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僕の偏見紀行
228 またもやベトナム(8)旧市街の娘たち
2017年9月19日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 大勢の若者が働く1階の工房、ここでは主に陶器や金属関係の作業が行われていた。
▲ 熱の入る布地選び、親切な売り場の娘さんと。
▲ 中庭の縁台でくつろぐメアリー。寝てるふりをしながらちゃんと僕を意識している。可愛いけどちょっと憎いヤツ。まあ、これがネコなんだから仕方ないか。
ホイアンの旧市街に行く度に僕らが立ち寄る土産物工房がある。伝統工芸品を今風にアレンジした雑貨・小物類を製造販売している。僕らはそこでちょっとしたお土産を買うのを楽しみにしている。

通りに面した、古びた木造2階建ての町屋を入ると、内部は今風に改造されており、洒落た小物等が並んでいる。金細工を施した陶器の茶碗、伝統模様の布地や紙を使った壁飾りなど珍しいものが多い。店内はやや薄暗いが、並んでいる品々の鮮やかな色彩がスポットライトに映えて美しい。

ベトナムの風情豊かな品々は、いずれも外国人観光客が喜びそうなものばかり。ご多分に漏れず、うちのカミさんもすっかりここが気に入り、滞在中ほぼ毎日通ってしまった。

売り場の奥は小さな庭になっており、鉢植えの花や古びた木製のベンチがひっそりと置かれている。庭の上は吹き抜けで、2階の回廊からも庭を眺める仕組みだ。庭の向こうは大勢の若者が働く作業場となっている。この作業場は裏手の通りに面し、へそのまま通りに出ていける。

これがホイアンの伝統家屋の特徴なのか、間口は狭いが奥の深い2階建ては2つの通りにまたがって建てられ、優に通常の家屋2軒分の大きさがある。古くから東西貿易で栄えたホイアン商人の財力は思い知る。

洋品店、レストラン、カフェなど他の店舗も同様で、見た目は古びた木造家屋なのに、一歩足を踏み入れると意外に最新のインテリアだったりして驚かされるが、それも街歩きの楽しみの一つといえる。

毎日通ったので、僕らは売り場の娘さんともすっかり顔見知りになった。今回もカミさんはきれいな布地をあしらった小物をいくつか購入した。さらに彼女は材料の布地も買いたい、と担当の娘さんに相談した。手芸好きの嫁へのお土産にちょうどいいと考えたらしい。

商品の材料を分けてほしい、という相談は少ないのだろう。当初担当の娘さんは、家内のリクエストの意味がよく分からなかった様だが、その意図を理解すると快くそれに応じてくれた。

布地は2階の作業場にあるということで、僕らはそこへ案内された。狭くて急な階段は上がる度にギシギシと音をたてた。2階の回廊から下の庭がよく見えた。上からの眺めもなかなかの風情だ。簡素で地味だけど贅を尽くした建物だ。僕はホイアン商人のセンスに感心した。

作業場では多くの娘さんが忙し気に働いていた。裁断、刺繍、縫製など、いろんなことをやっている。身体にハンディキャップのある人もいるが、周囲も当人もご、ごくあたり前に仕事に励んでいる。

そんな中、売り場からついて来てくれた担当の娘さんは、とっかえひっかえ美しい布地の数々を広げてみせた。ところがどれも美しく、しかもたくさんの種類があるので、カミさんはすぐには決めかねた。そこへまた奥から次々に布地が運ばれて来る。

はたで見ていた僕は、忙しいのに迷惑じゃないか、とハラハラしたが、家内は夢中になって次々と布地に見入っている。大変でもこんな買い物はきっと楽しいに違いない。担当の娘さんはそんな家内に辛抱強く付き合ってくれて有難かった。

ようやく数点の布地の購入が決まったが、手芸の材料だからどれもせいぜい1mもあれば事足りる。だから大した売り上げにもならないと思うが、担当の娘さんはよく付き合ってくれた。それでついつい毎日通うことになる。

ところがここには気立てのいい娘ばかりではなかった。彼女は忙しく立ち働く他の娘たちをしり目に、いつも気持ちのいい中庭のひだまりでゆったりと過ごしていた。しかもこちらから挨拶しても知らんふりという冷たい女だ。自分が客に人気があるのがよく分かっているのだ。

見た目はいいのに可愛げのない、しかし黒い毛並みが美しい、ほっそりとした娘、彼女はメアリーとみんなに呼ばれ、店のスタッフやお客にもてもてのクロネコなんだ。

僕が挨拶してもいつも知らんふり、そのくせこちらの存在はちゃんと認識している。まあ、ちょっと憎らしいけど気になるヤツ、そんなメアリーなのだ。

ホテルへの帰り道、通りに面したカフェで日本の若者2人を見かけた。彼らはアジア系らしい2人連れの若い娘をナンパ中だった。

だけどなんとも不甲斐ない男たちで、その口説き方に迫力がない。娘たちに軽くあしらわれてもへらへらしている。その後、彼女たちを他の場所で見かけたが、他の国の男たちとカップルになっていた。いい年の若者が女も口説けないとは、これでは日本の将来は暗いぞ、君たち。

これからの厳しい国際競争をどうやって生き延びるのか。居心地のいいぬるま湯みたいな日本、世界の歴史でも極めて稀な存在なのだ。はたから見れば異常な国、日本。

我が祖国は、大人も子供もみんな揃って甘えったれの国。世界の修羅場を生きていく腕を磨いてほしいなあ、若者よ

おっと、自分を棚に上げ、いらぬお節介をいうのも年よりの甘え、そういうお前は一体何をして来たのか。(続く)
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81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
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75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
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45 白神の森の宝
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33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
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29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
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22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
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17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
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8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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