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僕の偏見紀行
197 ネパール出会い旅(6)僕らはVIP
2016年1月29日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ フェワ湖の人力フェリー。これで湖に浮かぶ小島へ渡り、そこの神様にお参りする。
▲ フェワ湖畔のこれまた人力の観覧車?木製手造り、回転させるには相当の力が必要。大の男2人がぶら下がって動かしていた。
▲ お祭りのおめかしをしてちょっとすましたイヌ君。写真を撮ったら、飼い主のオジサンから、イヌにクッキーを買ってやれ、といわれた。
ポカラはとてもいいところ、インドの過酷な旅に疲れたバックパッカー達が一息つきにやってくる、事前に入手した情報ではそんなところだった。来てみたらまさしくそうだった。

フェワ湖のほとりには、ホテル・レストラン・カフェ・土産物屋などが並び、観光客が集ってくる。湖面のはるか向こうの青空を背景に、アンナプルナ連峰が白く優雅な姿を見せている。湖岸の散策路を歩きつかれたら、眺めのいいカフェで一休みするのも悪くなかった。

僕らのホテルは湖岸通りから少し離れた静かな一角にあったが、周辺には食堂・カフェ・ランドリーなど必要なものが揃い便利だった。早速僕らはホテルに荷物を置いて町歩きに出かけた。欧米人の旅行者が目立ったが、通りの人出は思ったほど多くなかった。土産物屋をのぞくと、照明を落とし薄暗い中でオヤジが居眠りしていた。

若者がすれ違い様、いきなり僕にささやいた、いいハッパあるよ。明るい日差しの下をノンビリ歩いていた僕はちょっと驚いた。この僕が、いい年のジジイが、どう転んでも彼の顧客になりそうも無いのに、日本人はカモに見えるのだろうか。

こんなこともあるが町の雰囲気は悪くなかった。子供たちが駆け回り、暇そうな老人たちがおしゃべりを楽しむ光景をあちこちで見かけた。フェワ湖畔では、手作りの巨大なブランコや木製観覧車に地元の子供たちが群がって遊んでいた。

どこからか笛や太鼓の賑やかな響きが聞こえてきた。公園前の路上で人々が民俗楽器を演奏し踊っている。男も女も民族衣装を身にまとい、楽しそうだ。かたわらには大きな横断幕、ポカラは老人のシェルター、老人ホームへ寄付を、とあった。

ホテルに戻ると、チェックインの時に不在だったマネージャーが僕らを待っていた。英語が達者な長身の青年だ。彼は宿泊台帳を見せながらいった。あなた方はうちのVIPだ、希望は何でもかなえるから遠慮なく言ってくれ。

これまでいろんなホテルに泊まったけどこんなことは初めてだ。ジョークかとも思ったがそうではもなかった。確かに台帳にはVIPと書いてある。何でこんな事になったのか、思い当たるのはホテルの予約サイト。

このホテルを予約した時、決定ボタンを押すと、わずかな追加で部屋のグレードアップOK、と案内が表示された。ヒマラヤの見える眺めのいい部屋に泊ろう、そう思ってグレードアップしたのだった。

とはいえローカルの小さな三ツ星ホテル、但し口コミ評判はとても良かった。朝食付きツインルーム5泊の料金は331ドル、日本円では1人1泊4000円弱に過ぎない。この予約サイトではツインルーム一部屋いくらで売っているので二人で泊るとかなりお得感がある。

その結果このホテルの一番いい部屋に5泊することになり、VIP扱いになったのだろう。確かに案内されたのはバルコニー付きの広々とした清潔な部屋、広すぎるバスルームの端っこにバスタブとトイレがポツンとあった。幸いに熱いお湯がふんだんに出た。マネージャーによると、停電にそなえて自家発電装置があるので、お湯は心配無用ということだった。

ところでこのVIPルームは最上階にあった。ネパールでは大体そうだが、このホテルにはエレベーターが無かった。これは停電が多いことが理由らしいが、僕らは毎日5階までの階段を上り下りすることになった。ネパールではVIPになると足腰が強くなることが分かった。

このマネージャー氏、ほんとに何でも良くやってくれた。部屋に電気ポットが無かったので、たまには部屋でお茶を飲みたいと彼にたのんだ。するとたちどころに大きなお盆にポットをはじめお茶のセット一式を載せて運んできた。

そして、お茶が飲みたくなったらいつでも言ってくれ、すぐに用意するからと言う。。後で他のスタッフにきくと、足りないものはすぐそばにある彼の自宅から持ってきたらしい。

部屋のミネラルウオーターの補充を係りが忘れたことがあった。彼に連絡すると、彼自ら両腕に抱えきれないほど沢山抱えて来てくれた。これはうかつに彼に頼むとなんだか申し訳ないことになりそうだ。

朝食の時間を尋ねたときも驚いた。決まっていない、いつでいい、目が覚めて都合のいいときに来てくれという。これも初めてのことだ。

チェックイン翌日、早朝に目覚め食堂に行ったが誰もいない。待っていると奥から体格のいい青年が現れた。当直の警備員のようだ。彼は僕らがテーブルについているのを見て、一旦奥のキッチンに引っ込んだ。

警備員からウエイターに身なりを変えた彼が再び現れ、僕らに挨拶した後、タマゴの調理方法を尋ねた。彼はウエイター兼コックになったようだ。オーダーを済ませると、彼は最後に、イエス・サーといって頭を下げた。

やがて運ばれてきたのは、熱いミルク、トースト、コーヒー、ソーセージ、そしてサラダ。武骨に見えたが、彼の料理の腕はなかなかのものだった。それにしてもこの青年は良く働いた。昼間はフロントの手伝い、夜は当直、そして朝はウエイター兼コック。色浅黒くいかつい顔付の彼は一見強面だが、立ち居振る舞いの優雅なゼントルマンだった。

毎朝どんな時間に食堂に行っても、彼がにこやかに現れ手早く朝食を用意してくれた。たしかに朝食は、僕らのお好みの時間、だったが、僕らの顔を見て用意するので若干待たされるのが難点だった。

マネージャーやこの青年に出会って、新築であることを除けばごく普通の、とりたてて豪華でもないこの小さなホテルの口コミ評判がいい理由が分かる気がした。

僕らは、ポカラ滞在中、ヒマラヤを眺めようと郊外の山岳ホテルに1泊することにしていた。ホテルの予約は済ませていたが、往復の手段は未だ決めていなかった。マナージャーに相談すると、早速あちこちに電話をかけ始めた。

暫く電話でやり取りした後、彼は僕らに手配完了と告げた。石油不足でポカラでもタクシー料金が高騰しており、山岳ホテルと直接交渉したらしい。タクシーだと往復60ドルが今の相場らしいが、これは高すぎるので先方のホテルに40ドルで送迎を依頼したという。

到着初日の夕食はマネージャー推薦のレストランに出かけた。真新しいショッピングビルのそこは若者たちで賑わっていた。料理はいずれも美味しかった。中華風インド料理といったおもむきの料理は、いずれも想像した倍以上の量があって、もったいないが食べ切れなかった。

帰り道、あちこちで子供たちのグループがいろんなお店の前に集り、口々に何か叫んでいるのに出会った。秋が深まりポカラでもヒンドゥーのお祭り、ティハールが始まっていた。

祭りの間、子供たちは連れ立って家々をまわり、お菓子やお小遣いをねだる。これはこの時期に数日間にわたって行なわれる収穫を祝う祭りだという。そういえば花輪を首飾りにした犬がいたけど、あれもそうかなあ。(続く)
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71 小笠原の旅(1)波路はるかに
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69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
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42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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