|
|
|
61 |
|
 |
|
二人三脚 |
|
2011年1月1日 |
|
|
|
 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房、翻訳)などがある。現在、文化交流を目的とした十長生の会を友人たちと運営、活動している。 |
|
|
 |
|
▲ 春色のブローチ |
|
 |
|
▲ パールのブローチ |
|
|
『お正月なんていらない。『ただ、普通に月が替わればいいのに!』
こうつぶやくのはたいてい主婦だ。それもけっこう年季の入った、私や私より年配の女性たち、そして私の母までも…。
体力・気力が落ち、暮れの大掃除やおせちの準備を思うと気が重くなるのだ。
若さの勢いで1日に3つも4つもの仕事をこなしていた頃は、1か月が長く感じられた。
それに比べ、1日に1つの用事をこなすのがようやっとの今は(それに2日も続けば1日ぐらいは休まないともたない)1か月過ぎるのがとても速い。
だから60代、70代…と体力が落ちるにつれて1日が、1か月が、1年がきっともっと早く感じられるようになるだろう。
実家の母が『年末だ、正月だというより、日々の楽しみが先!』と口にするのも無理はない。娘の私だってそう思うのだから…。
だが、人生捨てたものではない。私が主婦として使い物にならなくなってきたその分、最近は定年後の夫が家事をカバーしてくれるようになった。(それにつれて余分な私の仕事が増えたが、細かいことはいうまい!)
ここ数年、郷里福岡での展示会のため、毎年暮れに10日間も留守にする私に代わって、おせちの注文、念入りな家の掃除は主人がやってくれるようになったのだ。
『夫は仕事、妻は家事』『夫は仕事、妻も仕事』という現役時代の二人三脚に代わり、『夫も妻もそれぞれに家事』あるいは『妻は仕事、夫は家事』というかたちの二人三脚もまた味わい深い。
二人三脚というよりは2人で一人前というべきか…。体力的なものだけでなく、物忘れやうっかりからの失敗も、どちらかが覚えていればいいのだ。(どちらも忘れるようになったらそれはその時…。)
暮れのある日、そんなことをつらつら思いながらの道すがら、箒を片手に互いの労をねぎらう初老の男性たちの会話が耳に入ってきた。
『お宅も精がでるねぇ!』 『いやぁ、力仕事は女房、頭使う仕事は俺なのよ!』
こんな二人三脚もある。
面倒ではあるが、暮れの大掃除は不思議に1年間の心の垢までも落としてくれる。きれいになった家の中を見回し、これから1年、今年こそ丁寧に生きていこうと思う。
|
|
|
|