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あなたに似た人 |
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2010年1月10日 |
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 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房、翻訳)などがある。現在、文化交流を目的とした十長生の会を友人たちと運営、活動している。 |
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▲ 冬の午後、陽の差す窓辺でビーズの構想を練る。心なごむひとときである。 |
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『デブラ・ウィンガーを探して』という映画がある。
女優、ロザンナ・アークェッドが監督したドキュメンタリー映画で、彼女は自分と同様にもはや若いとはいえない女優、元女優たち(デブラ・ウィンガーを始めとする)に自らインタビューすることで、彼女たちの中に自分と同じ悩みやこれからの生きる選択肢を探ろうとしていた。
それは、アメリカ映画産業において若くなくなった女優の起用の機会の少なさ、若いときでさえ画一的な配役しかないことへの悩み、現役を退いた後の自分との折り合いのつけ方などを聞き出すものであった。
この映画を観て、私は大学を出たばかりのころ読んだ『あなたに似た人』(澤地久枝著、文芸春秋)を思い浮かべた。
本の副題には「11人の女の履歴書」とある。さまざまな職業や芸術の分野で活躍する11人の女性たち(榎本美佐江、高杉早苗、長嶺ヤス子、澤田美喜など)が、その職業を選んだ理由や女性としての生き方を追ったものである。
若い私が、この本の、年齢も職業もまったく違うひとりひとりの女性の中に「自分と似た」部分を必死で見出し、そこから生きるヒントを得ようとしたように、著者である澤地さんはそれぞれ11人の女性たちの中に自分自身と似た部分を発見し、また作品の中に投影していっただろう。
私が数年前にこの欄で書いた『M.ハスケルを探して』(No7〜11)は、『デブラ・ウィンガー…』からちゃっかりいただいたタイトルであったことに気づいた方がいらっしゃるだろう。
女優ロザンナ・アークェッドにとってのデブラ・ウィンガーは、私にとってのハスケルであり、『あなたに似た人』の中の女性たちでもあった。
もちろん私が最初、ハスケルに興味をもったのは、彼女のジュエリーの特別な美しさや、彼女がコスチュウム・ジュエリーの第1人者であったことがきっかけであったが、調べていくうち、彼女の人生そのものに興味をもつようになった。
そして、彼女の弱さや老後を知るにつれ、彼女のデザインがもっと好きになった。
口幅ったいいい方で気恥ずかしいが、この2つの作品を通して気づかされるのは、人の人生とは、他の誰かに似ていて、逆説的ではあるが、同時に他の誰にも似ていない、たった一人のものだということである。
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