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僕の偏見紀行
240 ベトナム、あれから8年(2)トゥボン川のほとりで
2018年7月31日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ プールサイドでヤシの実採り
▲ 部屋のベランダで、市場で買って来たマンゴーと竜眼を食べる。
▲ ホテルの庭先からトゥボン川を眺める。
翌日ホーチミンからホイアンへ移動した。ホイアン最寄りの空港はダナン、かつてのベトナム戦の激戦地だが、今はそんな面影はない。近年、空港は拡張工事が続いている。空港に待っていたホテルの車に乗り込んだ。

ダナンは今や国際都市として目覚ましい発展を遂げた。白砂のビーチ沿いにはリゾートホテル始め国際会議場始め、高級マンションが立ち並び、今なお新たな建設が進んでいる。激しい戦いが終わってもう43年も過ぎたのだ。初めてダナンへ来たのは6年前、当時は未だ空港は閑散としており、海沿いには手つかずのビーチが広がっていた。

車は1時間ほどでホイアンへ着いた。街の郊外は今も青々とした水田が広がり、水牛を追う農夫の姿が見える。最近はその風景の中を自転車で走る観光客が増えて来た。欧米人が多いが、彼らは本当にタフだ、どこへ行っても炎天下を平気で自転車をこいでいく。

ホテルへ到着、顔見知りのスタッフがいつもの部屋を用意して待っていた。親しくなったホーさんの顔も見えた。僕らを見つけ笑顔を見せてくれたがちょっといつもと様子が違って見えた、どうしたんだろう。昨年は顔を見るなり、スペシャルディナープランの売り込みが始まったのに。

部屋はいつものリバービュー、庭のヤシの木越しにトゥボン川がゆったりと流れている。1年ぶりにベランダから川を眺める。懐かしい眺め、この1年もあっという間に過ぎたなあ。年とともに時間の流れが早くなり、気づいてみれば、僕はもう人生という回り舞台の端っこに立っている。

例年と比べ、ホテル内が賑やかだ。例年欧米系に比べてアジア系は少ないが、今年はアジア系の集団が目立つ。言葉の端々から韓国の人々だと分かった。幼子を連れた若いカップルが多い。

ホテルのプールで楽し気に水遊びをする子供たち、それを嬉し気に眺める若いパパとママ。いつみても心和む光景だ、こちらまで喜ばしい気持ちになってくる。ホントに子は宝だなあ。

それにしても、子供たちの装備というかファッションが凄い。ゴーグルにつば広帽子、そしてサーファーもどきのカラフルなTシャツに救命胴衣まで、そんなフル装備で浮き輪で浮いている。

この様な幸せに満ちた家族の光景を見る度に僕は思う。人間はみんな同じ、どんな国の人たちも個人として向き合えば僕らと何ら変わらない。どこの国の人も、困っている人には親切だ。僕も随分あちこちで助けられた。旅行者が困っていればどこの国の人も気軽に手を差し伸べる。

勿論どこでも、善人と悪人がいる。日本だって怪しいところへ行けば危険が待っている。我が国はおもてなしをことさら自慢しているが、どの国にもその国の文化や習慣に基づいたおもてなしがある。

ところがそんな人々が、ひとたび国家や企業等の一員として個人と向き合う時、組織の論理を優先するようになる。これはわが国に限らず、他の国でも同じ傾向にある。

プールサイドのヤシの木にはしごが架けられ、ホテルのスタッフが登っている。親方が下からあれこれ指図している。見上げるとヤシの実がいくつも幹にぶら下がっている。

ほっておいて熟した実が落ちたら危ない。だからこうやって時々採るんだろう。これを冷やして飲むととてもおいしい。衛生的で値段が安いので、あちこちでお世話になった。大体1個100円前後、炎天下でこれを飲むと生き返る思いがする。

ホーさんの様子が変な理由が分かった。支配人が昨年と変わっている。多分それで方針が変わったのだろう。前任者はいかにもやり手といった感じで、いろんなプランでキャンペーンを打っていた。

レストランのホーさんもその売り込みに励んでいた。ところが今年はそんな動きがない。しつこいのも困るがなしのつぶてもちょっと淋しい。

そう思っていたら朝食の時、支配人が僕らのテーブルへ挨拶に来た。そして言葉少なにお礼を述べ、ディナーへの招待状を差し出した。ぼくらはここ数年毎年同じ頃ここへ来ている。それでお得意様となったようだ。通うだけで大してカネも遣わないのにVIP扱いされ、ちょっと気恥ずかしいが悪い気はしない。

今度の支配人は前任者に比べて口数が少なくシャイな感じがする。中年の温厚で朴訥な人だ。部下にいうより、自分で先に動くタイプのようだ。それでホーさんも張り合いがなくなったのだろうか。

早速その夜、このディナーを頂くことにした。スープからデザートまでのベトナム風ディナーは大変結構だった。僕らの他にも中東系とみられる年配の夫婦も招待されていた。ということは特別に僕らだけがVIP扱いされたわけでも無い様だ。

僕は特にこのホテルの場所が気に入っている。旧市街からトゥボン川にかかる橋を渡った小島の奥、トゥボン川に面した静かな一角にホテルは建っている。ホテルの庭から行き交う船を眺めるのはいい気分だ。

ここの夜明けは市場へ向かう小舟のエンジン音で始まる。夜明け前、ベッドでまどろんでいると、遠くからタンタンタンという軽快な音が聞えてくる。これが何とも心地いい。(続く)
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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64 インド紀行(1)遠かったインド
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62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
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60 南会津の旅 弁愡浚村)
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42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
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33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
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28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
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24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
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5 雨の幕川温泉再訪記
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