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葉山日記
95 鳩時計(下)
2008年2月2日
中山 俊明 中山 俊明 [なかやま としあき]

1946年4月23日生まれ。東京・大田区で育つが中2のとき、福岡県へ転校。70年春、九州大学を卒業後、共同通信に写真部員として入社。89年秋、異業種交流会「研究会インフォネット」を仲間とともに創設、世話人となる。91年春、共同通信を退社、株式会社インフォネットを設立。神奈川県・葉山町在住。

ニックネームはTOSHI、またはiPhone-G(爺)
「鳩時計+修理」でインターネット検索してみた。国内にも鳩時計専門業者がけっこう存在するではないか。こんなことなら、友人、知人の時間をわずらせることなく、最初からこの方法をとればよかったのだ。

いくつかの該当業者にあたりをつけた。そのなかで群馬県沼田市の時計屋さんのサイトには、修理部門の担当者が本場、黒い森のメーカーで研修を受けたときの日記も掲載されている。ここなら大丈夫かもしれない。

検索をする過程で、ん?、と疑問が芽生えた。鳩時計は英語では「CUCKOO CLOCK」である。直訳すれば、「カッコー時計」。すると鳩時計の「鳩」はもしかすると鳩ではなく、「カッコー」ではないのか。定時に鳴く「鳥」は「ポッポー」ではなく「カッコー」と鳴いているのではないか。そういえば、小窓から飛び出してくる鳥は、とても鳩には見えない。

英語で「DOVE+CLOCK」で検索をかけると、たしかに「DOVE CLOCK」というのはあるが、写真上のような時計だ。ドイツの「鳩時計」を「ハト時計」と呼ぶのは日本だけということが分かってきた。

今度は鳩時計の由来を調べてみる。以下のような資料があった。

「世界的に知られている鳩時計の歴史は、1640年ごろ、南にスイス、東にオーストリア、西にフランスと接しているドイツの黒い森というところで始まりました。その当時、長く、厳しい冬の間でも、有益で、理想的な時間の使い方/仕事を考え、黒い森でこの新しい地場産業ができあがりました。当初は、木と鋼線から作った簡単な時間を計る道具として、少ない量で実験的に作られました。そして、徐々に、新しい有益な産業へ変貌していきました。地理的に、経済的に隔離された農民を世界的に有名にした黒い森の時計の誕生です。今では、世界的に、黒い森と言えば、鳩時計といわれるようになりました。その歴史は、1738年ごろ、フランツ・アントン・ケトラー氏によって今の鳩時計のスタイルが確立されましたといわれています。黒い森のションワルド出身のケトラーは、教会のパイプオルガンの原理を利用したカッコーの時報が、時間になると、自動的に鳴る仕組の時計を生産しました。」

ん?文中「鳩」と「カッコー」が混乱を起こしている。ドイツ語原文を自動翻訳にかけたためか。どうあれ、「鳩時計」は、正確には「カッコー時計」であり、我が家の時計は「カッコー」と鳴いていることは間違いないことが分かってきた。そう思って鳴き声を思い出せば、「カッコー」と聞こえたような気もする。要するに「コッカドゥールドゥー」と聞こえるか、「コケコッコー」と聞こえるか、その差だけだろう。

日本語サイトで「カッコー」を調べてみる。和名では「郭公」。これは当て字か。すると漢字ではどう書くのだろう。属名はCUCULUSとあるから、これはやはり鳴き声に由来しているようだ。「カッコー」の鳴き声は日本にも西洋人にも「カッコー」と聞こえるのか。それとも「カッコー」という日本語の擬声語が、西洋にそのまま伝わって「CUCKOO」になったのか。いまの時点ではわからない。

日本ではカッコーのことを古くから「閑古鳥」と呼んでいたらしい。調べていくと、松尾芭蕉の句に

憂きわれをさびしがらせよ閑古鳥

というのがあって、これはカッコーのことである、と説明がある。さらに調べていくと、芭蕉の句に出てくる「閑古鳥」は、すべて「ホトトギス」と読むべし、というのもある。しかし、カッコーとホトトギスはあきらかに別種の鳥だ。訳がわからなくなってきた。

カッコー時計がなぜ日本では鳩時計になってしまったか。戦後日本で、ドイツのカッコー時計のイミテーションが作られるようになって、それが進駐軍兵士の帰国土産によく売れた、という資料がある。ところが、カッコーの別名は「閑古鳥」、それでは縁起が悪いので、「鳩時計」と名づけた。というのが由来だとする記述が多いが、それはどうか。もっともらしく聞こえるが、なにかピンとこない。誰かがたまたま最初に言い出したことが、引用、孫引用されていくうちに「定説」に化けてしまったのではないだろうか。

僕は日本製CUCKOO CLOCKを日本で最初に売り出そうと考えた人の耳には、「カッコー」という鳴き声が、「ポッポー」という鳩の鳴き声に聞こえた。日本人は「鳩」という童謡で、「ぼっぽ、ぽっぽ鳩ぽっぽ」という擬声語になじんでいる。では鳩時計でいくか、と決めてしまった、というような単純なストーリーではなかったかという気がする。僕には鳩の鳴き声は「グルッ、グルッ」と聞こえるのだが。

沼田市の時計店はメールの反応が早かった。「ドイツ製のハト時計であれば、全て修理を承ります」と頼もしい。すぐに「症状」を細かく書いて送る。返事が瞬く間に来る。このレスポンスのよさは小気味いい。時計の外観、裏ぶたをはずし、ムーブメント(歯車部分)のアップ写真も送る。ただちに修理代の見積もりが送られてくる。想定の範囲内だったので現物を宅配便で送る。到着と同時にまた写真添付(写真下)メールがきた。

1)上記の歯車の破損状態は、何かの要因で錘が下に強く引っ張られたりすると起こります。特に、大勢の方々が出入りする場所では、子供達などが、珍しいので、クサリを強く引っ張るため壊すことが、一番多く見られる原因です。 (注意点)錘(おもり)を引き上げる際、片手で、軽く錘を支えながらチェーンを引き下げて下さい。より安全に、また、チェーン/時計に負担を少なくできます。

2)最も注意していただきたいのは、ハト時計が止まったからといって、サビ止めのスプレーや他の油などは、今後、使用しないで下さい。このサビ止めや油は、ハト時計にとって一番の故障の原因となります。修理に関しても、サビ止めのスプレーや他の油をとるのに1週間ほど洗浄機械にかけなければ落ちません。

さすがドイツで修行しただけあって的確な所見だ。そういえば孫に鎖を引かせたことがあった。動かなくなったのはあれ以来だ。止まってしまった歯車を動かそうとして、ミシン油や潤滑剤など闇雲に油をかけた。鳩時計にしてはならないことをだいぶやってしまったようだ。思っていたより精密な機械なのだ。

インターネットのおかげで、我が家の「鳩」の鳴き声を、また聴くことができそうである。
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