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41 カウチポテトを夢見て
2007年5月6日
吉田 美智枝 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]

福岡県生まれ、横浜市在住。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在に至る。自作のアクセサリーをBeads Duoというブランドで販売しながら、韓国の主に女性たちについてエッセーを執筆中。『朝鮮王朝の衣装と装身具』(共著)、韓国近代文学選などの翻訳がある。
▲ アクリルビーズのネックレスとイヤリング。ところどころタイシルバーのスペーサーでビーズを挟んでいる。珊瑚風ビーズもアクリル製。
そのカウチを買ったのは、2年前、旅行で訪れたタイ・バンコクのある家具屋でのことだった。イメージどおりのカウチソファを見つけたとき、それに寝そべりくつろぐ自分の優雅な姿?(もとい、優雅なのはカウチである)を想像し、我ながらうっとりとした。

藤づるの皮で編んだ背もたれが、チーク材の台の3方をぐるりと囲んでおり、見るからにすわり心地がよさそうだった。そのどっしりとした安定感、夏向きの涼しげな素材、羽を広げたような優雅な形…買わないでいられようか…そんなリゾート風カウチを持つのが、長年の私の夢だったのだから…。

さっそく、日本で留守番をしてくれている姪に国際電話をした。2階への外階段(我が家のリビングは2階にある)と、ドアサイズを測ってもらうためである。海外から家具を持ち帰る際の注意点はなんといってもサイズで、海外の家具は日本製より一回り大きく存在感がありすぎるし、ヘタをすると家に入らない恐れがある。店頭で、サイズダウンしてくれることと重さを確認したし、輸送料も聞けば大したことはなかった。カウチの値段は、輸送料込みで約15万円。国内で輸入家具を買うことを思えば、そう高くはない。

人が誰しも予想するのは最良の結果、または最悪の結果だといわれる。だが、なぜか最良の結果しか予想しない(できない)のが私の悪い癖である。そして、一度決めたらなかなか軌道修正できないところも…。

カウチがやってきた。注文して約3か月後、船会社から船荷到着の連絡が入ったのだ。輸入書類の作成、倉庫から税関までの搬送、通関手続き、そして税関から家までの搬送…面倒な作業はすべて輸入業者に任せた。どう考えても、これらの作業を私一人でこなせるわけがなかったからだが、作業料金とトラック代を合算すると、カウチの値段はなんと倍になった。(もともと下調べを充分にせず買い物したのが間違いだった。)

問題は料金だけではなかった。ドアからカウチが入らなかったのである。あれほど何度もドアサイズに合わせて、店員からデザイナーにサイズダウンを確認してもらったはずだったが、サイズは元のまま(高さ95cm、奥行き80cm、長さ220cm)だった。60Kgといわれたカウチの重さも…そんなものではなかった。

あ〜あ、やっぱり…。注文したとき、一抹の不安がなかったといえば嘘になる。デザイナーが新たに作る手間を省き、店頭にあったのがそのまま送られてきたのだろうか。“マイペンライ(大丈夫)”のひとことで、なにごとも切り抜けようとするタイ人の融通性を思い出すと、怒り心頭に発した。かといって、送り返す訳にもいかなかった。

搬入作業はいうまでもなく大変だった。2階玄関とリビング入り口のドアははずした。大の男が4人がかりでなんとかカウチをコンテナから出し、斜めにしたり、縦にしたり…。玄関の石のたたきと鉄製の階段の上をゴリゴリ引きずり、壁にぶつけ…真新しい夢のカウチはその日、目の前ですっかり傷物となり、そして永遠に我が物となった。(盗もうという人間がいるかどうかは甚だ疑問だが、もしいたとしても運び出せないからだ。)

カウチポテトということばが流行ったのは、バブル時代であった。NYのような大都会のハードワーカーたちが、たまの休日に家にこもり、カウチに横たわり、ポテトチップスをほおばりながらひたすらテレビに見入る。これが、正統的カウチポテトの図である。

毎日が休・祭日の私がカウチポテトをしたらどうなるか。カウチの上のただのポテトになるのは目に見えている。だが、進むべき道はこれしかない。なにしろカウチポテトは、長年の私の夢だったのだから…。
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