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葉山日記
90 同窓生
2007年11月17日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
▲ 切り倒したカイヅカイブキの残骸。右後方に見えるのは作業の合間に、壊した窓枠で作りつつある温室。
▲ 根元の太さ30センチのカイヅカイブキの大木をチェーンソーで5本、切り倒した。しかし大変なのは、むしろその後始末の方。
▲ 左がYさんで右が妻。2人の組み合わせが逆だったら、人生はどうなっていただろう。
「奥さんを大事にせないかんよ」
「やさしくしてあげにゃいけんよ」

九州から中学3年時代の同級生Yさんが、我が家に遊びにやってきた。還暦をすぎて歳はとったが、相変わらずの美人である。4、5年前に病気の夫を亡くし、50代半ばで未亡人になった。「近所に住む娘が一緒に住まんね、と言ってくれるばってん、気ままなひとり暮らしがよか」。近くのアウトレットでパート勤めのあいま、ときどき東京に息抜きに出てくる。都内の観光地もあらかた行きつくしたので、今回は葉山を見てみたい、とはじめて我が家を訪ねてくれたのだ。昔から声が美しいひとだったが、それも変わりがない。実はYさんは僕にとっては単なるクラスメートで、同じクラスにいた妻の方の親友だ。とうぜんながら、今回も僕にではなく、妻に会いにきたのである。

父の倒産で夜逃げ、九州行きの夜行列車に両親と3人の子供たちが乗りこんだのが、僕が中学2年の4月23日。なぜ日付まで覚えているかというと、その日が僕の誕生日だったからだ。よりにもよって長男の誕生日に夜逃げを計るなどとんでもない親である。都落ちした先は、母の実家があった筑後川沿いの「福岡県浮羽郡田主丸町」という、いかにも田舎くさい名前の小さな町(実はとても美しいいい町なのだが、当時の僕にとっては唾棄したいようなどんくさい町名だった。現在は久留米市に合併)。それから約1年後、職を得た父とその一家が再転居したのが久留米市。その転校した中学3年のクラスにいたのが、わが妻やYさんだった。

横須賀線で到着したYさんを出迎え、3人で海岸沿いの道路を南下して、僕のお気に入りの海の見えるレストランのテラスで食事。ぜひ海辺を歩きたいというので、僕が車で待機する間、2人は御用邸近くの砂浜をしばし散策。そしてわが家へ。台所で女たちのおしゃべりが続くあいだ、僕は庭でパチンパチンと植木バサミで木の枝を切る。絶好の秋日和、時間がもったいない。女たちの四方山話などにつきあっていられるか。

Yさんは単なるクラスメートと書いたが、よく考えてみると、実は僕が最初にお熱をあげたのは妻ではなくYさんの方だったのだ。これは妻公認の事実なので、書いてもかまわないのだが、そうだ思い出した、そうだったのだ。Vサインで微笑む2人をレンズ越しに見ながら、少しばかり妙な気分になった。もし僕が、妻の横にいるもう一人の女性の方にプロポーズしていたら、その後の3人の人生はどうなっていたのだろう。高橋英樹が好きといっていた彼女だから、あっさりふられていたかもしれないが、まんいち僕と結婚していたら、彼女はこの歳で未亡人になることはなかった。一方、わが妻は地方都市の医者かなんかと結婚して、亭主の人生に振り回されることなく、ましてやお金の苦労もなく、静かな人生を送っていたかもしれない(本当かどうか知らないが、本人の話ではそれに類する見合い話がどかどかあったらしい)。

次第にあたりは暗くなり、Yさんを駅まで送る時間になった。車中でも、あまりYさんが、「大切に」「大事に」を繰り返すので、女2人の会話の中では、さぞかし妻の口から僕の悪口が出たのではないか、と危惧したが、見送ったあと妻に聞いてみると、「あなたのことはほとんど話題にもならなかったわねえ」とつれない。「実は彼のプロポーズを待っていたの。でもあなたにとられちゃった」「へえ、そうだったんだ。私ってラッキー」とか、少しはそんな話が出てもおかしくないはずなのだが、つまらん女たちだ。

もっとも中学、高校時代の僕といったら、ガリガリにやせていて、見るからに神経質そうで、とても女の子にもてるタイプではなかった。それに東京弁が抜けきらず、「なんば言いよっとかあ」「どげんかせないかんばい」という乱暴な九州弁が飛び交う仲間たちのあいだでは浮いた存在だったに違いない。両親のあいだにもいろいろなことがあって、僕にとっては憂鬱な高校時代だった。当時の僕はさぞかし暗い目をしていたことだろう。写真部の部室だけがこころ安らげる場所だった(そのクラブのすぐの先輩、すぐの後輩がそろってこの研究会インフォネットの会員で、いまでも深いおつきあいをさせてもらっているのも、けして偶然ではない)。

そういう暗い高校時代だったので、これまで同学年の同窓会(関東地区だけでで30-50人が集まり毎年開催)に誘われてもなにかしら気が進まず、とはいえ裏方で熱心に事務局長をつとめる友の努力にほだされて、ときどき顔を出すものの、やはり気分が乗らない、という状態が続いた。ところが今年は僕らのクラスが幹事役で、おまけに司会までおおせつかったものだから、僕の行きつけの代々木駅近くの瀟洒なレストランを会場に設営し、やや積極的に動いた。

あいさつで、この会の掲示板にも書いたが、「肉体派宣言」の話をした。「ここ4、5年、会社経営が苦しく、精神的にも金銭的にも悶々とする日が続いた。でも、この夏は毎週末海で泳ぎ、秋になって連日カイヅカイブキの大木と格闘するうちにふとあることに気がついた。自分は頭能労働ではなく、肉体労働に向いている人間だということに。いったんその簡単な答えに気がつくと、あれ不思議なことに気がずいぶんと楽になってパワーがでてきた。庭仕事でここ1ヶ月でベルト穴4個減らした」というような話だ。正直に話した分けっこう受けた、ように思う。ウェストを10センチ減らした話には、特に女性の歓声があがった。

同窓会はぶじ終了、さっそく翌日、一緒に幹事をやった友人からメールが来た。高2年で生徒会長をやり、某地方有名大学を卒業し、最近まで某大商社の幹部をつとめた、超まじめ人間だ。本人に事前に許可をもらってないが、まあ同窓のよしみで私信紹介を許してもらおう。そのまま紹介しないと、彼のまじめさ、軽妙かつ皮肉屋っぽい性格などが正確に伝わらないのだ。

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昨日は大変素晴しい司会をして戴き有難う御座いました。お蔭様で大変楽しい雰囲気の同窓会が出来、楽しい一時を過ごすことが出来ました。又、早速写真3葉お送り戴き有難う御座いました。明らかに卒業してから時間が経ったなと改めて感じました。ところで昨日の貴兄ご自身の最近の報告にややご自身のことに関し誤解があったようなので以下、連絡致します。即ち、貴兄は木を切ったら自分が肉体労働者に向いていて知的労働者ではないということが分かった等とお話されたと記憶しておりますが、そうではないのだと思いました。肉体労働も知的労働も出来るタレントがあるということが分かったというのが正解ではないでしょうか。尤もより正確にいうと、全く余計なお世話ですが、知的労働は出来ても商売が上手で儲かったかどうかは存じませんが。では又。

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読みながら思わず吹き出し、そしてたまの同窓生との再会も悪くないもんだな、としばし幸福な気分になった。
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