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133 マカオ今昔 その3
2014年2月13日
齋藤 恵 齋藤 恵 [さいとう・さとし]

1948年埼玉県生まれ、1970年に大学卒業後、時計メーカーの輸出部門に就職。8年間の勤務の後、宮仕えには向かない自身の性格を認識して、父の経営していた小売店 (創業1912年 = 大正元年)に転身しました。歴史、風土、絵画、言語等に関心が強く、駄文ながら文章を書くことがストレス発散の手段のひとつになっています。ささやかながら、会社を経営するというのはそれなりにたいへんです。ここに書かせていただくことは、そうしたストレスの大いなる発散のためですので、お読みになる方もどうぞお気軽に。
マカオの産業と言えば極めて単純です。カジノおよびそれに連なる観光産業がほとんどすべてを占めているからです。領土面積の狭さもあり、農業はほぼ皆無です。漁業もかつては漁村であったのは事実ですが、外部へ輸出するほどのものはありません。製造業は香港や中国本土に比べたらほとんどないに等しいのですが、一応、織物、衣類、花火に加えて、最近では玩具や造花、電子機器の製造も始まっているようです。それにしても金額的にはたいしたものではありません。ですから、カジノが主たる収入源なのです。

ちょっと古くて恐縮ですが、世界銀行の統計によると、2009年のマカオのGDPは約186億米ドル(約1.5兆円)でした。日本で言うと、人口が約60万人と最も少ない鳥取県の県内総生産に近い金額です。(鳥取県の県民総生産は約2兆円)

ただし、カジノからの税収が潤沢であるため、マカオ市民は教育、医療費は無料です。公式な統計はないのですが、GDPの40%程度、政府歳入の70%程度は、カジノに依拠すると推測されています。

ところで、マカオにはいったい、いくつくらいの正式な賭博場=カジノがあるのか気になりましたので、ちょっと調べてみました。詳細はもちろん不明なのですが、資料で手に入った主なものだけでも、下記の29のカジノがありました。(この他に正式ではない、非公式や闇カジノもあるようです。)

1) Casino Lisboa(リスボア − 葡京娯樂場)
2) Grand Lisboa(グランド・リスボア − 新葡京娯樂場)
3) Galaxy(ギャラクシー・マカオ − 澳門銀河)
4) MGM Grand Casino(MGMグランドカジノ − 美高梅金殿娯樂場)
5) The Venetian Macau(ザ・ベネチアン・マカオ − 威尼斯人娯樂場)
6) Casino Babylon(バビロン − 巴比倫娯樂場)
7) Casino Wynn(ウィン − 永利娯樂場)
8) Casino Jai Alai(ハイアライ − 回力娯樂場)
9) Casino Rio(リオ − 利澳娯樂場)
10) Casino Oriental(オリエンタル − 東方娯樂場)
11) Casino Sands(サンズ − 金沙娯樂場)
12) Casino Kingsway(キングスウェイ − 金域娯樂場)
13) Casino Grand Waldo(グランドワルドー − 金都娯樂場)
14) Casino Kam Pek(カムペック − 金碧娯樂場)
15) Casino Golden Dragon(ゴールデンドラゴン − 金龍娯樂場)
16) Casino Star World(スターワールド − 星際娯樂場)
17) Casino Casa Real(カーサリアル − 皇家金堡娯樂場)
18) Casino Marina(マリーナ − 皇庭海景娯樂場)
19) Casino Emperor Palace(エンペラーパレス − 英皇宮殿娯樂場)
20) Casino Taipa(タイパ − 海島娯樂場)
21) Casino Fortuna(フォーチュナ − 財神娯樂場)
22) Casino Waldo(ワルドー − 華都娯樂場)
23) Greek Mythology(ギリシャ神話 − 希臘神話娯樂場)
24) Casino Macau Palace(マカオパレス − 澳門皇宮娯樂場)
25) Grand View Casino(グランドビュー − 君怡娯樂場)
26) Pharaoh’s Palace Casino(ファラオパレス − 法老王宮殿娯樂場)
27) Casino President(プレジデント − 總統娯樂場)
28) Ponte 16(ポンテ16 − 十六浦娯樂場)
29) Casino Diamond(ダイアモンド − 鑽石娯樂場)

蛇足ですが、香港やマカオでは、しばしば名称にアルファベット名と漢字名が併記されますが、漢字表記には意訳(意味から取った文字)と音訳(音から取った文字)があります。いつも感心するのですが、その漢字ネーミングの妙技(と言える水準だと思います!)には、さすがに漢字の国だと思います。

たとえば 1) の「リスボア − 葡京 」は意訳です。ポルトガルの国名を漢字では「葡萄牙」と書きますので、その首都・リスボン(リスボア)は「葡」国の「京」なのです。

その一方、5) の「威尼斯人=ベネチアン」、6) の「巴比倫=バビロン」、9) の「利澳=リオ」などは音訳です。それにしても、当て字ながら、なかなか意味深い文字を使っていると思います。

ところで、1) と 2) の2つは、「その2」に書きました、スタンレー・ホー氏が率いる「Sociedade de Turismo e Diversões de Macau,S.A.(STDM - 澳門旅遊娯楽股份有限公司)」が経営する老舗カジノです。(スタンレー・ホー氏は、その他多くにも、多かれ少なかれ影響力を持っていると思いますが・・・)

実はかつては、このホー氏の組織がマカオにおける賭博産業を独占していたのですが、2002年に国際的に開放され、入札制度がスタートしました。これはちょうど中国の経済発展による中国人観光客の激増というタイミングにぴったり合ったこともあり、その後のマカオの急速な発展の原動力となりました。

香港からの「ギャラクシー・カジノ(銀河娯楽場)」社、そして、アメリカからの「ウィン・リゾーツ(永利渡暇村)」社が大規模な投資を行い、とてつもない規模のカジノ、ホテル、モール等がぞくぞく誕生し、現在のような巨大なカジノ・シティが短期間に出来上がったのです。

埋め立てをする際にも、かつては大型船の入港を困難にした珠江から流れてくる土砂は、逆に埋め立てを楽にしたことと思います。まったく何が幸いし、何が不都合をもたらすかは時の経過で、しばしば入れ替わるものですね。

人口が60万人足らずのマカオを訪れる観光客は、2000年に800万人ほどだったとのことですが、2005年には2倍以上の1900万人にふくれあがりました。この増加の原因は、ほとんどが中国本土からの旅行者です。現在ではそれをさらに上回っていることは確かですので、年間2千万人以上の人が毎年マカオを訪れているのです。

2006年にはマカオのカジノの売上が69.5億米ドルとなり、同年のラスベガスの売上推計、65億ドルを初めて上回りました。つまりマカオが世界一のカジノ・シティになってしまったのです。

カジノ市場の対外開放からわずか4年でカジノ都市として世界の首位になってしまった背景は、発展する中華人民共和国の経済からあふれ出る「チャイナ・マネー」と、新たな市場であるマカオの国際カジノ産業に流れ込む外資があると思われます。

今回、私と妻が香港からマカオへ行ったのは、火曜日でした。祝祭日でもなんでもない、普通のウィークデイでした。ところが驚いたことに、覗いてみたカジノは、どこも満席。平日の昼間から、満杯状態でした。そして客は、見る限り、ほとんど中国人。欧米系や日本人らしき客は、ついに全く見かけませんでした。

カジノには18歳という年齢制限があるだけで、賭博をやろうがやるまいが、誰でも自由に入場できます。もちろん入場料などもありません。ギャンブルが苦手な私達は、カジノでもギャンブルをやることは一切ないのですが、その実情には大いに関心がありましたので、数ヶ所のカジノを覗いてみましたが、ともかくその賑わいとパワーに圧倒されました。あとで少し冷静に考えてみて、特に強く感じた点を整理してみましたら、こんな感じでした。

1)ともかく、北京語を話す中国本土からと思われる人々であふれかえっていました。皆、例外なく元気で賑やか。お金をどんどんつぎ込んでいる様子がはっきりわかりました。

2)カジノに興じている人々の内、女性の比率が想像以上に高かったこと。感触としては、4割くらいが女性でした。私達が何度か覗いたモナコでは、もっとずっと低い比率でした。

3)当日は火曜日の午後でしたが、ともかく満席。スタッフに週末はもっと混雑するのか聞いたら、いつでもこんなふうだと答えていました。

4)日本風にいう1階はホテルロビーなのですが、一部のカジノでは1階の一部から既にカジノになっていました。2階、3階と上がっていくにつれ、ミニマム掛金が上がっていく雰囲気がわかりました。私達が入れなかった最上階の個室形式のフロアのことはわかりませんが、どこも客であふれていました。

5)カジノは24時間営業。そのため、ロビーに入った瞬間に外界を忘れさせるような大がかりな仕掛けがふんだんに、しかも大胆にありました。

6)豪華なカジノほど、内部に設営されているレストランやカフェが、当然ながら立派なのですが、そこでの食べ物や飲物の値段が意外に安かったこと。しかも食べ物の水準はかなり高かったのです。結局、ギャンブルをしない私達には、これが最も大きなメリットだったのですが、マカオでは食事は一流カジノ内のレストランですることが賢明だと知りました。事情に詳しくない街中で飲食する店を選ぶのはリスクがありますが、カジノ内なら、安全、清潔、立派、それに安価だとわかりました。よろしければご参考に。

さて次回は最終回で、カジノと、それを支配してきたキーパーソン、スタンレー・ホー氏について書かせていただきます。

上の写真は上段から順に以下の通りです。

上段: グランド・リスボア(新葡京娯樂場)の偉容。3つある巨大ビルの右端がグランド・リスボアです。この中のレストランで食べたオーダーメイド形式のサンドイッチは驚くほど安価で絶品でした。

中段: ヴェネツィアにあるサン・マルコ寺院の鐘楼そっくりの建物が見えます。これが、ザ・ベネチアン・マカオです。内部には運河やゴンドラを含め、ヴェネツィアの風景が再現されています。

下段: 香港資本の巨大カジノ、ギャラクシー・マカオ。ギャンブラーのためのディズニーランドのような風景が建物の内外に広がっていました。

カジノの常で、カジノ内部の写真撮影は厳禁ですので、外からの写真になってしまいましたが、ご容赦ください。
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