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かくてありけり
35 再び転勤
2005年12月24日
沼田 清 沼田 清 [ぬまた きよし]

1948年、新潟県生まれ。千葉大学工学部卒業。2008年、通信社写真部を卒業、以後は資料写真セクションで嘱託として古い写真の掘り起こしと点検に従事。勤務の傍ら個人的に災害写真史を調べ、現在は明治三陸津波の写真の解明に努めている。仕事を離れては日曜菜園で気分転換を図っている。
 10月初めに大阪から東京に舞い戻った。大阪はわずか1年8カ月の在勤であったが、事件、事故、災害、スポーツなどニュースが盛り沢山で、刺激に満ちた日々を過ごした。本社から支社へ、そして本社へ戻る往復パターンを、これで4回こなしたことになる。4回目の「おつとめ」を終え「やれやれ」と言いたいところだが、そうは問屋が卸さなかった。異動先は資料写真と写真データベースを扱うセクションであった。

 実は夏ごろから、来年初頭の転勤を想定して、定年まで残る2年余りをどう過ごすか皮算用していた。職制には大きく分けて管理職と専門職がある。職制になったら人事異動などめぐり合わせでしかないのだが、それでも願わくば、次の異動は専門職としてやれるところがいいなあと思っていた。管理職は部下を持ち、業務全般だけでなく人事や予算などの管理をやらなくてはいけない。生身の人間を抱えるのは大変な労力が要る。惜しみなく時間とエネルギーを奪ってくれるのだ。

 それよりも自分の専門分野で、自己完結することを思い描いていた。自分ひとりの始末を付けていれば済むところなら、少しは時間的余裕が生ずる。残された時間を目一杯、自分のスキルアップと家族のために使いたいと思っていた。今回の異動を飛行機にたとえるなら、太平洋横断飛行をほぼ終えて徐々に高度を下げ着陸態勢に入ろうとしていたのに、燃料があるならもう少し先まで飛べといわれたようなものだ。

 20代に始まって10年ごとに1往復ずつ。就職してからの引越しは都合12回を数える。2回目と3回目は家族ぐるみの転勤であった。3回目は学齢期の子供たちに随分負担をかけた。そんなとき一体転勤なんて必要なんだろうかと思ったこともある。転勤がなかったら社員も会社も負担が少なくて済むだろうにと。しかし年齢が上がるにつれ考えは変わってきた。さらに今回、異動と無縁の職場に来て、一層強く実感された。転勤は組織の活性化に不可欠なのだ。

 一つところに留まると水も空気もよどむように、組織もよどみ、沈滞し、活力が低下していく。この道一筋にン十年というと聞こえはよいが、誰しもマンネリ化は避けられない。その危険性に気付く人は積極的に外に出る。他流試合で自分を磨く。職人の世界、例えば料理人なら、有名店の後継ぎは他の有名店へ修行に出される。世間の風(ふう)を学び視野を広げるために必要な道程なのだ。
 
 異動して約3カ月間、新しい職場をじっと観察してきた。同一職場に20年、30年いる人が多く、業務を熟知してはいるようだが、どうも視野が狭く、サービス精神に欠ける。何かと前例踏襲を言い、自己流の部外では通用しないローカルルールに閉じこもっている印象が強い。外へ出た経験がないので世間相場が分からない。まさに「井の中の蛙大海を知らず」だ。すでに「ゆで蛙」状態の人もいる。
 しかし中には外に出ても通用する人もいる。その差はどこからきているのだろうか?尋ねてみたら、社内横断的なプロジェクトチームに駆り出された経験があった。部外の荒波にもまれて、他部のいいところも悪いところも見聞きしてきた。それで視野が広くなり高い相場観を持っていた。

 ところで「井の中の蛙」には「されど天の高きを知る」という対句があるのだという。今の職場に一筋の希望があるとすれば、それは若い世代がどうやら天の高さに気付いていることだろう。ここからさらに大海の広さを経験させることが、私に残された務めの一つと思う。来年は、葛藤もあるだろうが、刺激的な年になりそうだ。
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