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徒然.... in California
33 ゾウのはな子
2016年8月20日
明子・ミーダー 明子・ミーダー [AKIKO MIEDER]

東京都小平市出身。5年間のOL生活の後渡米。カリフォルニアのサンディエゴに23年住んだ後、アイドルワイルドという小さな山間の町に引っ越し、現在アメリカ人の夫と猫3匹と田舎生活を楽しんでいます。サンディエゴから2時間の距離の町ですが、標高1800メートルの山の上の生活は、サンディエゴとは全く違います。そんなところでの日々の暮らし、感じたことを綴っていこうと思います。
私が里帰りしている間の5月26日、東京都武蔵野市にある井の頭自然動物園で、ゾウのはな子が息を引き取りました。国内最高齢の推定69歳。1949(昭和24)年にタイから来日した戦後最初のゾウで、人気者となりました。ゾウ舎の前に備えられた献花台には、多くの花束やメッセージが寄せられたそうです。

そんなはな子の一生は、順風満帆とは言えませんでした。飼育員を二人踏んで死なせ、その後は鎖に繋がれてやせ細り、人間不信に陥ったという過去を持ちます。2度目に人間不信に陥っていたとき、飼育員の努力で再びはな子は元気を取り戻し、人気も復活したそうです。老若男女がはな子を訪れ、元気や癒しをもらってきたのだと思います。

ゾウは、戦時中空襲などで檻が壊れて逃げ出すのを懸念して殺処分となり、そういったことから戦後「ゾウは平和の証」と言われました。各地でゾウを望む声が高くなり、それに伴って動物園の数も1955〜1975年の間に倍増。1951年には30頭だったのが、1980年には107頭になりました。高度経済成長の時期で、自治体には十分な税収があり、こぞって動物園を作ったわけです。さらにパンダやコアラなどの珍しい動物がブームとなり、動物園の黄金期となりました。しかし、1980年代になると少子化やレジャーの多様化(ディズニーランドができたのもこの頃です)、加えて同じ時期に日本にやってきたゾウたちは老齢化し、1990年には133頭いたゾウは2013年には96頭に減少。さらに、ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)によって、新たに動物を輸入するのが難しくなりました。最後に残された手段である繁殖も、雌のゾウが多かったため(雄のゾウは発情期に暴れるため、おとなしい雌のゾウが多く輸入されました)実現せず。今後はゾウが動物園から消えてしまうかもしれないと言われています。

あるテレビ番組では、はな子のゾウ舎の前にカメラを3日間設置し、そこを訪れる人たちやはな子の様子を撮影していました。お年寄りや子供連れの人、若いカップルや一人でやってくる人など、様々な人々がやってきました。はな子に話しかけたり、ただじっと見つめていたり、涙ぐむ人もいました。面白いのは、そこを訪れる日本人は、はな子から元気や癒しを求めるためにやって来るということです。たった一人カナダ人の男性だけが、「こんな狭いところでたった一頭で暮らしているはな子はかわいそうだ」と言っていました。

ゾウは、広いところで複数で暮らす動物です。自然に近い環境で飼うのが理想的ですが、限られた土地ではそれも難しく、はな子は狭いゾウ舎で67年もの間一人ぼっちで何もすることがなく暮らしていたわけです。子供の時に親から離され、遠い日本へやってきて自然とは程遠い環境で暮らしてきた。それはある意味虐待ではないかと、私ははな子の姿を見て涙が出てきました。

はな子が亡くなる2〜3ヶ月前にネット上で、老齢のはな子を自然に近い環境で、他のゾウと過ごせるようにするべきだという署名運動が起こりました。結局、間に合わずにはな子はこの世を去ってしまいましたが、日本の動物園の飼育環境が世界に知れ渡りました。もはや日本は世界からの非難を無視することはできないと思います。これを機に、一刻も早く動物園の飼育環境を見直してほしいです。

西村さんもエッセイ(No.124 動物)の中で書いていらっしゃいましたが、最近はテレビやインターネットで動物の生態を見たり聞いたりできる時代です。それでは、なぜ動物園は必要なのでしょう? 動物園の役割は、種の保存、教育・環境教育、調査・研究、レクリエーションだそうです。だとするならば、動物を第一に考えて、できるだけ自然に近い環境で生活できるようにするべきだと思います。生き生きとした動物の姿を見れば、きっと元気をもらえると思うのですが。その上で、動物たちが絶滅に瀕することなく種を保存していくのがベストではないでしょうか?

そんな中、新しい取り組みをしている動物園もあるそうです。老齢となった動物の健康状態を一般公開したり、血液検査や身体測定を来場者の前で行う動物園。地元市民のボランティアが運営を助け、飼育員は繁殖や種の保存に力を入れることができるようになった動物園。このように、これからの動物園は何かに特化した動物園であることが必要になっていくようです。来場者側も、珍獣を見たければ大きな動物園へ行けばいいし、興味があればユニークな動物園へ行くという選択肢ができて、これは動物園の役割の一つであるレクリエーションだと思います。

はな子の死をきっかけに、これからの動物園が動物フレンドリーになることを願います。きっと、はな子は天国で仲間たちと穏やかに過ごしていることでしょう。
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