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残すか、捨てるか |
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2007年12月24日 |
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 | 中山 俊明 [なかやま としあき]
1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。 |
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▲ 写真を整理していたら、昔の恋人とのツーショットが出てきた。というのは冗談で、取材で会ったジュディ・オングさんと。筆者38歳くらいか。こういう写真が出てくるから1枚1枚チェックが必要。 |
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▲ 廃材利用で作った本棚に、とにかく本を並べる。これから、残す、売る、捨てる、分類です。 |
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10月半ばに現在の家に引っ越してきていらい、整理の日が続いている。長くてあと半年か1年の仮住まい、たぶん、もう一度引越しをすることになる。
この先、住まいのことはどうなるか分からないのだが、とにかくこれを期に身辺荷物の大整理をすることにした。いまここで整理をしておけば、次の引越しが楽になる。また一方で、もし自分もしくは妻の身に何かあったとき、子供たちに迷惑をかけないよう「この際、持っていても次世代に残す必要のないものは思い切って処分する」という決意を固めて整理にのぞんでいる。そういう年齢になった、ということか。
まずは写真。かつてプロカメラマンという職業柄、普通の家庭に較べると写真が多い。アルバムだけでも30冊以上、その他、整理しないまま残されているプリント、ネガがダンボールやプラスチックケースに数箱。ひと頃、写真をスキャンしてデータを残す、そしてアルバム廃棄という方針を妻が立てたが、ほとんど実行されないまま年月が流れた。ならば、アルバムはそのまま残す、ただし、重いから、小さめのダンボールに小分けし、表書きをつけていく、という方針を立てた。箱の数は増えるが、持ち運びが楽になる。
整理されていないバラ写真は、捨てるもの、残すものをより分け、それぞれダンボールに放り込んでいく。ネガはすべて廃棄。だが、基本方針「大胆に、躊躇なく捨てる」が作業開始直後から揺らぐ。処分箱を妻がいちいちチェックし、僕が捨てた写真をまた拾い出し、「残し箱」に移しかえるのだ。そのつど夫婦喧嘩が始まる。だが、潔く捨てる覚悟で臨んでいる僕自身も、そう大胆には捨てきれない写真のほうが多い。1枚1枚、思い出に浸り、それやこれやで、時間を浪費するばかりだ。
次は本だ。前の家のベランダを解体しその材木を再利用してまず収容する本棚をつくった。ベランダは10年前、隣家が建て替えで家を解体するときいただいたアメリカ杉の板材を再利用して作った。ドイツ製の防虫・防腐塗料をきちんと塗っておいたせいで、雨露にさらされていたにもかかわらず、まったく傷んでおらず、「これだけお役に立って幸せな材木ですねえ」と娘がいうほど、立派な本棚に変身した。
その本棚に、なにも考えず、とにかく本を並べていく。並べる前に分類にはいるとここで時間を浪費する。背表紙が見えるように、なにも考えないでとにかく並べる。スペースが足りなくなったら、後ろ単行本、前、文庫本と2列に並べる。こうしておけば後ろの単行本の背表紙の一部が見える。一覧性を高めておいて、そのあと一気に整理にはいる、という作戦だ。
本を整理するに当たっても基本方針を立てた。これぞという本以外は原則処分。「これぞ」というのは、子供、孫がいつか読むかも知れない(たぶん読まないだろうが、読んでほしい)本。結局残るのは僕の好きな、藤沢周平、吉村昭、城山三郎等有名作家の小説だけなるかも知れないが、とにかく時代を超越して残る本は残す。もっともこの方針に従うと、残るのは10分の1くらいになってしまいそうだが、方針貫徹。
人さまからいただいた贈呈本は残す。自分が出版した本に署名して知人に贈った本を古本屋で偶然見つけた友人がいて不愉快な思いをしたことがあるので贈呈本の処分には注意がいる。しかもその本には、贈呈相手の氏名まで書いている。その知人はすでに亡くなられているので、たぶん遺族が本を一括処分されたのだろう。
処分する本にも2種類。ブックオフに持ち込んで、売る。売ってもたいした値段にならないことは分かっているが、もういちど誰かに読んでもらえれば、本にとっても幸せ。残りは町のごみ処理センターに持ち込み古紙として再利用してもらう。コンピュータ関係のノウハウ本、泡沫のように消えてしまった実業家の本、古い辞書等。
残るは、経営する会社関係の書類だ。5年以上前の書類は基本的に処分、これは法律で破棄が認められているので、作業はシンプル。それはそれでいいのだが、問題は書類を綴じているファイル。この量が半端じゃない。プラスチック製あり、紙製あり、両者の混合物あり、しかもほとんどすべてに鉄製の金具がついていて、この取り外しがとてもやっかい。このファイルの整理がおわれば一段落だが、意外と時間がかかりそうだ。
そんなこんなで整理の日が続いているが、身辺なにやらすっきりしてきて気分がいい。身軽になって新年を迎え、来年は創造的な仕事に目を向けたい。
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