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ボーダーを越えて
160 ボリビア(1)サンタクルス
2010年6月6日
雨宮 和子 雨宮 和子 [あめみや かずこ]

1947年、東京都生まれ。だが、子どものときからあちこちに移動して、故郷なるものがない。1971年から1年3ヶ月を東南アジアで過ごした後、カリフォルニアに移住し、現在に至る。ボリビアへの沖縄移民について調べたり書いたりしているが、配偶者のアボカド農園経営も手伝う何でも屋。家族は、配偶者、犬1匹、猫1匹、オウム1羽。
▲ 「南米桜」などと呼ばれるトボローチ(toborochi)がどこでも満開でした。5月は南米では秋なのですけどね。
サンタクルスはエリカさんの連載エッセイでお馴染みですが、ボリビアにもサンタクルスという町があります。町というより都市で、近年はボリビア一番に発展した大都市になっています。

そのサンタクルスへ初めて行ったのは1996年ですが、行く前に交通手段としてレンタカーを考慮してみました。中南米はヨーロッパのレンタカーは、どういう訳かアメリカで予約して行った方が安いので、ハーツに電話してみました。
「ハロー、ボリビアのサンタクルスで車を借りられますか?」
「サンタクルス? もちろんですよ」と、答えたのは若い女性。やはり世界中で営業している会社だけある、と私はちょっと感心しました。国際運転免許証はやはり持って行った方がいいとは思うけど、念のため聞いてみました。
「国際免許? あなたの免許証はどこ発行なんですか?」
「カリフォルニアですけど」
「それなら何の問題もありませんよ」という返事に、私は気が付きました。この人はカリフォルニアのサンタクルスと間違えている、と。最初にボリビアのサンタクルスだと言ったのに。
「あのぅ、カリフォルニアじゃなくて、ボリビアのサンタクルスなんですけど」
「ボリビア?」
「そうです」
「… … … それ、一体どこにあるんです?」
やっぱり。普通のアメリカ人はボリビアがどこにあるかはもちろん、ボリビアという国があることすら知らないのです。エボ・モラレスという先住民が大統領に選ばれて、ボリビアが一躍世界のメディアに取り上げられるようになっても、アメリカ人の非常に限られた地理の知識は今も変わらっていないでしょう。ハーツはもちろんボリビアでは営業していませんでしたし、今もしていません。

日本の方々は少なくともボリビアが南米にあることは知っていますよね。(そうでもないかな?)日本人でもアメリカ人でも、ボリビアが南米の国であることを知っていても、ボリビアが地形や人種や文化の面で複合社会であることを知っている人は少ないのではないでしょうか。

ボリビアと言えば、女性たちは何重にも重ねたスカートをはき、黒いフェルトの山高帽をかぶった先住民や、ヤマ(リャマ)の姿が思い浮かぶでしょう。が、それはアンデス山脈が南北に走る西部のアルティプラノ(Altiplano)と呼ばれる高原地帯だけ。そこには行政府のあるラパスがありますが、司法上の首都はアンデス山脈の東側の気候温暖な渓谷地帯にあるスクレです。渓谷地帯には5月に「環境変化に関する世界人民会議」が開催されたコチャバンバなどがあり、さらにその東側にはボリビア総面積の半分近くを占める平らな低地が広がっています。その低地の中心は農業の盛んなサンタクルス県。その首都がサンタクルス・デ・ラ・シエラ(Santa Cruz de la Sierra)、略してこれまたサンタクルスです。先月そのサンタクルス県でとても有意義な12日間を過ごし、感激して帰って来ました。

今回のボリビア行きは2004年以来6年ぶり、通算6回目です。6年もギャップがあいたのは、連れ合いが交通事故で大怪我をしてしまったためで、そんなことがなかったら、もっと頻繁に足を運んだことでしょう。そのくらいボリビアが気に入ってしまったのです。と言っても、観光客に一番人気のあるアルティプラノには私はまだ一度も行ったことがありません。高い標高が怖いことと(なにしろ大学卒業してすぐ登った富士山の頂上で大変な頭痛に悩まされ、早々に下ってしまった経験があるものですから)、そこへ行く必然性がなかったからです。

ボリビアのサンタクルス県へ行き始めたきっかけは、1996年にひょんなことから、1950年代に始まったボリビアへの沖縄移民と沖縄での米軍基地拡大との関係を調べることになったことです。ボリビアには沖縄県出身者から成るオキナワ移住地と、その他の県の出身者から成るサンファン移住地があります。サンタクルスからまっすぐ北上するとモンテロという町に着きますが、そこで道路は東西に別れ、東に向かうとオキナワ移住地、西のコチャバンバ方面に向かうとサンファン移住地があります。どちらもサンタクルスから100kmちょっと。私はいつも両移住地を訪れていますが、最初はオキナワ移住地で調査をしていました。が、そのことで論文を発表すると、ボリビアの日系移民について英語圏で研究している人がいなかったからでしょう、次第に日系人についてのいろいろな研究プロジェクトに誘われるようになり、しばしばボリビアに出かけることができたのです。それが2005年の3月で中断してしまい、もうボリビアの日系移民社会の研究には戻れそうもないと諦めかけていました。論文を発表し続けなければ、どんどん忘れられて行きますから。

ところが今年になって、カナダのモントリオールにあるカナダ建築センターという所から、プロジェクトに参加しませんかと声がかかりました。日系人農民のボリビアに与えた影響について書いてみないか、というのです。もちろん私はそれに跳びつきました。これでまたボリビアの日系人の方々と再会できる! 

ところが、そのときは山火事の延々と続く後始末の真っ最中。燃えてしまって切り倒したパームの木を1本1本数えて記録するという厄介な作業に手間取っていたのです。うずうずしていても、ボリビアへ行く時間がなかなかできません。おまけに保険会社とのやり取りにも手間取って、身動きできません。どうやらやっと時間ができそうだと飛行機の予約を入れても、2回も延期する羽目になり、原稿の締め切りを1週間延ばしてもらって、やっと出かけることができました。

行くことができて、本当によかった…

6年間の私の空白の間に、オキナワ移住地もサンファン移住地でも変化がいっぱいあって、新しいことをたくさん学んできました。両移住地では十二分に取材に協力していただいて本当にうれしかったのですが、長い間のご無沙汰で失礼していて少々気持が萎縮していた私なのに、 再会を喜んでくださった方々のお心には感激してしましました。もっともっと長く滞在したいと思ったほどです。でも、帰宅して1週間以内に原稿を仕上げなくては…

という次第で、予定通り帰宅し、原稿の締め切りにも間に合わせ、ホッとしたのですが、日系人農民のボリビアに与えた影響という限られたテーマからはみ出たものがいっぱいあって、それを皆さんにお知らせしないでいるのは何としても惜しい。そこで、特に心に響いたことを書いていこうと思います。

ところで、グーグルマップスで「Okinawa, Bolivia」と「Colonia Japonesa San Juan, Bolivia」と入力すると、両移住地が出て来ますよ。
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