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葉山日記
120 喪中につき
2014年12月22日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
7月に母が亡くなったのでいまは喪中ということになる。例年だと年賀状書きに懸命になっているところだが、すでに喪中はがきを発送済みなので心静かな師走を過ごしている。

せっかく高校生時代いらい半世紀にわたって出しつづけてきた写真年賀状だから、喪中はがきも写真でと考えたのだが、プリント仕上げのうまい店は「喪中はがきを写真でつくるという話はきいたことがありません」という。メーカーがさまざまなテンプレートを出しているが、喪中用だけはないのだという。そういえば見たことないなあ。前例がない、といわれると燃える性格だ。フォトショップで版下を自分で作ることにした。

ところで「喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます」という文面だが、こちらが投函するのを失礼するのか。それともいただくのを遠慮するのか。この辺のルールはだれが決めたのか。実はだれにたずねてもよくわからない。そこでグーグルで調べてみた。

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明治7年に出された太政官布告では、別表のように(略)忌(忌中)と服(喪中)の期間をこと細かく定めています。忌と服は、謹慎度の深さによって分けられますが、おおまかには、忌は自宅に謹慎する期間、服は喪服を着用する期間と考えていいでしょう。現在ではもちろん、こうした法令はすべて撤廃(昭和22年に廃止)されていますが、仏事の慣例としては、今もこの太政官布告が一つの目安にされていて、たとえば父母の死亡に際しては七七忌(四十九日)までが忌中、一周忌(一年間)までが喪中とされることが多いようです。
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つまり「太政官布告」という、いまでは存在しない、明治政府の命令にしたがっているのだ。とはいえ、すでに定着した習慣、書式をぶち壊す、というのもやや気が重い。ここは世間の大勢にしたがうことにするか。無難な文章にすることにした。写真はまさかウィンドサーフィンにするわけにもいかないから、これも差し障りなく、自ら撮った富士山。待てよ、富士山はオメデタの象徴か? 深刻ぶらず、明るく送るというのもひとつの考え方だとおもって、早朝散歩で撮った冠雪の富士山を使うことにした。

11月末、手書きで宛名書き開始。来年以降の年賀状を原則取りやめること、そして研究会インフォネットのエッセイで近況報告を続けていく旨のことを宛名の下にプリンターで印刷した。もちろん親戚の叔父や叔母などインターネットを使えない人々には今後も紙の年賀状は続けるつもりだが、その他はすべてデジタルに切り替える。ちょっぴりさみしいが、それも時代の流れと割り切ることにした。

宛名を書き始めて数時間。「あれえ」と妻がすっとんきょうな声をあげた。「お母さんは89歳で亡くなったのよ」。たしかに、「79歳で永眠いたしました」とはっきり書いてある。うわあ、これでは僕は母11歳のときの子ではないか。全部やり直しか。写真屋の頼んだプリント代だけで1枚45円もかかっている。よりによって、喪中はがきにふさわしいデザインの52円切手も先に貼ってしまった。

むかしから「自分の歳に21歳足したのが母の歳」とカウントする習慣が身についていた。気持ちだけは人一倍若い僕は、自分の年齢を58ぐらい(実際は68)にしか考えてないのだ。とぼけてこのままいくか。でもこの「享年」という部分だけは、ひとさまは必ず見るよなあ。よりにもよって親の死んだ年齢を10歳も間違うなんて…。母はさぞかし怒るだろうなあ。

「訂正はためらわず、正直に、即座に、正確に」―通信社時代によくいわれたことを思い出した。でも10歳も若く間違えたんだからいいか、見栄っ張りの母はあの世で喜ぶかもな―という勝手な理屈をつけて、このままでいくことにした。表面のいちばん下に「母の享年は89歳の間違いです。失礼しました」という訂正文を小さいフォントで印刷した。なんと格好悪い、僕らしいミスで半世紀にわたる写真年賀状の歴史を閉じることになった。


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