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気晴らし |
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2011年7月3日 |
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 | 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]
福岡県生まれ、横浜市に住む。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在は気ままな主婦生活を楽しんでいる。著書に『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、共著)『韓国の近代文学』(柏書房)などがある。 |
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▲ 上と下:ラピスラズリとタイシルバーで作ったネックレスとピアス |
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何かに没頭ししんどくなると気晴らしが必要になる。気晴らしはあくまでも気晴らしなのだから気楽に楽しめばいいものを、私の場合、その気晴らしにのめり込み抜き差し?ならなくなってしまう。
アクセサリーづくりを始めたのも気晴らしのためだった。だが、毎日職人さんのように椅子に座って黙々と作っていると、外の空気が吸いたくなる。日に何度も庭に出て、緑を楽しむ。この時間がなんとも気持ちがいい。
気晴らしのための庭にバラを数本、ハーブを数種、葡萄を植え、今年は野菜も…。水やり、鉢土の入れ替え、花柄つみ、雑草取り、葡萄の棚づくり、ハーブの収穫・保存、剪定、挿し木…仕事はどんどん増えていき、忙しくなり、とうとう疲れ果てた。家事に割く時間は減り、アクセサリーの材料は出しっぱなし…家の中はいわずとしれた状態に。
そんなことが続くと旅に出たくなる。持て余した日常を離れるために。 そして旅だって…気楽に楽しめるところへ行けばいいものを一ひねりある手ごわいところへ行きたくなる。
厄介な性格といおうかなんといおうか。 いや、単に没頭しやすく、飽きやすく、衝動の制御ができないだけのはなしである。
最近は、とみに庭で過ごす時間が長くなった。朝食前にサラダ用のパセリやトマトやピーマンを採りにいったつもり(収穫といえば聞こえはいいが1,2個採れれば御の字だ)が、小1時間経っていた…ということもしょっちゅうである。
気晴らしのためのアクセサリーづくり、そのまた気晴らしのためのガーデニング、しんどくなって再びアクセサリーづくり…こうして庭と、私が“アトリエ”と呼んでいる単なる和室のビーズ部屋との間をウロウロしているうちに一日が終わる。
そういえば田舎の母は、私が帰省する日(それが年にわずか1,2度でも)近くの野菜畑で過ごしていて、ようやくたどり着いた実家(横浜の家を出て飛行機と電車を乗り継いでで半日かかる)には人の気配がなく唖然とすることがある。
だが、最近それもまたいいものだと思う。好きなことに没頭できる幸せ、それは母も私も同じなのだから。
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