーははずせない。義姉が初めてということもあり、今回も勿論出かけた。何度も書いているが、このツアーは内容が充実している上に安い。毎度安い!ということに大騒ぎして恐縮だが、僕にとっては重要な旅の条件だ。

なにしろ貸し切りバスに乗って、2時間走った後、船に乗り換えてデルタ地帯をめぐる。点在する中州のひとつに上陸し、ライスペーパーやココナツキャラメルの製造所見学、レストランでのベトナムランチ、果樹園でのティータイム等々実に盛沢山である。

今年は果樹園でハチミツを買った。一瓶500円、トーストにぬるといい香りがして柔らかな甘みが広がり、結構な味わいだ。

さらに小船に乗ってのジャングルクルーズまで付いているのだ。これで一人10ドル、これはここ数年変わらないまま。いつも思うがどうやって採算を取っているのだろう。

主催するのはシン・ツーリストという旅行社。ここはかつてシン・カフェという喫茶店だった。ホーチミンの安宿街、デタム通りのカフェにバックパッカー達が集り、旅情報を交換するうちに旅行社となったという。大手となった今もデタム通りに本社を構えている。

今回のホーチミンで是非食べてみたかったのが、かの有名なバインミー、ベトナム風フランスパンサントイッチ。通りのあちこちに屋台があって、ガラスケースにパンやハム、野菜が並べられ、旨そうだと思いつつ今まで機会が無かった。

ところがいざ屋台を探してみるとなかなか見当たらない。今度は絶対食べると張り切るカミサンの手前、僕はホテル周辺を探し回った。たしか朝方はここらで屋台を見たはずだが、と思うところにも無かった。

何故だろう、いろいろ考えた結果ようやくその訳が分かった。探すタイミングがまずかった。このサンドイッチは朝食に食べる人が多いためか、屋台が出るのは朝の時間帯が多いのだ。

ところが我々はいつもホテルで朝食をとる。そのためバインミー探しは、どうしてもお昼かおやつの時間になってしまう。その頃には店じまいする屋台が多いのだろう。

ホテルの朝食は魅力的だが、それでもバインミーが食べたい。諦めずに探していたらようやく売ってる店を発見した。いつか朝の散歩で歩いた路地に、店頭にフランスパンを並べた店があった。

ガラスケースにパン・野菜・ハム等がちゃんと並んでいる。良かったここで売っている。ケースをのぞくと、店のオバサンが元気のいい声で、オール?と僕に尋ねる。サンドイッチに挟む具材のことのようだ。いろんな具を選べるらしいが、オバサンは全部入れるのか、と尋ねていた。

僕がうなずくと、オバサンは長さ20cmくらいのフランスパンに切込みを入れ、手早くそこへバターとこげ茶色のパテをぬった。さらにハム・生野菜・香草類を挟み、ニョクマムらしきタレ、そしてナッツや香辛料も加えた。

バインミーの出来上がりを待つ間、薄暗い店の奥をのぞいたところ、なんとそこにはパン焼き釜が稼動していた。店の主人が次々に焼きあがったパンを取り出している。あたりに焼きたてパンのいい香りが広がる。

ここは本格的なパン屋なのだ。時おりやって来て、焼きあがったパンをまとめ買いするのは屋台の人かもしれない。偶然いい店に出会えて幸運だった。

ホテルに持ち帰り、3人で牛乳と一緒に食べるとこれが実に旨い。焼きたてのフランスパンは外側はパリパリと香ばしく、中はさくさくした軽い食感がして、日本のものと少し異なる味わいだが、とても美味しい。ベトナムの風土に合わせて進化したのだろう。

独特の風味のパテとタレそして香草と香辛料が、生野菜やハムの味わいを一段と深くしている。こんなに旨いものならもっと早く食べてみればよかった。これでまたベトナムに来る楽しみが一つ増えたというものだ

ホテル近くのランドリーにもお世話になった。なにしろ夕方までに持っていけば、翌日10時頃には出来上がる。旅行中のセンタクは大変だ。もちろんホテルに頼めば簡単で間違いない、しかし高いのが難点だ。

今までセンタクにはいろいろ苦労した。バスタブで洗って部屋にぶら下げることもした。しかしホテルの部屋にそんな適当な場所はそうそう無い。水気を切るのは大変だが、乾いたバスタオルで巻いて踏んづける、というのもよくやった。

しかし旅先でこんなことで神経を使いたくない。だからアジアのように、1キロ1ドル翌日仕上がり、は本当にあり難い。だから僕は新しい町に着く度にランドリー探しに奔走する。

ホーチミンでやっと探し当てたランドリーに初めて3人分の洗濯物を持ち込んだ時、店の主人らしい男性は少しあわてた風で奥にいた奥さんを呼んだ。出てきたアイソのいい奥さんはカタコトの英語を喋ったが、旦那は全くダメのようだった。

慣れた手つきで洗濯物を計量した奥さんは、1キロ1ドル、トモローモーニング テン エーエム、とだけ言って微笑んだ。僕はカネを払い、預かり伝票を貰ってホテルへ戻った。

どこでもそうだが、伝票の明細欄は空白のまま、通し番号だけが書かれていた。明日午前中10時に来ればいいのだ、楽でいいなあ。

翌日10時頃再びランドリーへ行くと、旦那が現れた。伝票を渡すと、旦那は間違いなく我が家の洗濯物を出してくれた。

持ち帰ってビニール袋に詰め込まれた洗濯物を整理していたら、見憶えのない男物のTシャツが1枚現れた。男物だから僕のもののはずだが、見たことも無いシロモノだ。

最近とみに脳みそが衰えたとはいえ、着慣れたおのれのシャツを忘れるほどではない。どう考えても他人様のものだ。めんどくさいから捨てようか、と一瞬思ったが、ランドリーの夫婦が困るかもしれない、と他人のTシャツをぶら下げ、再びランドリーへ向かった。

店には旦那しかおらず、言葉が通じない。仕方がないので身振り手振りで事情を説明するも要領を得ない。困ったなあ、と思いつつ説明を続ける。どうも旦那は、僕が出来具合にクレームをつけに来た、と勘違いしてるようだ。

らちがあかないまま時間が過ぎていく。すると旦那がいきなり店を出よう、という仕草をした。わけが分からないままついて行くと、彼は隣りのカフェの店先で談笑する客達に相談を始めた。

すると客の一人の若者が英語で僕に話しかけた。旦那は彼に通訳を頼んだらしい。僕は若者に事情を説明し、無事一件落着となった。僕はTシャツを旦那に渡すとホテルへ戻った。

こんな間違いは日常茶飯事のようだ。この地では、受け取った洗濯物の数が少々合わずとも、さしたる問題ではないのだろう。僕が乗り込んだ時も、返しに来たとは思わなかったに違いない。

それで僕は分かった、ランドリーの店頭に何故古着が沢山吊るされているのか。多分数が合わなくなり、引取り手の無い洗濯物が溜まったのだろう。ただ、吊るしてあるのが販売用なのか、一時保管なのか定かではなかった。(終わり)
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83 シルクロードの旅(6)国境越え
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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79 シルクロードの旅(2)青の都サマルカンド
78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
77 小笠原の旅(7)惜別
76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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